

突然泣き出した妻
結婚式の準備は大きなトラブルもなく進み、僕は「ようやくここまできたな」と達成感を覚えていました。
ところが食事を終え、何気なく妻を見ると、目に涙を浮かべていたのです。最初は準備の疲れが出たのだと思いましたが、次第に妻は、声を出さずに泣き始めました。
驚いた僕が理由を尋ねても、妻は「大丈夫」と答えるだけ。体調が悪いのか、それとも結婚式を前に不安になったのかと考えましたが、理由はわからず……。僕は隣で妻を見守ることしかできませんでした。
家族への思いを聞いて…
しばらくすると、少し落ち着いた妻が、ぽつりぽつりと話し始めました。
「明日で本当に実家を出るんだなと思って」
その言葉を聞き、僕ははっとしました。結婚後も妻の実家の近くに住む予定で、両親と会えなくなるわけではありません。それでも妻にとっては、実家で家族と暮らしてきた日々に一区切りがつくタイミングだったのです。
その後、妻は幼いころの思い出や、家族と過ごした何気ない日々について話してくれました。反抗した時期もあったものの、振り返れば、家族の存在がずっと支えになっていたそうです。
僕自身は、結婚式を「夫婦のスタート」としてばかり考えていました。そのため、妻が家族とのこれまでの時間に思いを巡らせていたことは、僕にとって意外な事実でした。
結婚式当日を迎えて
翌日の結婚式は、僕にとって想像以上に温かな時間になりました。
特に印象に残ったのは、披露宴で妻が両親へ手紙を読む場面です。妻はこれまでの思い出を振り返りながら、両親への感謝を一つひとつ伝えていました。
その姿を見て、僕は前日に涙していた妻の気持ちが少しだけわかったような気がしました。実家を離れる寂しさや、ここまで育ててもらったことへの感謝、そしてこれから始まる結婚生活への思いなど、さまざまな感情が重なって涙があふれたのかもしれません。
結婚式が終わったあと、妻は晴れやかな表情をしていました。その顔を見て、前日の涙もまた大切な節目だったのだと感じました。
今でも結婚式の写真を見ると、前日の妻の涙を思い出すことがあります。妻が家族への思いを話してくれたあの夜は、忘れられない大切な思い出になりました。
著者:中根藤虎/20代男性・愛知県在住の理学療法士。趣味はサッカー観戦と旅行。
作画:おはな
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年6月)
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