ミスを押し付ける女性営業
私が勤めていた会社には、社内でも発言力のあるベテラン営業・A子さんがいました。A子さんは年下の女性社員にだけ厳しく、営業事務だった私にも毎日のように嫌味を言ってきます。
「事務なんて誰でもできる仕事でしょ?」
「あなたの代わりなんていくらでもいるんだから、もっと動いてよ」
そう言われるたびに悔しい思いをしていました。それでも私は、営業が少しでも仕事を進めやすいよう、できる限り先回りして資料を準備するなど、自分にできることを精一杯続けていました。
しかしA子さんは、自分が作るべき資料まで私へ押し付け、少しでも思い通りにならないと不機嫌になるのです。
さらに困ったことに、自分のミスまで私のせいにすることが何度もありました。
部長へ相談しても変わらず…
ある日、A子さんは取引先へ提出予定だった見積書を持たずに外出してしまいました。ところが戻ってくるなり、「何で確認してくれなかったの?」と私を責め始めたのです。
私は「昨日お渡ししました」と説明しましたが、「言い訳ばかりね」と聞き入れてもらえませんでした。
こうした出来事が続いたある日、私は営業部長へ相談しました。
「A子さんから責められる毎日に心が折れそうです。退職も考えています」
部長は驚いた表情を浮かべ、「そこまで思い詰めていたのか……」とつぶやきました。そして、「君が辞めると営業部が本当に困る。A子さんには私からきちんと注意する。だから、もう少しだけ頑張ってくれないか」と頭を下げたのです。
私はその言葉を信じ、もう一度だけ頑張ってみることにしました。
「役立たずは辞めろ!」
しかし、その約束が守られることはありませんでした。
数日後、営業会議が始まる直前のこと。A子さんが突然声を上げました。
「あれ?売上の集計表がない!」
そして、営業部のみんなの前で私をにらみ、「ちゃんと準備したの?」と責めてきたのです。私は「昨日、ほかの資料と一緒にお渡ししました」と伝えました。
しかしA子さんは、自分の机を確認しようともせず、「うるさい!役立たずの事務は辞めろ!」と言い放ったのです。
その言葉を聞いた瞬間、不思議と肩の力が抜けました。
「ありがとうございます!」
思わず、そんな言葉が口をついて出たのです。そしてバッグから退職届を取り出し、そのまま部長のもとへ向かいました。
「以前、退職を相談したとき、部長は引き止めましたよね。でも今、A子さんから『辞めろ』と言っていただけたので、もう迷いはありません」
部長は慌てて引き止めましたが、私の気持ちは変わりませんでした。その後、私は1カ月かけて引き継ぎを終え、会社を退職しました。
私が辞めたあと営業部は…
その後、私は別の会社へ転職。新しい職場で充実した毎日を送っていたある日、元同僚から連絡がありました。
「営業部、大変なことになってるよ」
話を聞くと、私が退職して最初の月末、営業部では資料や契約書の準備が次々と遅れ、取引先からの問い合わせも増えていたそうです。
私の業務は引き継いでいたものの、残った事務社員への負担は大きく、以前からA子さんの言動に悩んでいた事務社員も次々と退職。会社は派遣スタッフを採用して対応しましたが、人が入れ替わるたびに業務を教え直すことになり、営業部はしばらく混乱が続いたといいます。
その責任を問われたA子さんは部長から厳しく注意され、以前のように強い態度を取ることはなくなったそうです。
仕事には、数字として目立つ成果だけでなく、周囲を支える大切な役割もあります。
あのとき退職を決断したことで、自分を大切にできる環境を選ぶことの大切さも学びました。誰かの仕事を軽く見るのではなく、お互いを尊重し合える職場で働くことが何より大切なのだと実感しています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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