突然、叫んだ祖母
祖母の介護が始まって半年ほどたったころのことです。ある日突然、祖母が大きな声で「猫がいなくなった!」と叫びました。しかし、わが家では猫を飼っていません。祖母は、昔飼っていた三毛猫が今も家にいると思っているようでした。
祖母は「さっきまでここにおったのに、急にいなくなったんよ!」と言いながら、ベッドから身を乗り出し、部屋の隅や押し入れの中まで探そうとしました。
私は慌てて祖母の体を支えながら、どう声をかければよいのか考えました。そして、とっさに「きっと外に遊びに行ったんよ」と伝えたのです。
一日中続いた祖母との「猫探し」
その日は、祖母と一緒に猫を探して回ることになりました。庭の隅や物置の裏を確認し、近所の公園まで一緒に歩きました。もちろん、どこを探しても猫は見つかりません。それでも祖母は、本当に猫のことを心配していました。
私は戸惑いながらも、祖母の気持ちに付き合うしかありませんでした。何度探しても見つからない猫を探すうちに、気が付けば夕方になっていました。
すると祖母がふと立ち止まり、私に「あんた、よう付き合ってくれたねぇ」と言ったのです。その言葉を聞いた瞬間、私は少し泣きそうになりました。探していた猫はどこにもいませんでしたが、祖母の心には、猫を大切に思う気持ちがたしかに残っているのだと感じたのです。
枕元に置いた三毛猫のぬいぐるみ
その夜、私は祖母の枕元に三毛猫のぬいぐるみを置きました。祖母はぬいぐるみを見ると、「ああ、帰ってきたんじゃねぇ」と、安心したようにほほ笑みました。その表情を見て、私はようやく肩の力が抜けました。予想外の出来事に一日中振り回されましたが、最後には、祖母の心に残るやさしさに触れられたような気がしたのです。
祖母が探していたのは、猫そのものだけではなかったのかもしれません。かつて猫と一緒に暮らした日々や、そのころに感じていた温もりを思い出していたようにも感じました。
介護をしていると、突然の言動に戸惑い、どう対応すればよいのかわからなくなることがあります。しかし今回の出来事を通して、記憶が揺らいでも、誰かを大切に思う気持ちは残っていることがあるのだと感じました。
まとめ
祖母の言葉に耳を傾け、一緒に猫を探して歩いた時間は、単に祖母の世話をするだけではなく、祖母と同じ時間を過ごしたひとときだったように思います。振り回された一日の先には、思いがけない温もりが待っていました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:風間しずく/50代男性・会社員
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年7月)
※一部、AI生成画像を使用しています。
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