「もっと化粧がうまくなったら、自分のこと好きになれるかな」
勇気を出して足を踏み入れたデパートのコスメ売り場でメイクをしてもらうと、顔が一気にパァッと華やぎ、心も弾んだ。
「お試しする前に“自分に似合わない”なんて決めつけてしまうのは、もったいないです」
「心を動かされるものがあったら、積極的に手に取ってみるといいと思います」
美容部員さんの言葉が胸に響いた雪穂は、とある一歩を踏み出した……!
「僕と帰ってこない妻」第154話
子どものころから「頭の形がいびつだから、ショートは似合わない」と親に言われ続け、挑戦してこなかったけれど、初めて髪をバッサリ切った。
身も心も、軽くなった。
「化粧も髪も、他も。全部挑戦してみようと思ったの」
「そういう姿勢、かっこいいと思うよ! 尊敬する」
いつもポジティブな言葉で肯定してくれる彼。
あんなに嫌いだった自分のことが、少しずつ好きになっていった。それなのに……。