矛盾だらけの無茶ぶり
ある日の夕食後。エアコンをガンガンに効かせた部屋で、冷えたビールを飲みながらテレビをつけていた夫が、ふと家計簿を見て手を止めました。「最近、会社でも電気代の話がよく出るんだけどさ。うち、ちょっと使いすぎじゃない?」「夏だから多少は上がるけど、平均的だと思うよ」と答えましたが、家計の将来を真剣に考えてくれているのかも、と夫の言葉を前向きに受け止めた私は、さらに節約を意識するようになりました。
エアコンの設定温度を上げ、使っていない家電のコンセントは抜く。洗濯はまとめ洗い。しかし、夫の態度はまったく変わりませんでした。相変わらず冷蔵庫のドアは開けっ放しで物色し、休日は自室でパソコンやゲームをつけっ放し。注意しても、「俺が稼いだ金なんだから、俺の自由だろ」と取り合ってくれません。
思えば結婚して3年、夫は事あるごとに「俺の金」を振りかざし、家事も家計のやりくりも私に丸投げでした。自分は一切協力しないくせに、私にだけ我慢を強要する身勝手な態度に、日々の不満は確実に降り積もっていたのです。
そして翌月。私の努力で少し下がった電気代の明細を見た夫は、褒めるどころかため息をついたのです。「まだ高いな。電気代は月3,000円な。それくらいじゃないと意味がない」基本料金を引いたら、ほとんど何も使えないむちゃくちゃな数字です。「え?……本気で言ってるの?」これまで積もり積もった不満が、ついに限界を超えた瞬間でした。
お望み通りの極限節約生活
「わかった。そこまで言うなら、そのルールで生活しよう」私はニッコリとほほ笑みました。もちろん、この徹底した節約ルールは、提案者である夫にも平等に適用させてもらいます。
翌日から、わが家の日常は一変しました。まずは冷蔵庫の出力を「弱」に。仕事から帰ってきた夫には、生ぬるいビールを手渡します。「なんだこれ、全然冷えてないぞ!」「月3,000円ルールだもんね! 冷蔵庫のドアの開け閉めを減らすから、しばらくごはんは缶詰と乾物でよろしく♪」
さらに翌朝。アイロンの電力もカットするため、夫には洗いざらしのシワシワなワイシャツを渡して出勤させました。そして夜。テレビのリモコンに手を伸ばした夫の目の前で、私はコンセントを静かに抜きました。「ほら、テレビの電力もカット! 究極の節約、夫婦で一緒に頑張ろうね!」夫は自分で言い出した手前、文句をのみ込むしかありません。うちわを片手に生ぬるいビールをすすり、ぼう然とする夫の姿に、私は心の中でガッツポーズを決めました。
明かされた真実
ある日のこと。エアコンを制限された室内の暑さに耐えきれなくなった夫は、仕事から帰宅するなり水風呂へ直行しました。脱ぎ捨てられた汗だくのズボンを洗濯しようとすると、ポケットから高級フレンチのレシートが落ちてきたのです。しかもそこには、ご丁寧に「ペアコース」の文字が。
不審に思いつつも、家族で共有しているクレジットカードの明細アプリを開きました。履歴を見ると、高級ホテルやジュエリー店での高額な決済がズラリ。ズボンから出てきた「ペアコース」のレシートの日付と照らし合わせれば、何に金を使っていたかは明らかでした。
節約やポイント還元のため、夫から支払いはすべてこのカードを通せと言われていた家族口座。それがまさか、不倫の確たる証拠になるとは思いませんでした。急な生活費の減額、休日の外出の増加、そしてこのカード明細。夫は「将来のための節約」をしたかったわけではありません。私に渡す生活費を極限まで削って浮かせたお金を、別の女性との交際費に全振りしていたのです。
緊急家族会議!
数日後、私は両家の親をわが家に緊急招集しました。もちろん、夫のルール通りエアコンは切ったまま。汗だくの親たちと不機嫌な夫の前に家計簿を広げ、私は話を切り出しました。「夫の指示で電気代を月3,000円に切り詰めていますが、もう限界で……両家に援助をお願いできないかと思いまして」驚く親たちの前に、私はフレンチのレシートとカード明細のコピーを並べました。
「私には極限の節約を強いて、自分は女とホテル宿泊にネックレス購入。この支払いのせいで破産寸前なんです。ねえ、そうだよね?」と夫を見ました。夫は一瞬で顔面蒼白に。義父は「お前、まさか……」と絶句し、義母は信じられないものを見るような目で息子をにらみつけました。両家の親から次々と浴びせられる、厳しい追及の声。逃げ場のない蒸し暑い密室の中で、夫だけが、まるで氷水でも浴びたかのように震えながら小さく縮み上がっていました。
私はすかさず離婚届を突きつけ、親たちの前で慰謝料を支払うという念書も書かせました。その後、私たちは離婚。慰謝料に追われる元夫は、今度こそ本当の「極限の節約生活」を送っているそうです。私は新しい仕事を見つけ、心穏やかな日々を取り戻しました。電気代を気にせず、心からくつろげる時間が、今の私の何よりの宝物です。
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家族のための努力や我慢は、決して「してくれて当たり前」のものではありません。その気持ちを都合よく利用する行為は、夫婦の信頼関係を根底から壊す許しがたい裏切りです。一番身近な存在だからこそ、相手からの日々の支えを身勝手な欲で踏みにじるのではなく、誠実さをもって応え合える関係を築いていきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。