新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除されて1カ月余り。「新しい生活様式」を取り入れながら社会経済活動も徐々に本格化してきています。人の流れが戻れば感染機会が増えることはわかっていたとはいえ、東京では感染者数が減らず、全国の感染者数も増加傾向にあり、不安に思っている方もいらっしゃるかと思います。
現在新型コロナウイルスの感染予防対策として、さまざまな消毒剤や除菌剤が出回っていますが、意外と使い方を間違えているケースも。今回は、厚生労働省のHPで公表されている「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」のなかから、消毒剤・除菌剤に関する情報をご紹介します。
そもそも「消毒」と「除菌」は違うの?
みなさんは、「消毒」と「除菌」の違いをご存知でしょうか?
「消毒」は、菌やウイルスを無毒化することで、「医薬品・医薬部外品」の製品に記されています。一方、「除菌」は、菌やウイルスの数を減らすことで、「医薬品・医薬部外品」以外の製品に記されることが多いようですが、一部の洗剤や漂白剤など実際には細菌やウイルスを無毒化できる製品もあるようです。
目的にあった製品を、正しく選び、正しい方法で
「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」では、目的別の消毒剤・除菌剤の使用方法についてまとめています。
手や指などのウイルス対策
手や指などには、濃度70%以上95%以下のエタノールを用いてよくすりこみます。60%台のエタノールによる消毒でも一定の有効性があると考えられる報告があり、70%以上のエタノールが入手困難な場合には、60%台のエタノールを使用した消毒も差し支えないとのことです。
物に付着したウイルス対策
■次亜塩素酸ナトリウム
テーブル、ドアノブなどには、市販の塩素系漂白剤の主成分である「次亜塩素酸ナトリウム」が有効です。市販の家庭用漂白剤を、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が0.05%になるように薄めて拭きます。その後、水拭きしましょう。
■界面活性剤
テーブル、ドアノブなどには、市販の家庭用洗剤の主成分である「界面活性剤」も一部有効としています。家具用洗剤の場合は製品記載の使用方法に従ってそのまま使用し、台所用洗剤の場合は薄めて使用します。
有効な界面活性剤を含む洗剤のリストや洗剤の使い方はNITE(ナイト/独立行政法人 製品評価技術基盤機構)のサイトで公開されています。随時情報が更新されているようですので、確認してみてください。
■次亜塩素酸水
テーブル、ドアノブなどには、一部の「次亜塩素酸水」も有効です。「次亜塩素酸水」は、「次亜塩素酸」を主成分とする、酸性の溶液です。名前が似ていますが、「次亜塩素酸ナトリウム」と異なる物質なので間違えないようにしましょう。「次亜塩素酸ナトリウム」を水で薄めただけでは、「次亜塩素酸水」にはなりません。しかし、「次亜塩素酸ナトリウム」を原料に酸を加えたり、イオン交換などをすることで酸性に調整したものも「次亜塩素酸水」として販売されています。これには規格や基準がなく、成分がはっきりしないものもあるようです。使用方法、有効成分、濃度、使用期限などを確認し、情報が不十分な場合には使用を控えましょう。
「次亜塩素酸水」は、保存状態次第では時間と共に急速に効果がなくなるため、使用方法にも注意が必要です。「次亜塩素酸水」を使用する際は、消毒したい物の汚れをあらかじめ落としておきます。拭き掃除には、有効塩素濃度80ppm以上(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かした製品の場合は100ppm以上)の次亜塩素酸水をたっぷり使い、消毒したいものの表面をヒタヒタに濡らしたあと、20秒以上おいてきれいな布やペーパーで拭き取ります。元の汚れがひどい場合などは、有効塩素濃度200ppm以上のものを使うことが望ましいとのことです。生成されたばかりの次亜塩素酸水を用いて消毒したい物に流水掛け流しをおこなう場合は、35ppm以上のものを使用し、20秒以上掛け流したあと、きれいな布やペーパーで拭き取ってください。
■アルコール
濃度70%以上95%以下のエタノールを用いて拭き取ります。手や指などのウイルス対策同様に、70%以上のエタノールが入手困難な場合には、60%台のエタノールを使用した消毒も差し支えないとしています。
空気中のウイルス対策
人がいる環境に、消毒や除菌効果を謳う商品を空間噴霧して使用することは、眼、皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨されていないそうです。特に、人がいる空間への「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」の噴霧については、眼や皮膚に付着したり吸入したりすると危険であり、噴霧した空間を浮遊するすべてのウイルスの感染力を滅失させる保証もないことから、絶対におこなわないよう呼びかけています。
また、消毒や除菌効果を謳う商品をマスクに噴霧し、薬剤を吸引してしまうような状態でマスクを使用することは、健康被害のおそれがあることからも推奨されていないので、注意しましょう。
消毒剤・除菌剤を使用する際は、それぞれの薬剤に過敏な人は使用を控えることをはじめ、注意事項があります。「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」では、「必ず目的にあった製品を、正しく選び、正しい方法で使用しましょう」。また、「『医薬品・医薬部外品』の『消毒剤』であっても、それ以外の『除菌剤』であっても、すべての菌やウイルスに効果があるわけではなく、新型コロナウイルスに有効な製品は一部であることに注意が必要です」としています。今一度、現在使用している消毒剤・除菌剤の内容を確認して、間違った使い方をしていないかチェックしてみましょう。
緊急事態宣言が解除され、「自粛から自衛へ」「新型コロナウイルスとの共存」などのワードが出てきています。ワクチンや治療薬がまだない状況で感染拡大を防ぐためには、一人ひとりの意識や行動がより一層重要になってきていると思います。ご自身の大切な人、また誰かの大切な人の命を守るためにも、引き続きしっかり感染対策をして、生活していけるといいですね。