こんにちは、東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳、5歳、3歳の子育て中です。生後5~6カ月から始める離乳食。準備もあるし、食べないこともあるし、ぐちゃぐちゃになるし……。心配のタネも増えますが、赤ちゃんがますます可愛いこの時期、離乳食をママもお子さんも楽しく乗り切るために知っていただきたいことをお話したいと思います。
そもそも「離乳食の役割」ってなんだろう?
0歳の赤ちゃんの栄養摂取のメインは、母乳やミルクです。離乳食は、 WHO(世界保健機関)では「補完食」と言われていて、生後半年ごろから母乳やミルクだけでは足りなくなる栄養素を補充するための食べ物、という位置づけです。また、今後ずっと続く食事に少しずつ慣れていくための時期でもあります。
赤ちゃんによってはなかなか離乳食を食べてくれない子もいますが、この時期は母乳やミルクが栄養のメイン。離乳食はあくまで“不足する栄養を補うもの”なので、焦らずに、赤ちゃんの成長を待つイメージで食事ができればいいのではないかと思っています。
心配なことは、生後6~7カ月健診、9~10カ月健診などで、赤ちゃんを専門家に実際診てもらいながら相談してみてくださいね。
押さえるべき離乳食の新常識!
2019年春、厚生労働省の離乳食のガイドが改訂されました。ポイントは…
①卵は生後5~6カ月から開始
改定前は生後7~8カ月から開始推奨だった卵ですが、食べることを遅くしてもアレルギー予防にはならないので、卵は生後5~6カ月から開始することになりました。赤ちゃんは、この頃どんどん体が大きくなり、体を作るモトであるたんぱく質がたくさん必要です。卵は良質なたんぱく源なので、初めは少しずつ食べさせて、ちょっとずつ増やしていってみましょう。
②生後6カ月ごろから鉄分不足を補う必要がある
母乳育児の場合、改定前は生後9カ月ごろから鉄分が不足するとされていましたが、改定後は生後6カ月ごろから積極的に鉄分を摂るように推奨されています。体が成長する時期は、特に鉄分が足りなくなりやすいです。鉄分が不足すると、発育発達遅延や運動機能・認知機能低下のおそれもあるため、積極的に鉄分を意識しましょう。ほうれん草などは吸収率が低いので、赤身の肉などを使用するのがオススメです。
このほかにも、③離乳食開始前に果汁は与えない、④ママやパパの負担を減らすため、ベビーフードの活用などもすすめられています。
卵などを食べ始める時期を遅くすることでアレルギーは予防できないことがわかってきています。逆に、食べるのを遅くするとアレルギー発症が増えるとの報告もあるので、あまり食べなくても、食材はどんどん増やしていってみましょう。
ママの負担が少ない離乳食生活を!
私が離乳食を作っていたころは、おかゆを小分けにして冷凍するのも面倒になってきて、最終的には炊飯器に小さなお椀を入れて炊飯して、おかゆを作っていました。炊きたてなのでおいしいのかよく食べてくれたので、この作戦はうまくいったかなと思います。これに味をしめて、炊飯器の中にいくつかお椀を入れて、具材とだし汁を入れて炊飯器のスイッチポン! おかずも同時に作って離乳食を作っていました。(※1)
中期や後期からは、大人のおかずを取り分けしていました。日本食はそもそも塩分が多く、大人も塩分を控えめにした方が良いので、まずはだし汁だけでおかずを作って離乳食用に取り分けて、大人用はあとから少しだけ味を足す、というスタイルだと大人も子どもも簡単ヘルシーな食事が作れます。なるべく自分が疲れない方法で離乳食期を乗りきっていました。
親に負担が少ない離乳食との付き合いかたは、人によって違うのかなと思います。「自分はやっぱり味の濃いガッツリメニューが好き!」ならば、取り分けは向いてないと思いますし、「料理大好き! 赤ちゃんもたくさん食べてくれる!」とかなら、離乳食を頑張って作ること自体を楽しめて、幸せ子育てにつながると思います。
私はベビーフードを買うのも面倒だったので、レバーなど自分で調理がしづらい食材やお出かけの時だけベビーフードを使用していましたが、ベビーフードは清潔で安心だし、手軽だから良いですよね。離乳食づくりが負担だと思う方は、ベビーフードで乗り切るのも全然ありなのではないでしょうか。
家族みんなが楽しい食生活を目指しましょう
栄養面ももちろん大事なのですが、離乳食のもう一つ大事なことは「食事の時間は楽しい、おいしい時間であること」と赤ちゃんにわかってもらうことです。
食べなかったり、ぐちゃぐちゃにされることで親がイライラしてしまうこともあるかと思います。
そんな日もありますが、なるべく「おいしいね、楽しいね」という時間にしてあげたいもの。「食べなくてもいい」「汚れてもいい」親に負担の少ないスタイルを見つけて、楽しい離乳食期が過ごせるといいですね。
(※1)炊飯器で離乳食調理ができないものもあるので、事前にメーカー確認をする、専用の容器を使用するなど、ご自身の責任と判断によってご対応をお願いいたします。