「気軽に専門家に質問ができて、さらに返信も早い」とママから日々感謝の声が寄せられているベビーカレンダーの人気コンテンツ【専門家に相談】の掲示板。そのなかから特に注目をあつめた質問の内容を一部抜粋してご紹介します。今回は、2021年2月に寄せられた相談のなかから、専門家の回答が役に立ったとの声が多かった「妊娠中の体重管理」に関するご相談です。
Q.体重が増えすぎと注意を受けてしまいました
妊娠7カ月に入りました。初期のころは吐きづわりがあり、53kgから一時は48kgまで体重が落ちました。どんどんつわりが治ってきて前回健診の体重測定の際55kgになっており、助産師さんに「体重が増え過ぎなので気をつけて」「増えてもいい体重は48kgからで考えて」と注意を受けました。次の健診まで大きく増やさないようにしようと気をつけているのですが、食事量や内容に気をつけたり、控えてみてもどんどん増え続けて現時点で57kgです。来週が1カ月ぶりの健診なのですが、また「増えすぎだ」と注意されるかと思うと本当に気が重いのです。どうしてもこんなにハイペースで増え続けてしまうものなのでしょうか。
久野多恵管理栄養士からの回答
食事量や食事内容に気を付けているというのはとても良い意識だと思います。妊娠中に体重が増えるのは、赤ちゃんの体がおおきくなる分、胎盤や羊水の分、乳房や子宮が大きくなる分、血液量や貯蔵脂肪が増える分なので、自然なことです。妊娠期の体重管理は、ダイエットではないので、食事回数を減らしたり、過度な食事制限、糖質制限などはおすすめできません。
妊娠中の体重管理については以下を参考にしてください。
★食事のバランス
1日3食、主食・主菜・副菜を揃えて栄養バランスを整えることは生涯において大切なことです。バランスよく食べることで体内の代謝がアップし、効率よくエネルギーへと変換できるようになります。主食を抑えると、主菜を多くとりすぎるというデータもあります。また腹持ちが悪いので、間食の時間に甘いものを食べたくなるということにも繋がります。主食は、玄米や雑穀米、全粒粉パン、ライ麦パンにして腹持ちを良くして、食物繊維を多くとる意識をされるのも良いと思います。
食事のバランスについては、下記を参考にして下さい。
【妊産婦のための食事バランスガイド】(厚生労働省)
★間食の内容
脂肪分・糖分が多い市販の菓子類などはおすすめできません。間食は、ビタミン・ミネラルが補えるような内容を考えていきましょう。果物、きな粉ヨーグルト、フルーツグラノーラヨーグルトかけ、小豆寒天、ナッツ類、煮干しなどがおすすめです。
★食事の時間
毎日同じ時間に3食召し上がるようにして、血糖コントロールをつけましょう。また、夜間は消化機能が低下しますので、就寝の3時間前に夕食を終えるなどの工夫も良いです。
★夕食の食事量
夜間の消化機能の低下を考えると、夕食は控えめにしても良いです。例えば、単純に量を減らすということではなく、夕食を分割するという考えで、15時ごろに食事の一部となる補食を召し上がり、夕食は控えめにしていくという方法です。全体量を減らしたとしても、主食・主菜・副菜のバランスは維持しましょう。
★食物繊維の量
食物繊維は満腹感が得られやすいので食べ過ぎを防止できますし、血糖値の急上昇も抑えることができます。低カロリーで尚且つ満足感を得られる野菜類・きのこ類・海藻類(昆布以外)を増やして、カロリーオーバーにならない工夫も大切です。 また、野菜はカリウムを多く含みますので、妊娠高血圧症候群の予防にも繋がります。
しっかりと食事をとることに抵抗感があるかもしれませんが、主食・主菜・副菜の揃わない、バランスの崩れた食事を続けていると、体内の代謝能力も低下し、体脂肪として蓄積し、食べていないつもりでも体重増加に繋がってしまうという事も考えられます。主食・主菜・副菜を揃えてバランスよく食べることで、代謝がアップして健康的な体重管理につながり、健やかな赤ちゃんの成長、ママの出産に備える体力維持、貧血防止にもつながります。ストレスを溜めない様にできるところから進めてみてくださいね。
※参考:ベビーカレンダー「専門家に相談」コーナー
※診断や具体的な治療については医師の指示にしたがってください。
妊娠中の体重測定が大切な理由
妊婦健診では、妊婦さんの健康状態と赤ちゃんの発育状態を確認するために体重測定をします。医師や助産師、看護師が正しい判断をできるように、妊娠前の体重や妊婦健診当日の体重の数値は、誤魔化さないようにしましょう。
体重測定をすることで、妊婦さんは体重制限を強いられているように感じるかもしれませんが、下記の3つの理由から体重管理はとても大切です。
①妊婦さんの体格や体重増加量によって合併症が起こる可能性や危険性が高くなる
妊娠中の体重が増えすぎても、増えなさすぎても、母体と赤ちゃんの健康状態に影響します。妊婦さんの体格や体重増加量によって合併症の起こる可能性や危険性が高くなります。
妊娠前のBMIが18.5未満やせに属する場合は、胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)や低出生体重児(出生時の体重2,500g未満)、切迫早産および早産の起こる可能性が高くなります。
妊娠前のBMIが25.0以上肥満に属する場合は、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、巨大児、児の神経管閉鎖障害が起こる可能性が高くなります。 妊娠中の体重増加が不十分な場合は、胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)や低出生体重児 (出生時の体重2,500g未満)の可能性が高くなります。 妊娠中の体重増加が著しい場合は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を合併する確率が高くなります。また、陣痛が弱いために出産が長時間かかったり、出産時に出血多量となる可能性があります。
②妊娠中の栄養状態が赤ちゃんの健康状態に影響する
おなかの中にいる赤ちゃんが低栄養状態にさらされると、赤ちゃんの発育状態や将来的に生活習慣病を発症する確率が高くなることがわかっています。
③妊娠中の体重増加量は母乳の脂肪濃度に影響する
妊娠中の体重増加量は、母乳中の脂肪濃度に影響することがわかっています。母乳中の脂肪は、赤ちゃんの摂取カロリー(エネルギー)や必須脂肪酸(DHAやEPAなど)の供給源として重要です。産後に母乳で育てる予定であれば、妊娠中の体重増加を極端に制限することは好ましくありません。
妊娠中の体重増加の目安が変わった!?
2021年3月、日本産婦人学会は新たな妊娠中の体重増加の目安を策定し、公表しました。体重増加の目安は以下のように変更になっています。
食事以外にもできることは?
■妊娠経過が順調であれば、適度な運動やストレッチを
妊娠中に適度な運動をおこなうことで、摂取カロリーを消費するだけでなく、心肺機能や筋力、体力の維持ができるため、妊娠中や産後の生活のために疲れにくい体づくりに役立ちます。妊娠前から運動習慣がない妊婦さんは、1日10分程度の散歩やストレッチでもかまいませんので、できる範囲から開始して継続しましょう。
妊娠12週以降で正常な妊娠経過であること、妊婦健診で医師、助産師から運動を禁止されていなければ、運動をしても良いです。妊娠中の運動については、医師や助産師、運動指導をするトレーナーから専門的な指導と助言を受けましょう。特に、高血圧、糖尿病、肥満などの妊娠中の合併症の予防と治療を目的とする運動については、主治医と相談して十分に注意しておこないましょう。
■早寝早起きをして、十分な睡眠をとるように心がける
腸の動きは、副交感神経が優位なときに最も活発になります。副交感神経は睡眠中に優位になるので、十分な睡眠をとることは栄養の吸収や排泄を促すのに役立ちます。妊娠中の睡眠について気になることがあれば、担当医や助産師へ相談しましょう。
※参考:
・基礎知識(妊娠中):妊娠中の体重増加量の目安は?体重管理のコツを解説!【著者:助産師 古谷真紀/監修者:医師 太田 篤之 先生 産婦人科 | おおたレディースクリニック院長】
・日本産婦人科学会:妊娠中の体重増加指導の目安について
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