令和2年5月25日、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が全国で解除されました。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、今後もソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用・手洗いの実施、3密の回避など感染予防に努めることには変わりはありません。そんななか、日本小児科医会は「2歳未満の子どもはマスクの着用は不要、むしろ危険である」という見解を公表しました。
心配されるマスク使用による乳児への影響とは
乳児の呼吸器の空気の通り道は狭いので、マスクは呼吸をしにくくさせ呼吸や心臓への負担になる
日本人の成人の気管の直径は、男性で平均18mm、女性で15mm程度ですが、1〜2才児の気管の太さは6.3mm。呼吸筋も未発達で、1歳未満の呼吸数は30〜60回/分と成人の約2倍です。
赤ちゃんがマスクをすることにより、普段の呼吸よりも負荷がかかるため、呼吸数や心拍数を増やして全身に酸素を取り込まなくてはならなくなります。そのような状態が続くと呼吸筋や心筋が疲労し、最悪の場合、心停止につながることも。
マスクそのものやおう吐物による窒息のリスクが高まる
赤ちゃんの枕元においていたハンカチが赤ちゃんの口を塞いでしまった……という事故を耳にすることがあると思います。マスクもある意味同じ状況と言えるかもしれません。
また、赤ちゃんは成人に比べて口の中の容積に対して舌が大きく、唾液などの分泌物も多いため気道が閉塞されやすい状態にあります。マスクをしていることによって唾液や吐き戻したものを口の外に出しにくい状態となり、窒息のリスクが高まると言えます。
マスクによって熱がこもり熱中症のリスクが高まる
赤ちゃんは体温調節機能や腎機能が未熟で、成人より水分の出入りが大きく、自分で水分補給できないこともあり、容易に脱水状態に陥ります。
マスクをつけていると体内に熱がこもりやすく、マスク内の湿度があがっているため、のどの渇きを感じづらくなり、知らないうちに脱水が進んで熱中症になるリスクが高まると言われています。
顔色や口唇色、表情の変化など、体調異変への気づきが遅れる
赤ちゃんが自分の意思をことばでうまく伝えられないころは、赤ちゃんの泣き声や表情で察することも多いかと思います。マスクで赤ちゃんの顔半分が覆われてしまうと、それも難しくなってしまうかもしれません。
子どもの新型コロナウイルス感染症は今のところ心配が少ない!?
子どもの新型コロナウイルス感染症について、以下のようなことがわかってきたようです。
・子どもが感染することは少なく、ほとんどが同居する家族からの感染である
・子どもの重症例はきわめて少ない
・学校、幼稚園や保育所におけるクラスター(集団)発生はほとんどない
・感染した母親の妊娠・分娩でも母子ともに重症化の報告はなく、母子感染はまれ
米国疾病予防管理センター(CDC)やアメリカ小児科学会(AAP)でも2歳未満の子どもへのマスク使用の危険性を警告しているようです。進行性の呼吸不全が小児の心停止の最大の原因であるとされており、小児は呼吸困難を他者に伝えることが困難であるため、感染予防のためのマスクの使用も注意が必要です。マスクに期待される効果は、細菌やウイルスを含んだ飛沫の拡散を防ぐこと。子どもへの感染は同居家族からの感染が多いということからも、まずは大人がしっかり感染予防をおこなうことが大切です。一旦、落ち着いたかに見える日本の新型コロナウイルスの感染拡大ですが、今後第2波、第3波が来ることは否めません。これからも感染予防に努め、節度ある行動が望まれます。