まさかの再会
打ち合わせの会議室に現れたのは、学生時代に付き合っていた元カノでした。
裕福な家庭で育った彼女は、交際中から僕の家柄や将来性を見下していました。最後は一方的に別れを告げられ、僕にとっては苦い思い出の相手です。
彼女はクライアント企業で経験を積み、今回のプロジェクトのサブリーダーに抜擢されていました。しかも、僕とのやり取りを担当する窓口だといいます。
「あら、こんなところで会うなんてね。今の私にとって、あなたはただの外注先。公私混同しないで、きっちり働いてもらうわよ」
冷ややかな視線も高圧的な態度も、昔と何ひとつ変わっていません。
不安を覚えながらも、僕は仕事だと割り切って挨拶を済ませました。
加速する無茶ぶり
プロジェクトが始まると、彼女の横暴ぶりはさらにエスカレートしました。
具体的な指示もなく、「なんか違う」「やり直して」の繰り返し。深夜や休日にも連絡が入り、無理な納期を押し付けられました。
追加料金や作業時間について相談すると、彼女は鼻で笑って言い放ちます。
「アンタなんかタダで十分!嫌なら仕事減らすわよw 仕事もらえるだけありがたいんだから。代わりなんていくらでもいるのよ」
徹夜で仕上げた修正案を、「やっぱり前のほうが良かった」と、ろくに確認もせず突き返されたこともあります。理由を尋ねても、「あなたが察するべきでしょ」の一点張りでした。
早く責任者へ相談するべきでしたが、紹介してくれた人の顔をつぶしたくなくて、僕は無理な要求にも応じ続けてしまいました。
一方、彼女は統括責任者に「順調に進んでいる」と報告していたようです。日々のやり取りは彼女に任されていたため、僕への暴言や無茶な要求は知られていませんでした。

ついに我慢の限界
ある日、彼女から全修正を命じるメールが届きました。
「私を満足させられないなら、契約打ち切りだから」
その瞬間、僕の中で何かが切れました。
「わかりました。じゃあ、契約終了で」
そう返信すると、彼女からすぐに電話がかかってきました。
「は? なんで!? 勝手なことしないでよ!」
「何度も『嫌なら契約終了』とおっしゃっていましたよね。これ以上、契約外の修正に無償で対応することはできません」
僕はこれまでの指示や暴言の記録を整理し、統括責任者へ送りました。
「担当者様から繰り返し契約打ち切りを示唆されております。今後の対応について、契約終了を含めて協議をお願いいたします」
もちろん、彼女にも同じメールを共有しました。
明らかになった裏の顔
記録を確認した統括責任者は、すぐに事実確認を開始。彼女が上司には「順調に進んでいる」と報告しながら、僕には無償作業を強要していたことが明らかになりました。
後日、統括責任者から正式な謝罪がありました。僕が最後に提出した修正案を完成品として採用し、報酬を全額精算したうえで、契約は終了することに。
一方、彼女は不適切な言動を厳しく指導され、プロジェクトのサブリーダーを外されたそうです。
「代わりなんていくらでもいる」と僕を見下していた彼女。しかし結局、プロジェクトから外されたのは彼女のほうでした。
僕も理不尽な要求から解放され、ほかの仕事に集中できるようになりました。その後は新しい依頼も増え、今では適正な条件のもとで気持ちよく働いています。
あのとき契約終了を決断して、本当によかったと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。