SNSを活用して迅速に情報発信
ベビーカレンダー二階堂(以下BC二階堂)「野田医院の感染対策はどのようにおこなっていますか?」
野田院長「職員は出勤前の検温、マスクの着用、手指消毒を徹底しています。
外来は、待合室の椅子の配置を変更、付き添いは遠慮していただいています。妊婦さんには外来受診時に入り口で検温、手指消毒、チェックリストの記載をおこなっていただいています。さらにご自宅で毎日体温を測っていただき、体温シートに記入、受付時に提出いただいています。
発熱など症状のある方は、車で待機していただきます。そして、スタッフがガウンを着用するなど感染防御をおこなったうえで、車内で妊婦さんの体温や血圧などを測定し、持ち運び可能なドップラー聴診器と超音波で赤ちゃんの心拍や状態を確認しています。新型コロナの検査については唾液による抗原検査をまず実施し、5日後PCR検査をおこないます。
幸い今のところ、当院で新型コロナ陽性の方はいらっしゃいませんが、もし新型コロナ陽性となった場合は2次病院に紹介することになっています。
産後健診については県外の人との接触がないことを確認した上で受診、県外の方との接触があった場合は2週間空けて受診していただくようにしています。
新型コロナに関する情報や院内の対策などは感染状況によって随時変わるので、新しい情報をより早く妊婦さんたちに伝わるよう、Instagramを活用して情報発信しています。以前は他の媒体を使っていましたが、業者を介するため迅速な変更が難しいということで、現在は何か変更があった場合はスタッフがすぐに更新できるInstagramを活用するようになりました。厚労省や日本産婦人科学会など公的機関からの情報は妊婦さんたちにもわかりやすいように画像付きで更新し、外来でもInstagramの活用をご案内しています。
また、感染状況によって対応が変化していきますが、妊婦さんが戸惑わないようにできるだけ近隣の産婦人科と電話でやりとりをして対応を統一するようにしています」
▲受診の前には「体調管理シート」での健康管理をお願いしています
▲受診時にはチェックリストを記入していただいています
▲携帯の超音波。症状のある方は、車内で診察をおこなっています
初めての経験で現場もパニック
▲野田医院院長 野田俊一先生
BC二階堂「初めて新型コロナが蔓延したときは対応にも苦慮されたのでは?」
野田院長「最初はさすがにパニックになりました。2020年の4月から6月くらいまで何をしたらいいのかわかりませんでした。
発熱など症状のある方は院内に入れないように、そしてその後どうするか対応を検討していきました。症状のある方の車内での診察は最初からおこなっている対策です。今は感染者が落ち着いているので受付で管理シートの確認などをおこなっていますが、一番厳しかったころは、玄関先でスタッフが問診をおこなっていました。
PCR検査についても、最初は検査時期の規制がありました。ですが、妊婦さんも感染しているかどうかわからないと不安になります。ですので、県に働きかけ、いつでも検査が可能な体制を整えてもらいました。現在は、妊婦さんは1回無料でPCR検査が受けられるコロナ対策事業がおこなわれています。
さらに東京や大阪など高感染地域からのだと帰り出産を受け入れるかどうかというのも問題になりました。当時一番影響を受けたのは都会の妊婦さん、周りに頼る人がいない人でした。受け入れる、受け入れない、どちらが正解かはわかりませんでしたが、宮崎県の産婦人科医会のトップの先生が里帰り出産の妊婦さんを受け入れる方針を出し、宮崎県は最初から里帰り出産の妊婦さんを受け入れていました。
宮崎県への里帰り出産となると飛行機で移動される方が多いこともあり、当時は飛行機内での感染を気にしていました。はじめは里帰りの1週間後にPCR検査を受けていただき、その1週間後に受診していただくようにしていましたが、現在は2週間自宅待機、希望者にPCR検査をおこなっています」
ますが、随時HPで情報を更新していますので、ご確認いただければと思います」
妊婦さんからも野田医院でよかったとの声がたくさん
BC二階堂「妊婦さんたちの様子はいかがでしたか?」
野田院長「感染者数が多かったころは、立ち会い出産、面会、母親学級などすべてストップしました。その点に関しては、妊婦さんも仕方がないと納得されていたように思います。
地域柄か妊婦さんがみなさん真面目で、あらかじめ相談の電話がくることが多いです。身近な人で新型コロナに感染したという人はいたかもしれませんが、ご家族も気をつけてくれていました。
ワクチン接種に関しても、最初は問い合わせが多かったのですが、ワクチン接種を推奨していることもあり、実施した妊婦さんが多かったように思います。ワクチン接種に対して不安そうな妊婦さんには、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンについて説明をおこないました。
外来で不安を訴える方はいませんでしたが、入院中におこなっているアンケートにはコロナ禍で出産することが不安だったと書かれている方も多くいました。ですが、外来では母親学級でお話しする内容をタブレットでお伝えしたり、出産時にはLINE動画でお産中継ができるよう分娩室にスタンドを設置するなどの工夫をすることで、安心して出産できたという声や、スタッフがたくさん話しかけてくれて心強かったなどの声が多く聞かれています。また、里帰り出産をされた方からも受け入れてもらってよかったという声も多く聞かれました」
▲分娩室にスタンドを設置。LINE動画でお産中継
野田先生は、都城市は小さな街で東京に比べたら桁は違うけれど感染者が増えたときは恐怖感があったとお話しされていました。新型コロナウイルスの正体がよくわかっていない状況で、野田先生は妊婦さんへのPCR検査、里帰り出産の受け入れなどあまり報道されていない取り組みをたくさんされていました。日々の報道は不安を煽るようなものも多く、メディアのあり方も考えさせられるインタビューになりました。ベビーカレンダーでも正しい情報、そして少しでも妊婦さんたちの安心につながるような情報発信ができればと思いました。
取材日:2021年11月30日