そんな私の癒やしは、小さいころに亡き祖母に買ってもらったクマのぬいぐるみ「オリバー」です。ふわふわなオリバーを抱きしめると、日々の疲れも吹き飛びます。しかし夫は「ただのガラクタだ」と鼻で笑うばかり。夫婦間の会話もほとんどなくなり、一緒にいる意味を考える日々を送っていました。
私の宝物は夫にとってはガラクタ!?
ある日、夕飯のメニューを巡って言い争いになりました。仕事が長引き、買ってきたお惣菜を並べたところ、夫は「一家の大黒柱に惣菜を出すなんてありえない」と不機嫌になったのです。さらに、私がソファに置いていたオリバーを床に投げつけ、自室にこもってしまいました。
オリバーは私にとって、大好きな祖母との思い出が詰まった大切なぬいぐるみです。夫もそのことを知っているはずなのに、私の気持ちをまったく尊重してくれません。私が「ぬいぐるみには乱暴に触らないでほしい」と伝えると、夫は「ただのぬいぐるみだろ! 稼ぎが少ないくせに意見するな」と怒鳴りました。
数日後、私が仕事を終えて帰宅すると、いつもソファにいるはずのオリバーがいません。家中を探し回っていると、後から帰ってきた夫が冷たい笑みを浮かべながら「この前遊びに来た会社の後輩にあげたよ」と言ったのです。
私の宝物はどこ?
夫の話によると、後輩がオリバーを見て「かわいい」と言ったため、勝手にプレゼントしてしまったとのこと。ショックで言葉を失う私を見て、夫はニヤニヤと笑っていました。
私が大切にしているものを奪うことで、自分の力を誇示しようとしたのでしょう。人の大切なものを勝手にあげてしまい、それを見て楽しむような態度は到底許せるものではありません。
数日間そんな状態が続いた後、夫は私が家事を放棄していることに腹を立てたようです。私に向かって「大の大人が、ぬいぐるみのことでいつまで意地を張ってるんだ。今謝れば家事をさぼったことは許してやるけど、それができないなら離婚だな」と言い放ちました。
夫としては、私が「妻の役割」を放棄してわがままを言っていると本気で思っており、離婚を盾に脅せば私が泣いて謝るとタカをくくっていたようです。それなのに追い打ちをかけるように、わざわざ記入済みの離婚届を差し出してきました。
これ以上、彼と一緒にいる意味はありません。私は「じゃあ離婚で」と冷たく返し、受け取った離婚届にその場でスラスラと記入しました。
「おい、正気か……?」
私がためらいなく署名する姿を見て、夫は明らかに動揺していました。離婚して本当に生活に困るのは、家事を一切しない自分だと、ようやく気付いたのかもしれません。
「もう決めたことだから。離婚するなら、すぐに出ていってね」
今住んでいるこのマンションは、祖母が残してくれたもので、結婚前に私が相続した私名義の家です。離婚となれば、当然出ていくのは夫になります。
妻の仕返し
もちろん、オリバーの件も泣き寝入りするつもりはありませんでした。以前、後輩がわが家に遊びに来た際、連絡先を交換していたことを思い出した私は、すぐに彼女へ連絡を取りました。
事情を話すと、後輩も「実は、強引に渡されて困っていたんです。本当にすみません」と謝罪してくれ、無事にオリバーは私の手元に戻ってきました。
一方、夫にはすぐに出て行ってもらうため、荷造りを急かしました。夫は自分の身の回りのものをまとめるだけで精一杯の様子。その荷物の中に、夫が昔ファンだったアイドルのサイン色紙が入った古い紙袋がありました。
私が「この袋も持っていく? それとも処分する?」と確認すると、焦っていた夫は中身をろくに見もせず「ただのゴミだろ、出勤ついでに捨てておいて」といら立ったように言ったのです。夫自身が自分の意思で捨てていいと言ったので、私は指示通りに未練なくゴミ捨て場へ持っていきました。
それから半年後のこと。すっかり平穏な日々を取り戻していた私のもとに、元夫から突然連絡がきました。「あのサイン知らないか? 今、プレミアがついてるらしいんだ!」と慌てた様子です。
私は冷静に「あのとき、あなたが自分で捨てていいと言ったから処分したわよ」と伝えました。元夫は絶句していましたが、中身を確認するよう促したのに怠ったのは彼自身。今さら私には関係のないことです。
◇ ◇ ◇
人にはそれぞれ、大切にしている物や思い出があります。自分には価値がわからなくても、相手にとっては心の支えになっていることもありますよね。夫婦だからといって、相手の物を勝手に扱っていいわけではありません。お互いの気持ちを大切にし、相手が嫌がることはしないという基本を忘れずにいたいですね。
また、もし相手と一緒にいることで自分の心がすり減ってしまうなら、距離を置くことも大切な選択です。自分の気持ちや生活を守るために、周囲にも相談しながら、冷静に判断できるといいですね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。