皮膚が黄色くなる黄疸は、生まれてすぐの赤ちゃんに現れる生理的な現象です。通常、生後7日以内には軽くなりますが、生後7日以降に皮膚の黄色みが増してしまうことがあります。今回は黄疸のメカニズムや新生児期に起こる黄疸の種類などについてお話しします。
生理的黄疸とは(原因と症状)
生まれてくる多くの赤ちゃんは生理的黄疸になります。なぜ黄疸が現れるのか、そのメカニズムや特徴について見ていきましょう。
生理的黄疸が起こるメカニズム
黄疸を引き起こしているのは、ビリルビンと言われる物質です。ビリルビンは血液の中にある赤血球が壊されるときに発生します。おなかの中にいる赤ちゃんの赤血球と大人の赤血球では寿命と日数が異なり、赤ちゃんの赤血球のほうが寿命が短く、数が多くなっています。
胎児のときは赤血球が壊れてビリルビンができても胎盤を通じてお母さんがビリルビンを分解してくれます。しかし、出生後に壊れた血球から発生したビリルビンは赤ちゃんが自分の肝臓で分解しなければいけません。すると、ビリルビンの分解が間に合わず、生理的黄疸が生じます。ですが、日齢が進むにつれて肝臓での分解ができるようになってくるために黄疸が軽くなってくるのです。
生理的黄疸の症状や時期は
生理的黄疸は、目で見てわかる症状として、白目の部分や肌が黄色〜オレンジ色になるのが特徴です。生理的黄疸は、生後2~3日から起こり始め、生後5~7日に最も症状が強くなります。多くは、生後7日以降に黄色みが薄れ、自然に消えていきますが、ビリルビンの量が増加すると白目の部分や肌の黄色みも強くなります。
病的黄疸
生理的黄疸に対して、さまざまな原因で起こる病的黄疸があります。黄疸の値が高い状態が続くと「核黄疸(かくおうだん)」と言われる危険な状態になる可能性があるため、原因を調べると同時に治療を始めます。
病的黄疸とは
病的黄疸は、生理的黄疸と異なり、①生後24時間以内に黄疸が現れたり、②黄疸が非常に強かったり、あるいは黄疸以外の症状を伴っていたり、③1カ月以上黄疸が消失しなかったりするものです。新生児期の病的黄疸の原因には、新生児溶血性疾患、新生児肝炎症候群、先天性胆道閉鎖症などがあります。
新生児溶血性疾患の代表的なものに、Rh式あるいはABO式血液型不適合があります。おなかの中の赤ちゃんにはあるが母体にはない血液型抗原が母体に移行することで、母体は血液型抗原を異物と認識し、抗原を排除するために抗体をつくります。この抗体が赤ちゃんの赤血球を速いスピードで破壊(溶血)し、ビリルビンが増えて、生後24時間以内に黄疸の症状が出ます。
新生児肝炎症候群は、肝臓の中に胆汁が貯まることによって直接型ビリルビンが高くなる肝障害を示すもので、原因がわかっていません。生後2カ月以内に黄疸、肝腫大、灰白色便、褐色尿などが出てきます。そして、先天性胆道閉鎖症は胆汁が流れる管が生まれつきつまっているために腸に胆汁が流れず、黄疸が進んで、放置すると死に至る疾患です。黄疸が長引き、灰白色便、褐色尿などが出てきます。早期診断、早期治療が重要で、新生児肝炎症候群との鑑別が必要になります。
成熟児として生まれた場合には生後1週間以上、未熟児で生まれた場合には生後2週間を経過しても黄疸が強いとき、遷延性黄疸と言います。遷延性黄疸は、頭蓋内出血や頭血腫(とうけっしゅ)などの閉鎖性出血や胆汁の排泄が不十分なときに起こる閉塞性黄疸、母乳性黄疸などがあります。閉塞性黄疸は他の黄疸と異なり、皮膚の色がオレンジではなく緑っぽい黄色さを呈します。これは前者が間接ビリルビン、後者が直接ビリルビンが主に高くなっているためです。閉塞性黄疸の際には便の色が白色からクリーム色に変わります。
確実に防ぎたい核黄疸と治療法
ビリルビンが脳の細胞に貯まると神経毒となり、核黄疸とという症状を呈することがあります。ビリルビン脳症ともいわれ、神経的な後遺症をきたすことがあります。
核黄疸は、症状によって4つの段階に分けられています。それぞれの段階で現れる症状には次のような特徴があります。
・第1期:眠くなりやすく、筋緊張の低下や呼吸状態が良くないといった症状が見られ、飲む力も低下する。全体的に元気がなくなる
・第2期:筋緊張の状態が高まり、けいれんや頭を反って弓なり状になる後弓反張(こうきゅうはんちょう)などの症状が起こる。発熱も見られる
・第3期:第2期に起こっていた症状が見られなくなる
・第4期:慢性期である第4期では、聴覚障害や脳性麻痺などの症状が見られる
核黄疸を防ぐためには、第一選択の光線療法を迅速におこなうことです。光線療法とは、ビリルビンは光に分解されやすい物質なので、青い光を当てて便や尿に排泄するように促していく治療法です。光線療法だけでは十分な効果が期待できないと判断されると、交換輸血などをおこない、核黄疸を防ぐ治療がおこなわれます。気になる症状があるときは、スタッフに相談してみましょう。
黄疸が長引きやすい母乳性黄疸
母乳が原因の黄疸は、母乳性黄疸といいます。母乳には、不足しがちなミネラルやたんぱく質などの栄養が豊富で、赤ちゃんの免疫機能をサポートして感染症のリスクを低下させる働きがあります。
ただ、母乳には遊離脂肪酸という物質も多く含まれていて、その遊離脂肪酸がビリルビンの代謝を妨げてしまうことが母乳性黄疸の原因と言われており、黄疸を長引かせます。
母乳を栄養補給のメインとしている赤ちゃんの場合、生後1カ月を過ぎても黄疸が続くことがあり、心配される方も多いと思います。そのまま母乳を続けていても生後2カ月ごろには自然になくなり、それが原因で核黄疸になることはありません。しかし、その他の疾患が隠されていることもあるため、黄疸が長引くときや気になる症状がある場合は、産婦人科や小児科などで相談してみましょう。
まとめ
生まれてきた赤ちゃんに見られる黄疸は、生後間もない期間に現れるケースがほとんどですが、なんらかの疾患や母乳の影響で黄疸の症状が続くことがあります。日本人はもともと黄色人種なので、皮膚の変化に気がつきにくいかもしれません。しかし、黄疸の特徴である白目の部分や肌の黄色みの変化、元気がないなど、気になる症状がある場合は病院を受診しましょう。