お見合い会場に到着
大変お世話になった社長からの紹介ということもあり、僕はお見合いを引き受けることにしました。
お見合い当日、会場となった地元の老舗ホテルへ行くと、ロビーで支配人である女性と顔を合わせました。僕がお見合いできたことを明かすと、彼女から「後ほどご挨拶に伺います」と言われました。
その後、僕は相手の女性とその両親と会い、お見合いが始まったのです。
僕の仕事を知った相手家族は…
その後、お見合いが始まると、相手の父親は娘を裕福な家庭に嫁がせたいという思いが強いようで、僕の仕事や家柄について次々と質問をしてきました。僕が自分の仕事を説明し、自ら現場にも足を運んで施工に立ち会っていることを話していると……相手の父親の態度が一変。
「なんだ、現場に出るような仕事をしているのか」と言われてしまったのです。僕のことを紹介してくれた社長は、相手の父親に「若くして会社を立ち上げた優秀な経営者がいる」と伝えていたそう。
社長が地元では有名な企業の社長であったことから、相手の父親は、僕にも裕福な家柄や強い後ろ盾があるものだと、思い込んでいたようです。僕の顔を見ながら、「娘には不釣り合いだな(笑)」と半笑い。
相手の女性も、僕を値踏みするように見ながら「期待外れ」と笑っていました。あまりにも失礼な彼らの態度に、僕は呆れてしまって……。相手の父親が「この話はなかったことにさせてもらおう」と一方的に会食を切り上げられそうになり、僕もこれ以上話すことはないと思い、その場を立ち去ろうとしました。
ホテルの支配人のひと言
そのとき、ちょうど部屋を訪れたのが、このホテルの支配人を務めるオーナーでした。
すると、先ほどまで僕を見下していた相手家族の態度がガラリと変わりました。相手の父親は仕事の関係で以前から彼女のことを知っていたよう。オーナーである彼女を見た途端、笑顔を浮かべていました。
そんな相手家族の様子をよそに、彼女は丁寧な態度で僕に向き合い、口を開きました。
「◆◆様、いつもありがとうございます。メインラウンジをはじめ、館内の装飾では本当にお世話になっております」。
実は、お見合い会場となったホテルのメインラウンジは、僕が空間デザインを担当した場所でした。そんな彼女の言葉を聞いて、相手家族は口を開いたまま驚いていて……。続けて、彼女は僕の仕事ぶりや丁寧な対応を高く評価しており、その後も館内に関する仕事を何度も依頼していることを話してくれたのです。
青ざめる相手家族に僕は
相手家族は、僕のことについてひと通り聞いたのち、青ざめていました。
相手の女性は「いや、そんなに実績のある人とは知らなくて…」と先ほどまでとは打って変わって僕を持ち上げ始め、女性の父親も「さっきの話はなかったことにして、ぜひ娘とのご縁を前向きに考えてほしい」と言い始めました。
しかし、僕にはもうお見合いを続ける気はありませんでした。肩書や家柄だけで人を判断し、相手によって露骨に態度を変える人たちとは長いお付き合いをしていけないと思ったからです。
僕は「たしかに、お互いの求めるものに合う、合わないを確かめるのは大切だと思いますが…あんなに失礼な態度をとられては、こちらもお話しする気になれません」と女性の父親の提案を断りました。
僕はオーナーに挨拶をして、ホテルを後にしました。後日、お見合いを組んでくれた社長に経緯を説明し「せっかく紹介したのに、申し訳ありませんでした」と謝罪。話を聞いた社長は、僕の気持ちを察してくれたよう。「事前に、きちんと相手に説明しておけばよかった。言葉足らずで不快な思いをさせてしまった」と言ってくれました。
今回の件で、相手の肩書や立場によって態度を変えるべきではないと改めて感じました。自分が望んでいた人とは違っていても、失礼な態度をとるのではなく、ひとりの人として向き合うことが、良好な人間関係を築くうえでは大切だと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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