婚約指輪を返された僕
ある日、A子は神妙な表情で小さな箱を差し出しました。中に入っていたのは、僕が贈った婚約指輪でした。
「ごめん。やっぱり結婚できない」
突然の言葉に、頭が真っ白になりました。理由を尋ねると、「一緒に暮らしてみて価値観が違うと感じた」「まだ結婚する決心がつかない」と言います。
あまりに突然のことで納得はできませんでしたが、相手の気持ちが離れてしまった以上、無理につなぎ止めることはできません。話し合いの末、僕たちは婚約を解消することにしました。
偶然知ってしまった本当の理由
それから約1カ月後。仕事帰りに立ち寄った飲み屋で、後ろの席から聞き覚えのある声が聞こえてきました。
振り返ると、そこにいたのはA子と、大学時代の同級生だったB男です。B男は若くして会社を経営しており、学生時代から女性に人気のある存在でした。
聞くつもりはありませんでしたが、2人の会話は自然と耳に入ってきました。
A子はうれしそうに、「婚約者とはちゃんと別れたよ」と話しています。するとB男は笑いながら、「そうか、お疲れ」と返しました。
さらにA子は、「付き合ってもう半年だね」と笑顔を見せたあと、小さな声でこう続けました。
「……ねぇ、そろそろ結婚のことも考えてくれる?」
その言葉を聞いた瞬間、血の気が引きました。半年ということは、僕と婚約していたころから付き合っていたということです。
気づけば僕は2人の前に立ち、「どういうことなんだ」と問いかけていました。
A子は一瞬驚いた表情を浮かべましたが、すぐに開き直ったように笑い、こう言ったのです。
「結婚するなら、少しでも条件がいい人を選びたいと思ったの」
「結婚って人生を左右することなんだから、当たり前でしょ?」
隣で聞いていたB男も、「まあ、そういうこと」と軽く笑うだけ。僕はそれ以上何も言えず、その場をあとにしました。
偶然再会したA子は…
それから数カ月後。大学時代の友人と食事をしていたとき、偶然B男の話題になりました。友人によると、B男は以前から女性関係が派手で、複数の女性と同時に付き合うことも珍しくなかったそうです。
そんな話を聞いた数日後、偶然A子と再会しました。
以前とは別人のようにやつれた様子で、「実は……」と話し始めました。B男にはほかにも親しくしていた女性がおり、結婚するつもりなど最初からなかったそうです。
A子が結婚の話を切り出すと、「勝手に本気になられても困る」と突き放され、そのまま関係も終わってしまったと言います。
そしてA子は、「やっぱり一番安心できたのはあなただった。お願い、もう一度やり直せない?」と復縁を求めてきたのです。
しかし、僕の気持ちは変わりませんでした。婚約中に裏切られた事実は、一生消えることはありません。
僕は静かに断り、その場をあとにしました。
婚約指輪を返されたときは、目の前が真っ暗になるほどショックでした。
しかし今では、あのとき無理に結婚しなくて本当によかったと思っています。結婚してから裏切りを知るより、結婚前に相手の本当の姿を知ることができたのは、不幸中の幸いだったのかもしれない――そう強く感じています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!