突然の心無い言葉。親ガチャ失敗と言われて
会社では周囲に過度な気を遣わせないよう、離婚の詳しい理由などは伏せ、なるべく明るく振る舞うように意識していました。「男手一つの子育て」は確かに大変な場面もありますが、周囲のサポートのおかげもあり、ささやかで平和な日常に確かな幸せを感じていたのです。
ある日、社内で年に一度の交流会が開かれたときのことです。同僚の一人が、お酒が入っていたこともあり、私に向かって突然心無い言葉を投げかけてきました。彼は自称「イクメン」で、日頃から家庭での自分の貢献度をアピールしては、周囲にマウントをとるようなタイプでした。
実はこの日、交流会に先立っておこなわれた社内表彰で、私は営業成績を評価され、表彰されていました。
どうやらそれが気に入らなかったのか、同僚は交流会が始まってから、ことあるごとに私へ嫌味を言ってきていたのです。
そしてついには、ニヤニヤと笑いながら、
「一人で子育てとか大変そうだな。お前、慰謝料も払ってるんだろ? 慰謝料まみれで母親もいないとかw お前の子ども、親ガチャ失敗だなw」
と吐き捨てたのです。
実際は、元妻の不倫で慰謝料を「もらっている側」なのですが、彼は勝手な憶測で私を貶めました。私自身を侮辱されるならまだしも、何より大切な娘の存在を「親ガチャ失敗」と嘲笑されたことに、激しい怒りと悔しさが込み上げ、私は思わず強く拳を握りしめました。
味方の登場と、行動で示す決意
私が怒りに任せて言い返そうとしたその時、私たちの会話を偶然耳にしていた女性社長がすっと近づいてきました。
「私もシングルマザーだけど?」
静かですが、とても芯のある声でした。それを聞いた同僚は一瞬で顔を青ざめさせ、「いや、社長の事ではなく…!」と激しく動揺し始めたのです。
社長の一言で場は静まり返り、私はハッとしました。こんな次元の低い言葉に感情を乱され、彼と同じ土俵に立つ必要はないのだと気づいたのです。私は彼に反論する代わりに、仕事と育児への真摯な姿勢で自分の正しさを示そうと心に決めました。
そして交流会から数日後、社長から声をかけられました。
「親目線での新しい商品開発や、社内託児所の設立プロジェクトに参加してほしい」
営業成績だけでなく、仕事と子育てに向き合う私の姿勢も見てくれていたようです。私はその言葉に背中を押され、現状をより良く変えるため、新たな挑戦に踏み出すことにしました。
崩れ去る自称イクメンのメッキ
数ヶ月後、プロジェクトが軌道に乗り始めた頃、会社の親睦を深めるためのバーベキュー大会が開催されました。家族同伴での参加が推奨され、私は娘を、例の同僚も妻と息子を連れて参加していました。
同僚は相変わらず周囲の社員に対して「俺は家事も育児も積極的にやってるからな」と偉ぶって豪語していました。しかし、彼の妻の表情は終始冷ややかなままです。
私が娘の食事の世話をしたり、他の子供たちと遊んだりしている姿をじっと見ていた同僚の妻は、ついに堪忍袋の緒が切れたようでした。
皆の前で、彼女は夫である同僚に向かって言い放ちました。
「口先だけで何がイクメンよ!子供のオムツのサイズも、ゴミ出しの曜日すら知らないくせに!自分の食べたお皿も片付けられない、まるで手のかかる大きな子供がもう一人いるみたいじゃない!」
さらに、同僚の息子までもが「パパは遊んでくれない。隣の家のワンちゃんと遊んでる方が楽しい」と無邪気に言い放ったのです。
自業自得の結末と、新しい未来
周囲の社員たちが唖然とする中、見栄を張っていた同僚は顔面蒼白になり、一言も反論することができませんでした。普段から家事や育児を妻に任せきりにし、外でだけ「いい父親」を演じていた彼のメッキは、完全に剥がれ落ちたのです。
その後、同僚は妻から愛想を尽かされて離婚を突きつけられたと風の噂で聞きました。社内でもすっかり居場所を失った彼は、やがてひっそりと会社を去っていきました。
一方の私は、社長と共に立ち上げた子供服のプロジェクトが大成功を収め、充実した日々を送っています。会社に託児所ができたことで、私だけでなく多くの社員が安心して働ける環境が整いました。
休日は、同じ境遇である社長親子と一緒に公園へ出かけることも増え、娘も新しい友達ができて楽しそうに笑っています。心無い言葉に屈せず、娘のために前を向いて歩んできた結果、私たちはかけがえのない笑顔あふれる日常を手に入れることができました。
◇ ◇ ◇
パートナーとの関係や子育ては、決して一人で抱え込むものではなく、日々の思いやりと行動の積み重ねの上に成り立つものです。
外の顔だけを気にして身近な家族をないがしろにしたり、他人の家庭の事情を勝手な憶測で貶めたりするような態度は、いつか必ず自分に返ってきてしまいます。
育児をどこか他人事のような「手伝う」感覚で捉えるのではなく、共に生活を築き、大切な家族の笑顔を守るパートナーとして、しっかりと「自分事」として向き合う意識を持って生活していきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。