そんなとき、雪穂の母が突然家を訪れた。妻が出産した日、夫に「和樹さんだけは雪穂の味方でいてほしいの」と告げ心配していた母は、子煩悩に「見える」夫の育児っぷりに安心したようで……。
「僕と帰ってこない妻」第73話
「和樹さん、とっても育児に協力的じゃない」
「あなた、ちゃんと和樹さんに感謝するのよ?」
「あなた、とっても恵まれてるわよ」
母は畳みかけるように言う。
「今後も雪穂が甘えちゃうかもしれないけれど、これからもよろしくね」
妻以外の人から見ると、一見「家事も育児もやっている良い夫」。夫自身もそう思っている。
夫に感謝? 恵まれてる?
私が、甘えてる……?
言葉にして伝えることの難しい「そうじゃない」というジレンマが、妻の中に沸き起こる。