姉「お母さんに毎月8万円送って」
私は56歳。3歳上の姉と、78歳になる母がいます。父は数年前に亡くなり、母は現在1人暮らし。私は電車で2時間ほど離れた場所に住んでいますが、姉は母の家から車で20分ほどのところに住んでいるため、買い物や通院などを手伝ってくれていました。
母も年齢を重ね、以前のように自由に出歩くのが難しくなってきたことから、銀行でお金を下ろす必要があるときなどは、姉に頼むこともあったようです。
そんなある日、姉から電話がありました。
「お母さん、最近いろいろお金がかかるみたい。年金だけじゃ厳しいって」
そして、「私もできる範囲で出してるんだけど、あなたも毎月8万円くらい送ってくれない?」と言われました。8万円という金額に少し驚きましたが、姉は母の近くで日々のことを支えてくれています。私は、「わかった。離れていて何もできない分、お金くらいは出すよ」と答えました。
姉から教えてもらった母名義の口座に、その月から8万円ずつ振り込むことにしました。姉は「お母さんには私から伝えておくね」と言っていました。
母とは、その後も時々電話で話していました。「生活は大丈夫? 困っていることはない?」と聞くと、母はいつも「節約しながら、何とかやっているわ」と答えていました。
私は、送ったお金も生活の足しになっているのだろうと受け止めていました。母名義の口座に振り込んでいることもあり、まさか入金そのものを知らないとは思わず、金額を挙げて確認することはなかったのです。
そうして半年。私が振り込んだ金額は、合計48万円になっていました。
母「1円も受け取ってないけど?」
半年ほどたったころ、私は久しぶりに母の家へ行きました。お茶を飲みながら近況を話していると、母が「最近、何でも高くなったから、買いたいものも我慢しているのよ」と話したので、私は気になって尋ねました。
「電話でも、節約しながら何とかやっているって言ってたよね。毎月送っている8万円でも、まだ足りない?」
すると母は、きょとんとして私を見つめました。
「……8万円?」
「うん。もう半年くらい。お姉ちゃんから、お母さんの生活費が足りないって聞いたから」
母はしばらく私の顔を見つめた後、「私、あなたから1円も受け取ってないけど?」と言ったのです。
母は、私から送金されていたこと自体を知らなかったようです。
今度は私が固まりました。母自身も状況がわからない様子でした。そこで私は、振込履歴をスマートフォンで確認しました。毎月8万円。間違いなく半年間で48万円を振り込んでいます。
母も不安になったようで、「通帳を見てみようか」と言いました。
毎月8万円の入金後に続いていた出金
母が通帳を出してきましたが、しばらく記帳しておらず、最近の取引はわかりませんでした。そこで後日、母と銀行へ行き、入出金の明細を確認することにしました。
母の家に戻り、入出金の明細と私の振込履歴を照らし合わせました。毎月8万円の入金は確認できましたが、その数日以内に、ほぼ同じ金額が現金で引き出されていたのです。半年分を確認すると、毎月同じような出金がありました。
私が「この出金に心当たりはある?」と母に聞くと、「ないわよ。そんなにまとめて下ろした覚えはないもの」と答えました。母は外出が大変になってから、生活費の引き出しを姉に頼み、キャッシュカードを預けることがあったと言います。
また、年金だけで暮らす厳しさを姉にこぼしたことはあっても、私に毎月8万円の援助を頼んでほしいと伝えたことはない、とのことでした。
そこで私は、確認のためにその場で姉に電話しました。私が「私が半年間送った48万円、どうなってるの?」と聞くと、姉は一瞬黙り込んだ後、「どうって……お母さんのために使ってるよ」と言いました。
私が「でも、お母さんは私からの送金を知らなかったし、この出金にも心当たりがないって。入出金の明細を見ると、私が振り込んだ数日以内に、毎回ほぼ同じ金額が下ろされているんだけど」と言うと、再び沈黙が続きました。
すると母も電話口に向かって、「このお金、あなたが下ろしたの? 私のために使ったって、何に使ったの?」と言いました。
しばらくして、姉は小さな声で「……ごめん。すぐに戻すつもりだった」と言いました。そして、無断で使ったお金を返せないまま翌月の送金にも手を付け、半年間で送られたお金の大半を、自分の生活費に使ってしまったと認めたのです。
私はあぜんとしてしまいました。
「私はお母さんのためだと思ったから48万円も送ったんだよ」
母も、「私の名前の口座だからって、勝手に使っていいわけじゃないでしょう」と厳しい口調で言いました。姉はそれ以上言い訳をせず、何度も謝りました。
その後、姉に出金したお金の使い道を説明してもらい、母のための支出と、姉自身が使った分を整理しました。無断で使った分は母の口座に戻すこととし、返す金額や毎月の返済額、振込日を書面に残しました。
母は姉からキャッシュカードを返してもらい、暗証番号も変更しました。今後、現金の引き出しを手伝ってもらう必要があるときの対応については、銀行に相談することにしました。
まとめ
私は姉のことを信頼していました。母の近くでいろいろ動いてくれていることへの感謝もあり、「姉が言うなら間違いない」と思い、金額の内訳すら確認していませんでした。
けれど、半年で48万円となると、決して小さな金額ではありません。「家族だから大丈夫」と思い込むことと、家族を信頼することは、少し違うのかもしれないと感じた出来事でした。
母の世話をしてくれる姉に、お金の使い道まで尋ねるのは気が引けていました。けれど、援助の目的や必要な金額を母本人とも共有していれば、行き違いや異変に気付く機会はあったはずです。確認することを、信頼していない証拠のように考える必要はなかったのだと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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