父に溺愛され、何でも買ってもらっていた姉
私には3歳年上の姉がいます。父は昔から姉にとても甘く、「欲しい」と言えば洋服やブランドバッグを買い与え、大学の学費も全額負担。就職後には車を買い、結婚するときには結婚資金や住宅購入資金まで援助していました。
その一方で私は、「お前はしっかりしているから、自分の力で頑張りなさい」と言われ、学生時代はアルバイトをしながら奨学金も利用して進学しました。
正直、不公平だと思ったことは何度もあります。それでも父は厳しいだけで、決して冷たい人ではありませんでした。私は「これがお父さんなりの考えなんだ」と自分に言い聞かせていたのです。
父の介護をしたのは…
数年前、父は病気で入退院を繰り返すようになりました。家事や通院も一人では難しくなり、私は仕事帰りや休日に実家へ通って、食事の準備や通院の付き添いなど、父の介護を続けていました。
一方の姉は、「子どもの習い事がある」「仕事が忙しい」と言って、ほとんど顔を見せませんでした。それでも父は姉を責めることはなく、私は「やっぱり最後までお姉ちゃんが一番なんだ」と思っていたのです。
やがて父は静かに息を引き取りました。葬儀の日、親族が集まる控室で姉は笑いながらこう言ったのです。
「パパは昔から私が一番かわいかったし、遺産も期待できそう♡」
さらに私に向かって、「介護なんて頑張ってたけど、もしかして遺産目当てだった?」と笑いました。父を見送る場でそんな話をする姉に、親族も苦笑いするしかありませんでした。
「残る遺産は、すべて…」
後日、弁護士立ち会いのもとで遺言書が開封されました。姉は最初から自信満々で、「まあ、パパらしい内容なんじゃない?」と余裕の表情を浮かべます。
ところが、弁護士が読み上げた内容は予想外のものでした。
「生前、長女には学費・車・結婚資金・住宅購入資金など、十分な援助をおこないました」
姉は満足そうにうなずきます。しかし、その続きで表情が固まりました。
「残る遺産は、すべて次女に相続させます」
部屋が静まり返る中、姉は「ウソでしょ!?」と声を上げました。さらに弁護士は、父が残した手紙を読み始めました。
「長女へ
お前には父親としてできる限りのことをしてきた。それを後悔したことは一度もない。
だから、この先は自分の力で人生を歩んでほしい。それが私の願いです。」
続いて、私への手紙もありました。
「次女へ
お前がしっかりしていることに甘え、寂しい思いをさせてしまった。
お前が何度も病院へ来てくれたことも、退院後に支えてくれたことも、本当に感謝している。
この遺産は、これからの人生のために使ってほしい」
私は涙が止まりませんでした。
父が最後に伝えたかったこと
姉は「こんなの納得できない」と取り乱しましたが、弁護士は父が何度も内容を確認したうえで正式な遺言書を作成していたことを説明しました。
さらに父は、生前に姉へ援助した内容を年月日とともに記録した一覧まで残していました。それを見た親族は、「お父さんなりに、二人のことをちゃんと考えていたんだね」と口にしました。
父は姉を嫌いになったわけではありません。たくさん与えたからこそ、最後は自立してほしいと願ったのでしょう。そして、「お前はしっかりしているから」と、私に寂しい思いをさせてしまったことを、最後に謝ってくれたのです。
遺産そのものよりも、「本当に感謝している」という父の言葉が、私にとっては何より大きな贈り物でした。親の愛情は、与えた物の量だけでは測れないのだと、父の最後のメッセージが教えてくれた気がしています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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