兄さんの…奪っちゃってごめん!
ある夜のことです。僕が仕事帰りにビールを飲みながら妻のAとのんびり過ごしていたところ、久しぶりに弟から電話がかかってきました。普段はほとんど連絡してこないため、珍しいなと思って出てみると……電話の向こうから耳を疑う発言が聞こえてきました。
「兄さんの婚約者、奪っちゃってごめん(笑)」。
一瞬、何を言われたのかわかりませんでした。すると弟は、勝ち誇ったように「俺たち相性良くてさ! もうあの子、完全に俺に夢中なんだよね。数カ月前に兄さんが載せてた写真で、左手に指輪をはめて兄さんの隣で笑ってたあの人だよ!」と続けました。
そんな弟の話を聞いて、僕はすべてを察しました。どうやら弟は、僕が数カ月前にSNSへ投稿した「会社の同僚の結婚祝い」の写真を見て勘違いしていたよう。
明かされる衝撃の事実
僕は思わずため息をつき、隣にいたAと顔を見合わせました。そして、弟に言いました。
「お前、勘違いしてるよ。僕はもう結婚してるし、婚約者なんていないよ」
しかし、弟は「強がるなって。奪われたからって悔しいんだろ?」と僕の言うことに耳を傾けなくて……。
うんざりした僕は、Aに自己紹介してもらうことにしました。弟にひと言告げ、Aにスマホを渡しました。妻が「はじめまして。妻のAです」と挨拶をすると、弟が電話の向こうで息をのむ気配が伝わってきました。
しばらく黙っていた弟ですが、完全に混乱していて……。「じゃあ、俺が付き合っている人はだれなんだよ!」と慌てていました。僕は、「その人は、写真の主役だった僕の元同僚のBさんの奥さんだよ。あの写真はBさんの結婚祝いで、奥さんが結婚指輪を見せていて、たまたま僕がその隣に座っていただけ」と伝えました。
Bさんなんて知らないという弟に、僕はある事実を教えました。「世間って狭いよな。Bさんは数年前に転職して、偶然にも今、お前が勤めている会社の他部署で先輩として働いているはずだ」。
まさかの発言
実は、Bさんの奥さんはSNSで旧姓を使い、結婚したことを伏せてチヤホヤされるのを楽しむ承認欲求の強いタイプでした。
文章も読まずに写真だけを見て「兄の婚約者」だと早とちりした弟が、「モデルさんかと思いました! 一目惚れです」と見え透いた猛アプローチ。奥さんのほうも、チヤホヤされる心地よさとスリルから、夫に内緒で軽い気持ちで関係を持ってしまったようです。弟は自分の会社の先輩の妻だと気づかずに、手を出していたのでした。
事実を知った弟は、「嘘だろ…」と震え声を漏らし、そのまま電話を切ってしまいました。あの電話で相手が既婚者だと知ったにもかかわらず、弟は関係をきちんと清算できないまま会い続けてしまったよう。やがてBさんに不倫がバレ、激怒したBさんは妻に離婚を突きつけたそうです。
弟は、Bさんから慰謝料を請求されたとのこと。さらに、「先輩の妻を寝取った男」という噂はあっという間に社内に広まったそう……。周囲からの信頼は完全に地に落ちました。会社に居場所がなくなった弟は、慰謝料の支払いに追われながら、逃げるように自主退社したと、Bさんから聞きました。
これからの僕たち
「弟の件で、変な形で巻き込んでしまってごめんね」僕がAに謝ると、彼女はやさしくほほ笑みました。「あなたが悪いわけじゃないんだから、気にしないで。あなたがいてくれれば、それだけで十分幸せよ」その言葉が、何よりもうれしかったです。
僕が「これからもAを大切にするよ」と伝えると、Aは「そんなこと知ってるよ!」と照れくさそうにしていました。
一方の弟と元奥さんは、自分たちの身勝手な思い込みと軽率な行動によって、お金も仕事も家庭も、すべてを失う結果となりました。自業自得としか言いようがありません。僕たち夫婦はそんな泥沼の騒動とは一切関わることなく、これからも2人で穏やかな毎日を大切に過ごしていこうと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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