わが家にやってきたのは、人懐っこく穏やかな真っ白の子犬でした。私は「シロ」と名付け、大切に育て始めました。
それから夫は、シロに会いに何度も遊びに来るようになりました。犬を通じて一緒に過ごす時間が増え、自然と交際に発展。3年後にはプロポーズされ、シロも含めた新しい家族として結婚生活をスタートさせました。
しばらくは穏やかな毎日を送っていましたが、その生活はある日突然終わりを迎えます。
ある日突然、義両親がわが家へやって来たのです……。
勝手に始まった同居生活
驚く私とは対照的に、「待ってたよ」と笑顔で義両親を迎える夫。話を聞くと、義実家は老朽化で大規模な修繕が必要になり、さらに荷物が増えすぎて住みにくくなっていたそうです。
そこで夫は、私に何の相談もなく「敷地内の離れが空いているから、そこに住めばいい」と義両親へ提案していたとのこと。「離れなら生活は別だから問題ないだろ?」と言われても、私は納得できません。
しかし義両親は、夫の話を信じてすでに義実家の売却手続きを進めていたのです。今さら断ることもできず、私は突然の敷地内同居を受け入れるしかありませんでした。
ところが、実際に始まった生活は夫の説明とはまったく違いました。毎日のように義両親は母屋へ来て食事を取り、生活費を入れる様子もありません。
「最低限のルールだけでも決めましょう」と切り出しても、「中卒のくせに偉そうに口を出すな」と一蹴されるだけ。
私は自宅で仕事をしていましたが、「働いていない」「息子に養われている」と決めつけられ、何度説明しても聞き入れてもらえませんでした。
そして、その態度は次第にシロにも向けられるようになります。
「犬なんか家に入れるな」
「毛が汚い」
「邪魔だ」
そう言われるシロをかばい続けた私。最終的に私とシロは、「その小汚い犬と一緒に出ていけ!」と怒鳴られてしまったのです。
夫はその場にいましたが、私やシロを守ってくれることはありませんでした。失望した私は「了解です!」と告げると、シロを抱き、必要最低限の荷物だけを持って家を出ました。
夫がついていた最低な嘘
ペットと宿泊できるホテルを見つけ、ようやく落ち着いた私は夫へ連絡。すると夫は申し訳なさそうに、「あの家、親には俺が買った家だって話してあるんだ」と打ち明けたのです。あの家は、祖父が私に遺してくれた家なのに……。
なぜそんな嘘をついたのか尋ねると、「若いうちに家を持って自立している君がうらやましくて……」「つい両親に見栄を張ってしまった」という答えが返ってきました。
私は言葉を失いました。義両親が私を見下し、「息子の家なのだから嫁は従え」と言い続けていた理由が、ようやくわかったのです。
夫は何度も謝罪しましたが、その後に口にした言葉が、私の気持ちを完全に冷めさせました。
「うちの両親にはこのまま住んでもらって、俺たちは賃貸を借りよう」
祖父が遺してくれた大切な家なのに、なぜ私が家を出なければならないのでしょうか。立派な家があるのに家賃を払い続ける生活など、到底受け入れられません。
私はその場で、夫との離婚を決意しました。
私と犬をないがしろにした義両親と夫の末路
数日後――。
私は夫と会い、離婚を切り出しました。意外にも夫はすんなりと承諾。すぐに離婚届に署名してくれました。
離婚届を書き終えた夫は、「家はどうなるの?」と聞いてきました。私やシロのことではなく、義両親があの家に住み続けられるかどうかだけを心配していたようです。
「あの家は、売却するつもり」
「あなたのご両親が住みたいなら、ちゃんとした手続きを踏んで、買い取ってちょうだい」
夫は「そんなの困る」と言いましたが、大切な家を他人に無償で貸すなんてありえませんでした。私が住み続けてもよかったのですが、1人と1匹で住むには広すぎます。本当に必要としている人に買ってもらえれば、と思っていたのです。
翌日、私は離婚届を提出し、家の売却手続きを開始。家の所有者は私だったため、売却自体は問題なく進み、買い手もすぐに見つかりました。
新しい所有者へ引き渡すために、義両親もその家を出ざるを得なくなりました。その後、元夫や義両親がどこへ引っ越したのかは知りません。
離婚直後は少しだけ寂しさもありましたが、シロがいつも隣にいてくれたおかげで、思ったより早く前を向くことができました。
あのとき離婚を決断したことを、私は一度も後悔していません。犬は家族です。そして、自分や大切な家族を守ってくれない人と、一緒に人生を歩むことはできないのだと、この経験を通して強く実感しました。
今は祖父が遺してくれた大切な思い出を胸に、新しい住まいでシロとの穏やかな毎日を送っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。