急に始まった新居チェック
その背景には、義母が家事や育児にたびたび口を出し、義兄夫婦が疲れてしまったことがあったそう。そのため、義両親は毎月入っていた生活費がなくなり、住宅ローンの返済もまだ数年残っていたことから、以前より家計が厳しくなっていたようです。
それまで新居にほとんど関心を示さなかった義母から、頻繁に電話がかかってくるようになりました。「新しいお家、広くて良いわね。何部屋あるの? 引っ越しはいつなの?」「子どもはまだ1人だから、一部屋くらい余るんでしょう?」
電話のたびに、新居のことを探るような質問をする義母。夫も何か感じたのか、「俺たちは同居するつもりはないからね」と釘を刺しました。しかし義母は、「やだ、そんな話してないじゃない!」と軽く笑ってごまかすだけ。
嫌な予感は消えないまま、私たちは引っ越しの日を迎えました。段ボールに囲まれたリビングで、新しい生活への期待に胸を膨らませていたとき、インターホンが鳴ったのです。
私たちの部屋はどこ?
モニターに映っていたのは義両親。しかも、足元にはキャリーケースまで置かれていました。玄関を開けると、義母は新居をのぞき込み、挨拶もそこそこに言ったのです。
「私たちの部屋はどこ?」一瞬、意味がわかりませんでした。夫が用意できる部屋などないと伝えると、義母は、「でも、一部屋空いてるんでしょう? だったらそこを使えばいいじゃない」と当然のように返しました。
話を聞くうち、義両親は住宅ローンを払い続けるのが厳しく、このままでは実家を手放すことも考えなければならないため、その場合は私たちと同居するつもりだったことがわかりました。
ところが、夫が同居を断ると、義父は「一緒に住まないっていうなら、実家のローンくらい払ってくれてもいいだろ」と言い出したのです。同居を受け入れるか、それが嫌ならお金を出すか。あまりに一方的な理屈に、頭の中が真っ白になりました。すると夫が口を開きました。
「悪いけど今日は泊められないよ。荷物も持って帰って。そこまで言うなら、こっちも今後のことを考えるから」義両親は不満そうでしたが、夫が引かないとわかると、しぶしぶ帰っていきました。ただ、夫の最後の言葉を都合よく受け取ったのか、帰り際にはどこか期待している様子でした。
夫が終わらせたこと
静まり返ったリビングで、私は夫と向かい合いました。「まさか、本当にローンの手伝いをするの?」と尋ねると、夫は首を横に振りました。
実は私たち夫婦は、以前から夫の希望で義両親へ毎月数万円の仕送りをしていました。さらに、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電が壊れた際など、急な出費のときにも何度か援助してきたのです。「無理のない範囲なら」と私も了承していましたが、義両親にとっては、いつしかそれが当たり前になっていたようです。夫は「このまま援助を続けるのは違うと思う」と話しました。
数日後、夫は義両親と改めて話をすることにしました。そして、はっきりと伝えたのです。「同居はしないし、実家のローンも出せない。俺たちもこれから自分の家のローンを払っていくことになるから、毎月の仕送りも今月分で終わりにするよ」
義父は「親を見捨てるのか!?」と声を荒らげましたが、夫の表情は変わりませんでした。「兄さんたちが出ていった理由はわかってるだろ。俺たちの家や援助を当てにするんじゃなくて、これを機に自分たちの生活を見直してほしい」義両親は、しばらく何も言い返せませんでした。
空き部屋は今……
夫は最後に、「本当に今のままローンを払っていくのが厳しいなら、一度不動産会社に相談して、家を手放すことも考えたほうがいいよ」と伝えました。
すると義両親は、「お前たちも一緒に住ませてくれないのに、この家まで手放せっていうのか!?」と反発。長年暮らしてきた家だけに、簡単には手放したくなかったようです。
それでも長男夫婦が戻ることはなく、私たちからの援助も途絶えたまま。しばらくして、義両親もようやく不動産会社へ相談したそうです。家を売れば残りの住宅ローンを払い切れる見込みだとわかり、悩んだ末に売却を決めたとのことでした。
その後、義両親は以前よりコンパクトな住まいへ転居しました。私たちも夫婦で相談し、これを最後の援助として、引っ越し費用の一部だけを負担することに。それ以降は、必要以上に踏み込まない距離感で付き合っています。
ある日、荷ほどきが落ち着いたころ、義母から「私たちの部屋はどこ?」と言われた、あの一室をのぞきました。今では、家族で選んだ小さな家具や娘のおもちゃが並び、娘もそこで楽しそうに遊んでいます。この家は、私たち家族が暮らしていくための場所なのだと、改めて実感したのでした。
◇ ◇ ◇
親だからといって、子どもの住まいやお金を自分の都合で当てにしたり、家庭の決定に踏み込んだりしてよいわけではありません。親子ともに自立した立場で、お互いの生活や意思を尊重しながら適切な距離感で付き合っていくことが大切なのではないでしょうか。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。