しかし、甥と過ごすうちに、単なる大人のマネでは済まされない事情が隠れていたとわかったのです。
甥の言葉遣いが悪くなった理由
妹から聞いていたとおり、甥と一緒に過ごすのは大変でした。
何をするにも「めんどくせぇ」「うぜぇ」と口にし、私が言葉遣いを注意すると、「うるせぇ、黙れクソババア!」と怒鳴るのです。以前はそのような話し方をする子ではなかったため、私はいったい何があったのかと戸惑いました。
それでも、私は根気よく注意し続けました。このままで将来困るのは、甥自身だからです。
そんなある日、甥が暴言を連発。私が少し強く注意しようとしたそのとき、そばで聞いていた母が先に声を上げました。
「そんな言葉を人に向けてはいけません!」
普段は穏やかな母が厳しい口調で叱ったため、驚いたように動きを止めた甥。
母が「誰からそんな言葉を教わったの?」と尋ねると、甥はしばらく黙り込んだあと、小さな声で「パパ」と答えました。さらに話を聞くと、父親から「弱く見られないように、強い言葉で相手を黙らせろ」と教えられていたそう……。
母は甥の目を見ながら、「そんな言葉を使われたら、相手はとても傷つくよ。一緒に遊びたいと思ってくれるお友だちもいなくなるかもしれない」と説明しました。
すると、甥はびっくりしたように目を見開いたあと、泣き出しました。そして「もう悪い言葉は使わない」と謝り、私たちに約束してくれたのです。甥の素直な反応を見て、今からでも少しずつ改善していけるのではないかと感じました。
義弟の考えを変えた甥の一言
甥が少し落ち着いてから、母と私は改めて詳しく話を聞くことに。
義弟は甥に暴言を教えただけでなく、「ママを養っているのはパパだから、ママには何を言ってもいい」と話していたそうです。甥は父親の言葉を正しいものだと信じ、その話し方をそのまままねしていたのでした。
事情を知り、事態を重く見た母は、妹夫婦に仕事が終わり次第、実家へ来るよう連絡。
その日の夜、母が義弟に「この子が、乱暴な言葉はパパから教わったと言っていたけれど、どういうこと?」と尋ねました。
最初こそ「男の子だから強く育てようと思っただけです」と言い訳をしていた義弟。しかし、母から「人を傷つける言葉を使うことと、強さはまったく違う」と指摘されると、何も言い返せなくなりました。
しばらく経って、義弟が口を開きかけたそのとき――それまで黙って話を聞いていた甥が、泣きながら義弟に訴えたのです。
「パパがみんなにきらわれちゃう! もうやめて!」
先ほど母から言われたことが心に残っていたのでしょう。息子からまっすぐにそう言われた義弟は、ようやく自分の言動が家族に与えていた影響に気づいたようでした。
義弟は甥と妹に頭を下げ、「怖い言葉を使うことが強さだと思わせてしまってごめん」と謝りました。
妹家族が決めた新しいルール
それから妹夫婦は、家庭内での言葉遣いを見直しました。
甥の言葉遣いも、すぐに完璧に直ったわけではありません。しかし、乱暴な言葉が出るたびに妹が理由を説明し、本人にも言い直させたそうです。数週間ほど経つと、以前のような暴言はほとんど口にしなくなりました。
一方、義弟も、気を抜くと乱暴な言葉が出てしまうようでした。そこで妹家族は、乱暴な言葉を使った大人が貯金箱に1,000円を入れるというルールを決めました。罰を与えることよりも、家族全員で言葉遣いを意識するきっかけにすることが目的だったそうです。
貯まったお金は家族で出かけるために使うと決めたらしく、妹は「最近は夫も言葉を選ぶようになったよ」とうれしそうに話していました。
甥の暴言だけを叱っていたら、その原因には気づけなかったかもしれません。身近な大人の言葉や態度が、幼い子どもにどれほど大きな影響を与えるのかを痛感した出来事でした。
◇ ◇ ◇
子どもは、身近な大人の言葉や態度をよく見ています。乱暴な言葉遣いが気になったときは、子どもだけを叱るのではなく、なぜそのような言葉を使うようになったのか、周囲の環境にも目を向けることが大切です。
また、大人自身も普段の言葉遣いを振り返り、相手を傷つける言葉ではなく、気持ちを伝えるための言葉を選ぶ姿勢を大切にしたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
根本的な義弟の大問題な考え方が軽く流されてるよ