弟の会社で秘書として働くことに
高校時代、私は学校生活にあまりなじめず、進学にも強いこだわりはありませんでした。そんな中で父が亡くなり、母を支えるために高校を中退して働くことを決意。
一方、弟は昔から勉強が得意で、大学への進学を希望していました。私は自分とは違う道を選ぶ弟を応援したいと思い、家計を支えながら進学を後押ししました。
その後、弟は大学へ進学し、在学中に起業。卒業後も事業を続け、数年かけて会社を大きくしていきました。
高校を中退して働き始めた私は、いくつかの会社で事務の仕事を経験しました。細かな作業や人をサポートする仕事は自分に合っていたようで、徐々に秘書のような業務も任されるようになったのです。
そんなある日、弟から「うちの会社で秘書をしてほしい」と声をかけられました。
ちょうど転職を考えていた時期でもあり、これまでの経験を生かせそうだと思って、弟の会社で働くことに。入社後は新しい環境に戸惑うこともありましたが、少しずつ仕事にも慣れていきました。
面接の日に現れた高校時代の同級生
その後、弟の会社はさらに成長し、秘書業務を担当する社員を増やすことになりました。弟から「一緒に働く人だから、よかったら姉さんも面接に同席してほしい」と言われ、私も参加することに。
面接当日、私はいつものように出社後の掃除をしていました。気づいたところを簡単に掃除してから仕事を始めるのが、いつの間にか日課になっていたのです。
すると、後ろから声をかけられました。
振り返ると、そこにいたのは高校時代の同級生・A男でした。A男は、在学中から家庭環境や成績のなど、何かと私を見下すような言動をしてきた人です。
どうやらA男は、この会社の採用面接を受けに来たようでした。
掃除をしている私を見ると、A男は会社の清掃員だと思ったらしく、「高校辞めたって聞いてたけど、ここで掃除してるんだ」と笑いました。
さらに、自分は秘書の面接を受けに来たのだと得意げに話し、そのまま控え室へ。私は「そうなんだね」とだけ返し、そのまま掃除を続けました。
面接で見えたA男の本音
しばらくして面接が始まりました。
A男が面接室へ入ってくると、私を見た瞬間、驚いたように足を止めました。さらに弟から、私が秘書として働いていると説明されると、A男は一瞬言葉を失い、明らかに焦った様子を見せました。
それでも、予定どおり面接を進めることに。
履歴書を見ると、A男はこれまで複数の会社で働いていましたが、どこも在籍期間はあまり長くありませんでした。
弟が退職理由を尋ねると、最初は「正当に評価してもらえなかった」「上司と考え方が合わなかった」と話します。しかし、詳しく聞いていくうちに、「自分より学歴の低い上司に指示されるのが嫌だった」といった言葉も出てきました。
そこで弟は、「うちにも、あなたより学歴の低い上司がいるかもしれません。それでも問題なく働けますか?」と質問。あわせて、会社では学歴よりも、これまでの経験や周囲と協力して働けるかを重視していると伝えました。
その後も質問を続けましたが、A男の口から出てくるのは以前の職場への不満が多く、周囲とどのように仕事をしてきたのかは、最後まであまり伝わってきませんでした。
面接後、ほかの応募者とあわせて選考した結果、A男は不採用となりました。
学歴だけではわからないこと
後日、高校時代の友人から、A男はその後も転職活動に苦戦しているらしいと聞きました。
一方、会社には別の人が入社し、今では私が仕事を教えることも増えています。
高校を中退したことで、進める道が限られると感じる場面はありました。それでも、働く中で身につけてきた経験が、今の仕事につながっています。
学歴が役立つ場面はもちろんあると思います。けれど、それだけで人の仕事ぶりや価値まで決まるわけではない。今回の出来事を通して、改めてそう感じました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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