苦学生だった大学時代
僕は母子家庭で育ち、決して裕福とは言えない環境だったため、大学時代はお金に苦労する日々でした。そんな僕に目をつけ、暇つぶしのようにいびってきたのが同級生のA。
Aは僕がいつも質素な食事をしていたり、遊びを断ったりするのを見ては「お前、そんなにお金ないのかよ(笑)」と大勢の前でからかってきました。さらに、僕の耳には入らないところで変な噂を流されることもあり、当時の僕はすっかり孤立。肩身の狭い思いをしていました。
そんな大学生活の中で、唯一心安らぐ場所が大学の図書館でした。夢中で本を読んでいる間だけは、周囲の冷たい視線や嫌な言葉を忘れられたのです。
「卒業したら、絶対に自分の力で人生を切り開いてやる」
そう心に誓い、がむしゃらに勉強と仕事に励む日々を過ごしていました。
高級マンションで再会して…
大学を卒業して約10年後。一般企業に就職した後、空間デザインの魅力に目覚めた僕はデザイン事務所に転職し、下積みを経て猛勉強の末にインテリアコーディネーターの資格を取得しました。その後も経験を積み、現在はチーフデザイナーとして現場を任されるようになっていました。
そして迎えたのが、僕がデザインを担当した大人気高級マンションの記念すべきモデルルーム見学会です。
今回のマンションでは、外観や共用スペースだけでなく、モデルルームの内装デザインも僕が担当。そのため、僕も関係者として会場に立ち会っていたのです。
多くの客でにぎわう会場を見渡し、感慨深い気持ちでいたそのとき、聞き覚えのある声が響いていました。そこにいたのは、なんとA。僕の姿を見るなり
「お前みたいな貧乏人がこんなところに来るな! さっさと帰れよ(笑)」と、当時と変わらない傲慢な態度で罵ってきたのです。周囲の視線が集まる中、行き場のない悔しさと、大学時代に感じていた惨めさを思い出し、押しつぶされそうになっていました。
販売責任者のひと言で…立場逆転?
そのとき、僕を呼ぶ明るい声が響きました。振り返ると、このマンションの販売を担当する女性責任者が小走りで駆け寄ってきて……。
「□□(僕)さん! こんなところにいらしたんですね!」
彼女は笑顔で僕に声をかけると、戸惑うAを横目に、周囲にも聞こえるようにはっきり言いました。
「こちらは、今回マンションのデザインを担当されたデザイナーさんです! 何か勘違いされている方がいたようですが…」
彼女の言葉を聞いたAは、みるみる顔を青ざめさせて固まりました。さらに、周囲のお客さんからも「デザイナーさんに向かって、あんな言い方するなんて…」「さっきの態度、ひどかったね」とAの態度を非難する声が聞こえてきました。
何も言えなかったAは、恥ずかしかったのか顔を真っ赤に。そして、逃げるようにその場を去っていきました。
過去のトラウマを乗り越え…
見学会が無事に終わった後、僕は販売責任者の彼女と2人で打ち上げをすることに。そこで彼女は、
「いろいろ仕事の話をしていて、とても熱心な方なんだと感じていました。□□さんは、きっとこれからも素敵な作品を作り出すのでしょうね。楽しみにしています!」
と言ってくれて……。僕は思わず心が温まりました。Aの嫌がらせで、「僕はダメなんだ」という気持ちがどこかにずっとありました。しかし、実際に近くで僕のことを見守ってくれていた人の声を聞くことができて、僕は本当の意味で自信を持つことができたのです。
現在では、彼女の会社と継続的に仕事をするようになり、良きビジネスパートナーとして互いに高め合っています。
長い間、過去のトラウマに縛られていた僕ですが、どんなときも前を向いて努力を続けていれば、見てくれている人は必ずいる。そう確信できたことは、これからの人生においても大きな支えとなっています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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