こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では3人の子育て中です。
日差しが強くなる季節、ママたちから日焼け止めに関する質問をいただくことが増えてきました。
私が普段、診療をしていて感じるのは、「日焼け止めを塗らなくてもいい子が塗っていて、逆に塗ったほうがいい子が塗れていない」というケースがあること。
そこで、日焼け止めに関する正しい認識と使い方についてお話しします。
生後6カ月未満の赤ちゃんには、日焼け止めは不要!
1カ月健診でママたちからよく聞かれる質問の一つが、「日焼け止めはどれを使えばいいですか?」というものです。
市販の日焼け止めは、子ども用でも「生後6カ月から使用可」と記載されているものがほとんどです(基本的に日焼け止めの処方はありません)。生後1カ月から使えるものもありますが、この時期の赤ちゃんはまだ歩かず、長時間直射日光にさらされることも少ないでしょう。
生後半年までは、ベビーカーの幌(ほろ)や、抱っこのときは日傘などで直射日光を避けてあげれば、日焼け止めは塗らなくて大丈夫です。
逆に、直射日光を浴びないように外出しているにもかかわらず、しっかり日焼け止めを塗ってしまうと、紫外線を浴びることで体内で合成される「ビタミンD」が不足する恐れがあります。ビタミンD不足による「くる病」の増加が日本でも指摘されているため、過度な使用には注意が必要です。
日焼け止めの最大の目的は「皮膚がん予防」
日焼けのデメリットの一つは、皮膚がんの発症リスクが高まることです。ほかにも、シミやしわといった皮膚の老化も進みます。今後ますます長寿化・高齢化が進むことを考えると、男女問わず、長期的な視点で日焼け対策が重要になってきます。
夏、公園で遊ぶ子どもたちは真っ黒に日焼けしていることもありますが、外遊びが多い子こそ、将来のためにしっかり対策してあげましょう。
日焼け止めの選び方、おすすめは?
日焼け止めはさまざまな種類がありますが、紫外線防止剤の成分としては「紫外線散乱剤」と「紫外線吸収剤」の2つがあります。お子さんには、肌への刺激が少ない紫外線散乱剤のほうがオススメです。
また、日本小児皮膚科学会すすめる日焼け止めの条件は以下のとおりです。
① 「SPF15以上」「PA++~+++」を目安
※普通の生活においては、むやみに SPF の値の高いものを使う必要はありません
② 「無香料」および「無着色」の表示があるもの
③ プールでは「耐水性」または「ウォータープルーフ」の表示があるもの
肌に塗るものなので、なるべく刺激にならないものを選びたいですね。プールでは水を汚染してしまうことがあるため、ウォータープルーフタイプの日焼け止めを選びましょう。
日焼けに注意したいタイミングは?
紫外線が強くなるのは4月から9月。1日の中では10時から14時が特に強くなります。この時間帯の外出は、なるべく避けたほうが無難です(熱中症のリスクもあります)。
紫外線が強い時間帯に外出する場合は、しっかり日焼け止めを使いましょう。
特にプールなどで長時間屋外にいる場合は、日焼け止めだけでなく、ラッシュガードやテントなどの活用もおすすめです。
正しい塗り方と頻度は?
夏の正午、顔と手の甲に直射日光をしっかり当てた場合、約25分でビタミンDが十分に合成されると言われています。夏は露出面が多いため、実際には25分よりも短時間でビタミンDは足りることになります。
お子さんが歩きはじめて公園などに出かけるようになったら、日焼け止めをきちんと塗ってあげましょう。ただし、軟膏や保湿剤と同様に、多くの人は「塗る量が足りていない」と言われています。
正しい塗布量は「皮膚がペトペトになるくらい」が目安ですが、子どもは嫌がることもあります。なるべくしっかり塗る、2~3時間おきにこまめに塗り直すなど、工夫が必要です。
健康で手間をかけすぎない外出を!
紫外線の影響が強まっている今、何らかの日焼け対策は必要です。ただし、すべての子に毎回日焼け止めを塗る必要があるわけではありません。日傘やベビーカーの幌、ラッシュガード、日陰を選んで歩くことなども、紫外線対策になります。
正しい知識を持って、手間をかけすぎずに外出を楽しめるといいですね。