こんにちは、保育士の中田馨です。「保育園で実践している、子どもへのしかり方・ほめ方」の第5回になります。今回は、睡眠の場面でのしかり方とほめ方です。普段、保育士が現場で実際にどのような声かけをしているかお話します。
良かれと思って言ってしまう言葉を言い換えてみる
寝る場面でよく使う言葉といえば、「もう寝なさい!」「早く起きなさい!」ではないでしょうか? 私自身も自分の子どもについ使ってしまうこの2つの言葉。ママとしては子どもの生活のことを考え良かれと思って使っている言葉ですが、「もう」や「早く」と言われると、大人もなんとなく行動するのが嫌になってしまいます。
そこで、言葉を言い換えてみましょう。「もう寝なさい!」は「そろそろ寝るよ」に換え、「早く起きなさい!」は「そろそろ起きる時間だよ」などにしてみます。ほぼ同じことを言っているのですが、伝わり方が違ってきます。
夜、なかなか寝ない!
睡眠時のお悩みでよくあるのが「子どもがなかなか寝ない」ということ。寝ないにもいろいろなタイプがあり、寝室に行くとテンションがグイーンと上がって、おめめがギラギラになってしまう子や、布団に入っておとなしくしているんだけど、目がぱっちり開いてなかなか寝ない子などさまざまです。ママとしては、子どもが寝てから家事やリラックスタイムを過ごしたいので「早く寝てほしい!」と思うところでしょう。「早く寝なさい!」と言っても寝ずに逆に興奮してしまったり、しつけアプリなどを見せて寝かせることもあるかもしれません。
では、こんなとき子どもにどう声かけをしたらいいでしょうか?
保育園のお昼寝では、まずは「さあ、一緒に寝るよ」と誘います。布団に一緒に入ったら「布団に入るとホッとするね、気持ちいね」など心地よさを一緒に感じます。おうちなら「明日は、公園に行こうね」など明日の楽しみをお話ししてもいいでしょう。また、寝る前の儀式をつくってもOK。体を優しくマッサージしたり、絵本を読んだり、布団の中で今日のできごとをお話したりしてもいいですね。
寝ないことでしかる場面は、夜遅くに大騒ぎする場合です。大騒ぎしている子どもを体で止め「もう夜だから、小さい声でお話してね」と言います。子どもが小さい声でお話できたら「小さい声でお話できたね」とほめましょう。強くしかる必要はなく、子どもにしてほしい行動を伝え、それができたらその行動をほめるだけでOKです。
しつけアプリなどはその場では効果的ですが、成長と共に恐怖がなくなりますので、効果が薄れてきます。将来のことも考え、幼少期のうちにじっくりと親子で寝ることに向き合うことが大切です。
朝、なかなか起きない!
朝やお昼寝から子どもがなかなか起きなくて困ってしまうことがあります。保育園でも、お昼寝から起きるのが苦手な子がいます。子どもたちの様子を見ていると、どの子にも起きにくくなる時期があるように感じます。日中、元気いっぱい、めいいっぱい遊んでいるのでなかなか起きにくいのでしょう。とはいえ、朝にしても昼にしても寝たいだけ寝かしているとその後の生活リズムが崩れてしまうので、ある程度のタイムリミットが必要になります。
子どもがなかなか起きてくれないとき、「早く起きなさい!」「保育園に遅刻するよ!」と言って無理やり布団をはがすと、子どもが泣き始め、時間がさらにかかってしまったなんて経験があるのではないでしょうか?
こんなとき、子どもにどう声かけをしたらいいでしょうか?
保育園では「おはよう! ○時だよ、起きてね」と、ストレートに淡々と声かけをします。5分に1回程度を数回繰り返します。子どもが目覚めたころに、「今日のおやつ(朝ごはん)はヨーグルトだよ!」と次の楽しみの予告を話します。子どもはまだ、眠そうにしていると思いますので、体を触ったりスキンシップをしています。「おはよう! 大好きだよ!」とムギューッと抱っこするのも効果的! しかる必要はありません。
一日のスタートを気持ちよく切れるように、工夫してみましょう。起きることができたら「起きれたんだね」と、その姿をほめてあげましょう。
寝る前のおっぱいがやめられない!
2歳を過ぎ、日中は必要ないんだけど寝る前だけおっぱいがやめられなくて困っているという相談を受けることもよくあります。大好きなおっぱいですので、ママが卒乳したいと思っても全力で嫌がることでしょう。「もう赤ちゃんじゃないんだから!」と言っても、子どもにとっては、赤ちゃんだろうが何だろうが関係ありません。だって、おっぱいが好きなのですから。
保育園にも、ママのおっぱいがないと寝られない子が入園してきます。お昼寝の時間になると、ママのおっぱいが恋しくて恋しくて大泣きしますが、保育園にはもちろんママのおっぱいはないので、「ママのおっぱいはないんだよ」と言って寝かしつけます。最初は寝ることができない子も、数日するとあきらめて寝るようになります。
ママの場合も同じです。子どもの体調の良い日にチャレンジしてみましょう。まずは、「今日からおっぱいなしで寝るよ」と宣言します。子どもは泣くと思いますが、抱っこして「ママも寂しいんだよ」と言いながら、子どもの気持ちに共感しましょう。大泣きは数日続くかもしれませんが、徐々に子どもはおっぱい以外の安心できる心地よいものを見つけ、おっぱいなしでも寝られるようになります。おっぱいなしで寝られるようになったら「おっぱいがなくても寝られるね!」とたくさんほめてあげましょう。
睡眠は、生活の中の大半を使います。できる限り心地よい環境の中で寝られるように、ついつい思わず使っている言葉を見直してみて、声かけを工夫してみましょう。