こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。今は保育園が休園中、登園自粛要請のところが多いですが、4月からお子さんが保育園に入園したご家庭は多いのではないでしょうか。
保育園に預けるとき、ママたちは「こんなに小さくて保育園に預けていいのだろうか」「子どもがかわいそうじゃないか」「子どもの発達に悪いのではないか」と悩んでいます。果たして本当に子どもはかわいそうなのでしょうか? 考えてみたいと思います。
ママたちを悩ませる「3歳児神話」、実は根拠がない
「保育園よりも幼稚園のほうがいい」という考えが、世の中にあると感じます。共働き世帯が増えてきて、この風潮は少なくなってきているようにも感じますが、依然その考えの原因になっているのが「3歳児神話」です。
3歳児神話は、“子どもは3歳ごろまでの間に「母親の手元」で育てられないと、成長に悪影響が及ぼされる”という考え方です。1950年にボウルビィという医師によって提唱されたとされています。
この考え方は、平成10年の厚生白書で“3歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない”とされています。
なので、保育園に預けることは、子どもの発達、成長に影響を与えることはないと考えて大丈夫です。先ほど出てきたボウルビィも“母親的関わり”が大事と書いていて、アメリカの研究でも保育士さんに愛情を持って育てられれば、成長に影響はないという結果が出ています。
保育園に行くメリット・デメリットは?
保育園に行くと、多くの子が風邪を引きやすくなります。フィンランドの研究でも、保育園に通っている子のほうが、通っていない子よりも風邪をひく回数が多いと結果が出ています。ただ、保育園に通っている子は、小学校になってからの風邪の頻度が、通っていない子よりも低くなることがわかっています。
発達に関しては、保育園に通うことによって、言語発達が改善するという指標があります(これは、3歳半の子に対してのデータですので、大人のときに言語発達が差が出るかは示していません)。
きょうだいがいる子のほうがおしゃべりが早いと言われているので、子ども同士の関わりが子どもの発達を促すのだと思われます。
保育園は、小学校入学以降の風邪や発達に関してメリットがあることがわかります。とはいえ、ママのそばにいたい盛りの子どもが預けられることが多いので、預けるときに子どもが泣いてしまうことも多くあります。そんな子どもの姿を見るのがつらい、ということはよく聞く話です。
保育園に行く・行かないに関わらず、大事なこと
「保育園に子どもを通わせると、母親の幸福度が上がる」ことも先ほどの研究からわかっています。母親の幸福度が高いと何がいいかというと、虐待の防止に役立ちます。虐待までいかなくても、母親が幸福で穏やかだと、子どもの精神も安定します。
保育園に行くか行かないかに関わらず、ママの精神的安定は家族の幸せにとても重要ですので、子どものためにもママの幸せをママ自身がきちんと考えていただきたいと思います。
生後8週から働いている、わが家の工夫
▲2018年11月ごろの様子 提供:保田典子医師
私は3人子どもがいますが、3人ともほぼ育休なしで仕事に復帰しています。産休も短くしたりしていたので、働いていない期間は合計1年もありません。
早くに子どもを預けて、さみしいという気持ちもありました。特に、末っ子は最後かなと思うと育休を取っておこうかなと悩んだこともありました。
保育園に預けるときは、子どもにとって保育園が安心な場所になるように、心がけるようにしていました。たとえば、子どもの性格を先生とシェアしたり、子どもの様子を見て、早めにお迎えに行くようにした時期もありました。そして、自分自身が子どもにとって安心な存在であるように、なるべくイライラしない工夫をしています。
疲れたら、とことんラクをする! 無理しない!
私も、3人目妊娠中からすごくイライラしやすくて、妊娠してから1年半から2年くらいが一番つらかったです。そこで行きついた答えは「自分を大事にすること」でした。
眠かったら朝起きずに朝ごはんも作らなかったり、掃除をやめたり。
「疲れるなぁ」と思うことをやめると、心に余裕が出てきて、今度は逆に掃除もやろうという気分になってきます。
「疲れたときはとことんラクをする、無理をしない!」これがイライラしないコツです。
最近は子どもも少し大きくなってきたので、自分の仕事のことを子どもと話すようにしています。そんな子育て法でいいのかはわかりませんが、子育てに「不正解はない」と思っています。
保育園でも、幼稚園でも、大丈夫。保育園に通う子どもたちは、決してかわいそうなんかじゃありません。ママたちが子どもの成長を喜びをもって見守ってくれれば、子どもはきちんと育つのではないかと思います。
イラスト/マメ美