ところが、バースプランの内容を伝えると、夫は渋い顔。
「出産に立ち会うなんて、俺には無理だよ。怖いし……」そう拒む夫に、私は思わず言い返しました。
「その怖い出産に、私はひとりで向き合うの? そばで支えようとは思わないの?」
話し合いの末、夫はしぶしぶ立ち会いに同意。しかし最後まで、「もし急な仕事が入ったら、行けなくても仕方ないよな」と何度も念を押していました。
立ち会い出産のドタキャン
そして迎えた出産予定日——。夫が仕事に出掛けてすぐに陣痛が始まり、私は病院へ向かいました。
夫に連絡をしたものの、すぐには返信がなく、連絡がついたのはお昼ごろのこと。「ごめん。急な仕事が入って、今日は行けなくなった。お前ならひとりで大丈夫だろう」という、立ち会いキャンセルでした。
夫は、部長から直々に頼まれた、自分にしか対応できない仕事なのだと説明しました。「今後の昇進にも関わるかもしれない。長い目で見れば、仕事を優先したほうが家族のためになるだろ?」と、仕事を優先する理由を並べます。
あれほど何度も出産予定日を伝え、夫も会社に相談していたはずです。それでも、どうしても夫でなければならない仕事が、よりによって今日入るものなのでしょうか。
ちょうど同じとき、私の出産に付き添うため病院へ向かっていた姉から、メッセージが届きました。
「今、駅の近くの病院であなたの旦那さんを見かけたんだけど……」
姉によると、私の病院へ向かう途中、別の産婦人科の前で夫を見かけたそうです。夫は、おなかの大きな若い女性に付き添っていたのだとか……。
夫はなぜ病院に?
姉が声をかけようと近づいたところ、その女性が夫の腕をつかみ、責めるように話し始めたといいます。
「急におなかが痛くなって、どれだけ怖かったと思っているの? いつも一緒にいてくれたわけじゃないんだから、奥さんより私についていてよ!おなかの子の父親なんだから!」
どうやらその女性は、急な不調があり産婦人科に駆けつけたよう。夫は周囲を気にしながら、「わかったから、大きな声を出すなよ」と女性をなだめ、そのまま一緒に産婦人科へ入っていったと姉は話します。
仕事に行っているはずの夫が、なぜ妊婦に付き添って産婦人科にいるのでしょうか。
そこで私は、仕事だと言い張る夫に「今、病院にいるんでしょう? 浮気相手の受診には付き添うのね」と送りました。
「何の話だよ」と夫がシラを切っても、怯むことはありません。「あなたが妊婦さんと一緒にいるところを、お姉ちゃんが見たの。その人、『おなかの子の父親なんだから』って言っていたそうね」と、陣痛の合間に返信しました。
すると夫は、「誤解だ」「仕事関係の知人を助けただけだ」と苦しい言い訳を始めました。しかし、「それなら、どうしてあなたの子どもだと言っていたの?」と問い詰めると、夫はようやく観念したよう。
「俺だって、本当はそっちに行くつもりだったんだ。でも、あいつが不安だから来てくれってうるさくて……」
そのメッセージを目にした瞬間、こらえていたものが一気にあふれました。「うるさいと言いながら、結局その人を優先したのね。私がひとりで出産を迎える気持ちは、考えてもくれなかったんだ」
その後、夫からの返信は途絶えました。
「私はもうすぐ分娩室に入る。あなたを待つつもりはないから」そう送ったあと、私はもうひとつだけ付け加えました。「出産が終わったら、今後のことを話しましょう。私は離婚するつもりです」
夫への怒りや悲しみは消えませんでしたが、気持ちを切り替えるほかありません。私は姉や病院のスタッフに支えられながら出産に臨み、無事に元気な男の子を出産しました。
不倫相手の子どもの父親は…
その翌日、ようやく姿を見せた夫は、すっかり憔悴していました。そして開口一番、「俺もだまされていたんだ」と話し始めたのです。
話を聞くと、不倫相手は『おなかが痛くて病院にきてます。予定日は7月!』という言葉とともに、病院名のわかる写真をSNSに投稿していたそうです。その投稿を見てすぐに駆けつけたのが、彼女の元交際相手だという男性でした。
男性が別れを告げられたのは、2月のこと。「予定日が7月なら、時期的に自分の子どもではないか。そうであれば父親に相応しいのは自分だ! 復縁を申し出たい」——病院から出てきた夫をつかまえ、男性はそう打ち明けたといいます。
つまり不倫相手は妊娠した当時、夫とこの男性の両方と関係を持っていたことになります。2人が顔を合わせたことで、女性が双方に別の相手の存在を隠していた事実が明らかになったようです。
自分も被害者なのだと訴えたかったのでしょう。夫は「おなかの子が俺の子かどうかもわからない」と、不倫相手との間に起きたことを一方的に並べ立てます。
私は心底あきれ、「今は顔を見たくない」と夫に帰ってもらい、体を休めることにしました。
数日後、夫から再び連絡があり、その後の話を聞きました。
二股をかけていた男性ふたりが鉢合わせしたことで観念したのか、彼女は妊娠がわかった当時、元交際相手との関係も続いていたことを認めたそうです。
夫は「あんな女だとは思わなかった」「一時の気の迷いだった」と訴え、離婚を考え直してほしいと迫ってきました。しかし、不倫相手に別の男性がいたとしても、夫が私を裏切った事実は変わりません。
私は、出産前に伝えたとおり離婚の意思は変わらないと告げました。
退院後、私は弁護士に相談し、夫とは別居したうえで話し合いを進めました。夫は離婚を渋っていましたが、数カ月にわたる話し合いの末、離婚が成立。息子の親権は私が持ち、慰謝料や養育費についても書面で取り決めました。
現在は、姉をはじめとする家族の支えを受けながら、息子を育てています。
ひとりで子どもを育てていくことに不安がないわけではありません。それでも、平然とうそをつき、妻の出産より不倫相手を優先するような夫と暮らし続けるより、この選択でよかったと思っています。
これから何があっても、息子が安心して暮らせるよう、私自身がしっかり前を向いていくつもりです。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
出産は、どれほど準備を重ねていても大きな不安や恐怖を伴う命がけの大仕事です。だからこそ、パートナーがどれだけ妻の気持ちに寄り添い、共に向き合えるかが何よりも大切。その後の夫婦の信頼関係を大きく左右することもあるでしょう。
もちろん、こんな大切な時期に裏切り行為に走るなんて論外です。大切な命を迎える妻の不安をしっかり汲み取り、親としての覚悟を持って支え合っていきたいものですね。
【取材時期:2026年7月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。