しかし、大学生になったころ、目をキラキラ輝かせて、私を「可愛い」とストレートに褒めてくれるカズくんと出会った。
これまでずっと「可愛くない」「お前なんか」とネガティブな言葉を浴びて育った彼女にとって、初めての「肯定」だった。
「もっと化粧がうまくなったら、自分のこと好きになれるかな」
この口紅が、彼女の人生の運命を変えることに……!
「僕と帰ってこない妻」第153話
勇気を出して足を踏み入れたデパートのコスメ売り場。
手に取った、一本の口紅。
声を掛けられてメイクをしてみると、顔が一気にパァッと華やぎ、心も弾んだ。
「お試しする前に“自分に似合わない”なんて決めつけてしまうのは、もったいないです」
「心を動かされるものがあったら、積極的に手に取ってみるといいと思います」
美容部員さんの言葉が胸に響いた雪穂は、とある一歩を踏み出した……!