廃業まであと1カ月…店先に現れた女の子
廃業まであと1カ月に迫った、ある日のこと。店先をじっと見つめている、小学校低学年くらいの女の子に気づきました。何日か続けて見かけたため、気になった私は「おなか、すいてるのか?」と声をかけました。
女の子は曖昧に返事をしましたが、私はチャーハンを作って渡すことに。「あと1カ月でこの店はなくなっちゃうけど、よかったら今度は家族とおいで」と声をかけ、見送りました。
このときの私は、まさかこの出会いが自分の運命を大きく変えることになるとは、思ってもいませんでした。
「家族とおいで」数日後、店に現れたのは…
数日後、女の子は本当に「家族」を連れて店にやって来ました。話を聞いてみると、なんと一家は近くで公演をしている大衆演劇の一座だったのです。
女の子が「おじちゃんにもらったチャーハン、すっごくおいしかった!」とうれしそうに話したことをきっかけに、家族そろって食べに来てくれたのだそう。先日渡したチャーハンのお礼も、改めて伝えてくれました。
一座の面々は、私の作る料理を大絶賛。「これ、うちの連中にも食わせたい」と言ってくれ、なんと翌日からは役者さんだけでなく、裏方のスタッフまで次々と来店してくれるようになったのです。
それまで静まり返っていた店内は、久しぶりに活気を取り戻しました。
「次のお店にも行く!」女の子の言葉に…
「もうすぐ潰れる店なんだろ?」と冷ややかに見ていた周囲の店の人たちも、連日のにぎわいには驚いている様子でした。しかし、店舗の契約は月末まで。私は、閉店するという決意を変えることはありませんでした。
それでも、活気を取り戻した店内を眺めながら、「最後にこんな景色が見られるなんて思わなかった」と、胸がいっぱいに。
やがて、一座が次の公演地へ向かう日。女の子は私に「次のお店ができたら絶対行く!」と約束してくれました。私も「そのときは、もっとうまいチャーハンを食わせるよ」と笑顔で応えました。
お店を畳んだあと、私は心機一転、別の店で修業を始めることに。あのときの廃業は、決して悲しい“終わり”ではありませんでした。新しい店を出すという次の目標へ向かうための、大きな一歩になったのです。
◇ ◇ ◇
ほんの少しの親切が、思いがけない出会いやご縁につながることもあります。また、何かを終える決断は寂しさを伴う一方で、新しい目標へ向かうきっかけになることもあるのかもしれません。うまくいかないときこそ、目の前の人との出会いや、自分にできることを大切にしていきたいですね。
【取材時期:2026年9月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。