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いよいよ4月から男性の育児休暇が変わる!?パパの産休もできるって本当?改正後のポイントは

4月からパパの育児休暇が大きく変わるって知っていますか。これまで「取りづらい」とパパの育児休暇取得率が低かった日本の子育て事情。今回の育児・介護休業法改正に伴い、パパの育児参加スタイルががらっと変わるかもしれません。その背景とは? 父親の育児事情に詳しい大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に解説してもらいました。

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保育士小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授、大阪教育大学附属天王寺小学校校長

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。NHK Eテレ「すくすく子育て」出演。2022年より「保育」と「育児」分野のYahoo!ニュースオーサーに。
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パパのイメージ

 

パパの育児休暇が2022年4月から大きく変わる!?

「実は日本の育休制度は、世界的に見てとても充実しているんです。期間や手当ては世界トップレベル。こんなにいいものがあるのに取ってない。取らないと損。もったいないです」と話すのは大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生。小崎先生は保育士の経験があり、自身も3人の男の子の育児で育児休暇を取得した経験があります。

 

しかしそんないい制度があっても「取りづらい」という根強い日本の文化があり、あまり活用されてきませんでした。今回の育児・介護休業法の改正で何が大きく変わるのでしょうか。

 

「これまで従業員が企業にお願いして取っていた育休ですが、4月から企業側から『ぜひどうぞ』と促すことが義務化されたんです。10月からは“パパのための産休”もスタートします」

 

改正の大きなポイントは“パパの休暇”にフォーカスしている点です。

 

「1992年から育休は制度としてあるけれど、何度か改正されてきました。意外かもしれませんが、当初から男女ともに取れる制度だったんです。ところが実際の取得率をみると、圧倒的に女性が多い。僕が育休を取った25年前は、男性の取得率は1%以下でした。その背景には男性は仕事、女性は家事育児という社会的な分業があったんです 」

育児休業取得率の推移_厚生労働省

出典:令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-(厚生労働省)

 

しかし2000年ごろを境に、共働き世帯が急増。現在は、圧倒的に共働きが多い状況となり、共に働き、共に育てるというスタイルがスタンダードモデルとなりました。

 

共働き等世帯数の年次推移_厚生労働省

出典:令和3年版厚生労働白書-新型コロナウイルス感染症と社会保障-(厚生労働省)

 

「女性の社会進出が推奨されて、『ぜひ働いてください』ということになったのですが、気を付けないと女性ばかりが家事・育児・介護の 負担を強いられてしまう状況でした。女性の社会進出と男性の家庭進出はセットであるべきなんです。これは働いている人が自分の家族を大切にするための法律です。今回の改正で父親の立場を狙い撃ちしているのは、これまで母親の負担が重すぎたからです」

 

「産後うつ」や「産後クライシス」という言葉が飛び交う社会状況は、結果的に深刻な少子化を招きました。厚生労働省によると、女性1人が生涯のうちに生むと見込まれる数である「合計特殊出生率」は、2020年で1.34まで低下。育児不安の要因の一つが「男性が育児に関われていない」という現実でした。

 

令和2年人口動態統計月報年計の概況_厚生労働省

出典:令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況「結果の概要」(厚生労働省)

 

次にどのように改正されたのか、具体的なポイントをみていきましょう。

 

 

新しい制度のポイントは?

こうした日本の状況を打開すべく、育児・介護休業法が改正されました。具体的な制度改正のポイントは大きく2つあります。

1)企業側から育休を打診することが義務化

面談イメージ

 

従来の育休制度は「会社の理解がない」「言い出しづらい」という取りづらい文化があり、あまり活用されていませんでした。そんな世の中の流れを、がらっと変える仕組みが導入されました。

 

今まで従業員からお願いしていた育休取得が、会社から確認することが義務化され、まったく逆の流れになったのです。

 

改正された育児・介護休業法は、4月から段階的にスタートします。4月から始まるのは企業側から従業員への「育休の周知と取得の意向確認」です。

 

「社員から会社側に妊娠や出産の申し出があった場合、会社は『新しい制度や育休ありますよ』『育休を取りませんか?』とアプローチしないといけない。それが企業に義務付けられたんです。これは状況が180度転換したといってもいいでしょう。上司や同僚が『男親なのに取るの?』と言うのはハラスメント。それも明確に禁止されています」(小崎先生)

 

2)「パパの産休」が10月にスタート

赤ちゃんのお世話をするパパのイメージ

 

今回の改正のもう一つの目玉が、「パパの産休」とも言われる「産後パパ育休」の新設です。育休とは別の産休で、新しく創設されました。

 

特徴は5つ。

 

1.パパも「産休」がもらえる!
2.産後8週間以内に4週間まで取得可能
3.休業の2週間前までの申し出でOK
4.2回に分割して取得することが可能
5.労使協定を結んでいれば、休業中に働いてもOK

 

そのほか、育児休暇も今年10月から次の表の通り改正されます。

 

育児・介護休業法改正ポイントのご案内_厚生労働省
出典:厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 P2

 

企業側の本気度が試される

先ほどの表のような新しい仕組みが4月から段階的に導入されますが、企業側はどんな課題に直面するのでしょうか。

 

「当然ながら企業の仕事は煩雑になりますね。育休の申し出は原則1カ月前までですが、パパの産休は2週間前まで。育休の取り方も多様化します。かなりフレキシブルになるので、働き方やキャリアのあり方もフレキシブルになります。誰一人として同じ生活パターンはあり得ません。来年4月からは大企業は育休取得状況の公表が義務化されますから、企業側の本気度が試されるでしょう」

 

この法律の正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」。その名の通り「育児」と「介護」がセットになっているところがポイントだと小崎先生は言います。

 

「これから大介護時代がやってきます。要するに、部長クラスの年齢の人が親の介護に直面するんです。育休は突然始まらないし、子どもの成長に合わせて終わりが見通せる。でも介護はいつ始まるのか、いつ終わるのかも分からない。だから今は、子育て世代だけではなく、誰もが働きやすい職場を作っていく時期です。仕事が属人化しないようチームがトレーニングするタイミングです 。育休を単に個人のものとするだけでなく、会社や組織の業務や働き方の見直しに活用できれば良いですね。」

 

これからはパパも“産休”を取る時代。一緒に新生児期を過ごすことで、制度を超えたメリットもあるといいます。

 

 

「育児のスタートに関わることで、子どもを育てる癖がつくんです。直接母乳をあげることこそパパにはできないけど、それ以外ならパパにもできます。子育ては大変だけど楽しい。こんな楽しいことを、ママがひとりじめするのはもったいない! 覚悟と責任をもって“パパ”を経験してほしい」


 

取材・文/大楽眞衣子

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    ライター大楽眞衣子

    社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

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      義務化ありがたい!あとは世の中のパパ達がパパである自覚をしっかり持つことが大事!
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      男性の育児休暇取得により、企業や現場の人達は大変だと思いますが、気軽に男性たちも育児休暇が取りやすい風潮になっていけばいいなぁ!
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      男性の育児休暇、本当に変わるなって実感しました。だって、本当に簡単に夫が育児休暇を取ってくれて、それによって得た安心や幸せは計り知れず、恩恵は山のごとく…ですもん。

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