こんにちは、保育士の中田馨です。今までできていたことが突然できなくなり、赤ちゃんのように泣いたり、甘えたりする「赤ちゃん返り」。特に妹や弟が生まれたときに起きることが多いのではないでしょうか。今日は、そんな赤ちゃん返りした2歳児への対応方法を実例を交えながらお話しします。
突然できていたことをしなくなる理由
これまでできていたことができなくなる。例えば、着替え、食事、トイレなどを「できない」「ママがやって」と言ってボイコットする子どもの姿を見ると、「どうしてしてくれないの?」と思ってしまうでしょう。赤ちゃん返りしているときの子どもの心境としては、弟や妹が生まれたことをきっかけに、「ママ、もっと私のことを見て!」と思っているのです。これまで100%自分に注がれていた愛情が、弟や妹に取られてしまった感覚があるのでしょう。赤ちゃん返りは、一緒にいる時間や愛情を今まで以上に向けてほしいという表現で、子どものあるべき姿なのです。
できていたことをしなくなる以外に、抱っこをしてほしがる、物をねだる、集団に入ったときに動かなくなる、おもらしをする、ママを叩く、蹴るなどの行動をすることもあります。赤ちゃん返りの表現は、子どもによってかなり違います。
経緯をたどって子どもの気持ちを予測してみる
赤ちゃん返りする子どもの姿を見るときに大切なのは、「今の子どもの姿だけを見てはいけない」ということ。
例えば、普段パンツをはいてトイレでおしっこができていたのに、「おむつを履きたい」と言ってパンツをはきたがらない場合、「お兄ちゃんなんだからパンツをはきなさい!」「トイレでおしっこしないと恥ずかしいよ!」と声かけしてしまうこともあります。
ここで大切なのは、「なぜ、おむつを履きたいと思ったのか」ということです。弟、妹がおむつ替えしてもらう姿がうらやましく感じたのかもしれません。おむつを履けば、ママが自分をお世話してくれると思ったのかもしれません。時間に余裕があるときには、「どうしておむつを履きたくなったの?」と、ぜひ子どもに聞いてみてください。
ママは子どものその姿を受け入れることが大切
子どもの気持ちをある程度予測できたら、その気持ちに共感します。ママは子どもの姿をそのまま受け入れることが大切です。おむつが履きたければ履けばいいのです。「じゃあ、今日はおむつ履いてみようか!」と言って、受け入れて普段通りにトイレに誘うのです。そして、トイレでの親子のやり取りを、今まで以上に丁寧にしてあげましょう。「スッキリしたね」など、おしっこが出た気持ちよさを共感します。しばらくおむつ生活をしても問題はありません。この機会に、新しいパンツを一緒に選びに行ってもいいですね。子どもがパンツをはきたいと思う気持ちになるまで気長に待ってみましょう。
「子どもにはどんどん成長してほしい」と思うのが親心。ですが、先に先に進んでばかりいると子どもも疲れてしまいます。時には赤ちゃんみたいな行動をしたくなることがあるのです。今は一時的に休憩している時期だと思い、否定したり怒ったりせず、子どもの気持ちに寄り添いましょう。
事例:引越しを機に赤ちゃん返りをした2歳児の対応方法
では、保育所で実際にあった事例をお話します。2歳のAちゃん。引っ越し前から、物を投げる、友だちをたたく、友だちのおもちゃを奪い取るという乱暴な姿が見られるようになりました。しばらくすると、指も吸い始めました。引っ越したことでの不安が出てきたようです。ママにお話を聞いてみると、お家でも同じような姿が見られるとのこと。
そこで、保育所でしたことは2つです。
・「あなたが大好き」と抱きしめる回数を増やすこと
・Aちゃんが大好きな遊びを1人の保育士がつきっきりで遊ぶこと
特にAちゃんの大好きな遊びを1人の保育士がつきっきりで遊ぶことが効果を発揮し、その日から友だちをたたいたり、物を奪ったり、指吸いしたりしなくなりました。赤ちゃん返りをしても、ほんの少しのきっかけで、子どもが落ち着くことが分かった事例です。
赤ちゃん返りは幼児だけの話ではありません。小学生になってもありますし、今、中3の我が家の息子でも同じようなことは起こります。そんなときは、「今、僕を見て! と訴えているんだろうな」と思って過ごしています。行きつ戻りつする子どもの姿を受け入れながら、親も子も成長していきましょうね。