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生存率5%…病気と闘ったわが子の「生後13日間の命」【後編】

出生後のお子さんに病気が判明。そしてお子さんの病気・死と向き合ったご家族の実体験をご紹介しています。生後13日間、小さな体で病気と闘ったお子さん、そしてご夫婦の思いなどをお話しいただいています。

呼吸器など

 

わが子を奪った「大血管転位症」「新生児肺高血圧症」という病気。妊婦健診では何も指摘されずに過ごしたマタニティ生活。楽しみにしていた未来から一転、過酷な現実と向き合うことになりました。今回は、実際にわが子が受けた治療やその後のできごとをお話ししたいと思います。

出産直後に知ったわが子の病気

私たちにとって初めての子どもでもあり、両親にとっては初孫。最初に通院していたクリニック・総合病院・里帰り先のクリニックと3つの病院に通院し、それぞれ妊婦健診では「元気に育っている」と言われていました。さらに総合病院で実施していただいたスクリーニング検査では「異常なし」という結果だったのです。


「赤ちゃんは元気に育っています。心臓も丈夫」という言葉に安心しきっていたのに、出産直後に知ったわが子の病気。2,000人に1人と言われる「大血管転位症」という大変な疾患でした。

 

「大血管転位症」とは、肺動脈と大動脈が入れ替わることで弊害が起きてしまう心疾患。生後2週間以内に早期の手術が必要とすることが多いそうですが、わが子は「新生児肺高血圧症」を合併していて手術が困難だったため、第一に肺高血圧症の治療に取り組むことになりました。

 

心の準備をしていなかった私には、なかなか受けとめることができませんでした……。

 

「生存率は5%」

NICUに行くと、口に呼吸器・胸にモニター・両腕には点滴がつながれ、薬で眠らされているわが子がいました。想像よりも残酷でした。でもやっぱりわが子はかわいい。たくさん声をかけてあげました。

 

「新生児肺高血圧症」を合併している。このままだと生存率5%……。

 

主治医との面談で、別の病気の告知があり、次から次へ残酷な言葉を浴びました。それでもその5%を信じて治療を続け、私は毎日わが子に母乳を届け、付き添っていました。

 

最後まで頑張ったわが子

生後8日目。「呼吸状態が安定している。このまま行けば心臓の手術に踏み込める」と主治医から言われました。心臓に負担をかけている薬の量を少しずつ減らし、状態を維持できているように思えていました。

 

しかし生後13日目の昼、急変したのです。


小さな心臓はもう限界でした。先生方が懸命に心肺蘇生をしてくれましたが、心拍がどんどん落ちて……。私は少しでも心臓が動いているうちに、「できなかった抱っこをしてあげたい」と先生に伝え、再度蘇生をお願いしました。


生後13日目にやっとできた、初めての抱っこ。「ありがとう」「ごめんね」の気持ちを全部伝えました。

 

そして赤ちゃんは待っていてくれたかのように、家族が集まったあと、見守られながら永眠したのです。

 

わが子の死

わが子を看取ったあと、病院で沐浴をしました。悲しいはずなのに自然とほほ笑んでいました。点滴・呼吸器を外したわが子と一緒に自宅へ帰宅し、1日一緒に過ごしました。

 

写真をたくさん撮り、手足の型をとったり……わが子が存在した証を作ったのです。息をしていないはずなのに、生きているかのようなこの時間が一番幸せだったかもしれません。
 

泣いてばかりでしたが、葬儀の日、最後は笑顔で見送りました。しかし帰宅後、遺骨となったわが子を前にして、「もう会えないんだ」と思うと、葛藤が急に襲ってきました。そんなつらい時期を助けてくれたのが家族でした。


家族はいつも通り明るくふるまってくれてましたが、きっと私のために我慢してくれていたのでしょう。次第に「ずっと泣いていたら、赤ちゃんだって悲しいはず……」と思えるようになり、私も自然と笑顔が増え、少しずつわが子の死を受けとめることできました。

 

 

今回なぜわが子に心臓病があったのか、原因はわかりません。手術を生後2週間以内にしないといけないタイムリミットが迫り、すごく過酷な日々でした。しかし、わが子と一緒に過ごせた時間は、かけがえのない大切な時間となりました。

 

NICUに数日通い続けるなかで見た、周りの赤ちゃんの死や、一方で回復に向かって頑張っている姿を見て、この世に生まれることがどれだけすごいことなのか思い知らされました。出産は本当に奇跡です。

 

※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。

 

監修/助産師REIKO

 

 


著者:大島れい

第1子は先天性心疾患により天国へ。現在第2子妊娠中。看護師として4年勤務。自身の経験を中心に執筆している。

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