結婚を楽しみにしていた僕たち
A子とは仕事関係の知人を通じて出会い、数年間付き合っていました。
付き合い始めたころは、近場へ出かけたり、一緒に食事をしたりするだけでも楽しそうにしていた彼女。ところが、SNSへ写真を投稿するようになってから、少しずつ様子が変わっていったのです。
高級ホテルや海外旅行など、華やかな暮らしを発信する人たちに憧れるようになり、自分でもカフェや旅行先の写真を積極的に投稿するようになりました。
「いつか私もこんな生活ができたらいいな」
そんなことを口にすることもありましたが、当時はそれほど気に留めていませんでした。
それでも、僕たちの関係は順調で、結婚の話も少しずつ具体的になっていきました。両家へのあいさつを済ませ、これから住む場所について話すことも増えていたころです。
ある日、A子から「家に来てほしい。大事な話がある」と連絡があったのです。
「別の人からプロポーズされた」
A子の家を訪ねると、彼女はどこか浮かれているように見えました。僕の顔をまともに見ようともせず、落ち着かない様子で話し始めます。
「別の人からプロポーズされたの。だから、あなたとは別れたい」
あまりに突然で、僕はしばらく言葉が出ませんでした。
聞くと、相手はSNS関連のイベントで知り合った大企業の創業家の息子。将来的には会社を継ぐ予定だといいます。その後も連絡を取り合って親しくなり、すでにプロポーズまで受けているとのことでした。
「もう返事をしたの?」
そう聞くと、A子はあっさり「うん」と答えたのです。僕と婚約したまま、よく平気で別の男性のプロポーズを受けられるものだと呆れました。
もちろん悔しさはありました。それでも、ここで取り乱したり、すがったりする姿だけは見せたくありません。僕はできるだけ平静を装い、笑顔で返しました。
「わかった。頑張って」
すると、A子は少し意外そうな顔をしました。
その後、結婚に向けてかかっていた費用などについて話し合い、僕たちの婚約は正式に解消となりました。
華やかだったSNSに異変が
別れた直後はさすがに落ち込みましたが、仕事に集中したり、友人と出かけたりするうちに、少しずつ以前の生活を取り戻していきました。
A子とは連絡を取っていなかったものの、SNSではときどき投稿を目にしていました。しばらくすると、例の男性と結婚したこともわかりました。
新生活を楽しむ様子や華やかな写真が次々と投稿されており、A子は念願だった生活を手に入れたのだろうと思っていました。
ところが、ある時期を境に投稿がぱったりと止まりました。さらに別れてから約1年後、久しぶりにA子のSNSを開こうとすると、アカウントそのものが消えていたのです。
少し気になっていたころ、共通の知人と会う機会があり、A子の話になりました。そこで聞いたのは、僕の想像とはかなり違う話でした。
どうやら夫の家は、創業家という立場上、家族のSNSにもかなり気をつかっていたそうです。特に義母は、自宅や高価な持ち物、親族に関することを勝手に発信するのを快く思っておらず、A子にも投稿を控えるよう伝えたのだとか。
さらに夫自身も意外なほど堅実で、親が裕福だからといって派手にお金を使うタイプではなかったそうです。
A子が思い描いていたのは、好きな場所へ旅行し、華やかな暮らしをSNSで発信する生活。しかし実際には、親族や会社関係者との付き合いも多く、思い描いていたような自由な暮らしではなかったといいます。
知人によると、A子はすっかり疲れてしまい、「こんなはずじゃなかった」とこぼすこともあったそうです。
自分で選んだ道
その話を聞き、僕は少し複雑な気持ちになりました。
僕との結婚をやめてまでA子が求めた生活は、実際には想像していたものとは違ったのでしょう。
ただ、それはA子自身決めた道です。僕もあの日、彼女との関係に区切りをつけ、前へ進みました。
結婚は、相手の肩書きや華やかな生活だけで決められるものではありません。一緒にどんな毎日を送りたいのか、価値観が合うのかも大切なのだと、あらためて感じた出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!