新しい上司の着任で職場の雰囲気が一変
私が働いていたスーパーに、新しい上司が着任したときのことは、今でもよく覚えています。
その上司は、なぜかパート従業員に対して高圧的な態度を取る人でした。長年通ってくださっている常連のお客様とあいさつをし、ほんの少し言葉を交わしただけでも、「私語はやめろ!」と厳しく注意されることがありました。
もちろん、仕事中に長々と世間話をしていたわけではありません。私は15年以上働くなかで、お客様との適度なコミュニケーションも接客の一部だと考えていました。
そこで一度、「お客様とのコミュニケーションも大切だと思うのですが」と上司に直接伝えたのです。
すると上司は、「パートが口出しするなよ」と一蹴。そのころから、職場には以前のような和やかな雰囲気がなくなっていきました。
上司の高圧的な言動に耐えられず退職する人も出始め、残ったスタッフの負担は増える一方。私も長く勤めた職場だったからこそ簡単には辞めたくありませんでしたが、「このまま働き続けるのは難しいかもしれない」と少しずつ退職を考えるようになっていました。
娘の授業参観への一言が決定打に
そんなある日、娘の授業参観の日程が決まりました。
日程が事前にわかっていたため、私は早めに職場へ電話し、上司に休みを取りたいと伝えることに。すると電話に出た上司は、私の話を聞くなりこう言ったのです。
「授業参観? そんな理由で休むなよ、パートのくせに」
思いがけない言葉に、私は言葉を失いました。
これまでも上司の言動には何度も疑問を感じていましたし、すでに退職を考え始めていました。それでも15年以上勤めてきた職場への思いがあり、なかなか決断できずにいたのです。
しかし、家族の予定まで軽視するような言葉を聞いた瞬間、張りつめていた糸が切れたような気がしました。
「わかりました。では退職します」
私がそう告げると、上司は驚いた様子で、「え? 本気で言っているのか?」と聞き返してきました。
それでも、私の気持ちはもう変わりませんでした。
「はい。もちろん、今すぐに辞めるつもりはありません。規定に沿って手続きをします。後日、改めて退職届を提出します」
そう伝えて電話を切ったあと、私は家族にも事情を話しました。そして後日、職場へ正式に退職届を提出。必要な手続きを進め、長年勤めたスーパーを退職することになったのです。
退職を知った同僚たちからは、続々と心配の連絡が。「できれば辞めないでほしかった」と言ってくれる人もいて、長年一緒に働いてきた仲間の存在がありがたく感じられました。
退職者が相次ぐ元職場
一方で、私が辞めたあとも職場の状況は改善しなかったようでした。さらに数人のパート従業員が退職したり、勤務日数を減らしたりしたそうです。
もともと人手に余裕のある職場ではなかったため、スタッフが減ったことで現場の負担は急激に増加。そして、上司の言動や人員不足について、ついに社員が本社に相談したと聞きました。
事態を把握した本社は、エリアマネージャーを店舗へ派遣。従業員への聞き取りや勤務状況などを確認し、なぜ短期間に退職者が相次いだのかを調べることになったそう。
その結果、例の上司の高圧的な対応やスタッフとのコミュニケーションに問題があったことが、本社でも重く受け止められたとのことでした。
後から聞いた話では、エリアマネージャーは店舗側に対し、私へ連絡を取って復帰をお願いできないか確認するよう指示したそうです。
そして退職から1カ月ほど経ったころ、私にも店舗側から連絡が来たのです。
「これまでの対応について申し訳ありませんでした。もし可能であれば、もう一度働いていただけないでしょうか」
まさか退職した職場から復帰を打診されるとは思っておらず、私は驚きました。もちろん、すぐに「戻ります」と答えることはできませんでした。
電話を切ってから、私はしばらくひとりで復帰すべきかどうか考えました。上司の言動に傷ついたことは事実でしたし、一度退職を決意した職場へ戻ることにも不安がありました。
それでも、15年以上働いてきた場所にはたくさんの思い出があります。退職後も連絡をくれた同僚や、長年顔を合わせてきたお客様のことを考えると、職場そのものが嫌いになったわけではないことにも気づいたのです。
私は店舗側に正直に迷っていることを伝えました。すると後日、本社のエリアマネージャーと面談することになったのです。
エリアマネージャーから思わぬ打診
本社のエリアマネージャーから今回の経緯について改めて説明を受け、これまでの対応について謝罪されました。
そして、エリアマネージャーは「復帰後は、ぜひ正社員に」と言ってきたのです。
私が15年以上勤務していたことに加え、長年の接客経験や仕事ぶりについて現場から評価する声があったとのこと。その実績を踏まえたうえで、復帰するのであれば、これまでと同じパートではなく正社員として働くことも検討してほしいと正式に打診されたのです。
突然の話で驚いた私は、その場では返事をせず、一度持ち帰って家族と相談することに。正社員になれば当然働き方も変わります。娘との時間や家庭との両立についても考える必要がありました。
その後、勤務条件について会社側とも話し合った結果、家族の理解も得られたため、私は正社員として職場へ復帰することを決意。今は正社員やパートなど、みんなが働きやすい職場になるように努めています。
一方、問題となった上司については、私の復帰前に本社による聞き取りなどを経て別店舗への異動が決まったと聞きました。
長年働いてきた職場を一度離れることになった今回の出来事。つらい経験ではありましたが、自分の働き方や家族との時間について改めて考えるきっかけにもなりました。
あのとき我慢して働き続けるのではなく、自分なりに考えて退職を選んだからこそ、今の新しい働き方につながったのだと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています