初めての電車に浮かれた私と長男
当時1歳半の長男はとにかく電車が大好き。電車を見るたびに指をさし「デン、デン」とかわいくつぶやいていました。実家の両親が頻繁に車で初孫を見にきてくれるので、長男と電車に乗ったことはありませんでした。そのため、頻繁に散歩へ出かけては電車を見せていました。
キラキラした目で電車を呼ぶ長男に、「電車か……そろそろ電車でおでかけしてもいいかも」と思い、2本乗り換えて50分かかる実家へ電車で行くことに。私も産後久々で浮かれ気味の電車。長男が乗ったベビーカーを押して、いざ先頭車両に乗り込みました。
車内に響く長男の声に胸がザワザワ
平日の日中だったため、私たちと同じ車両に乗る人は数人でした。長男の手には電車の玩具。さっそく長男は「デン、デン」と運転席の窓を指さしました。私は運転席にベビーカーを近づけましたが、長男には窓が高くて車掌さんが見えず「あー! あー!」と声を出してまた指さし。「あ、あれ?」。私は長男のうれしそうな声に喜ぶどころか胸がドキドキ。
「みっ、見たいよねー」と言いつつ、私はとにかく長男を静かにさせなければ、と抱っこして車掌さんを見せます。すると長男は大興奮! 「シャー、シャー!」とはしゃぎだし、私の心はさらにハラハラ。車内の子どもの声ってこんなに響くの!? それに加えて長男が持つ電車の玩具はガチャガチャ音をたて、私の心臓は落ち着かないまま、電車は発車しました。
ついに走りだした長男!
「混雑している通勤時間じゃないだけまだよかったかも…」と私は自分で自分を落ち着かせていました。しかし長男はその間も「シャーシャー」とうれしそうに車掌さんが見える窓をバンバンたたいています。「電車だから、静かにしようね」となだめる私。ほかの乗客への申し訳なさから、「次からは気をつけます」と心の中で誓いました。
そんな私の気持ちをよそに、だんだん車掌さんを見るのに飽きた長男は「ん、ん」と抱っこから降りると指示。私の腕も限界だったのでいったん降ろすと、長男は私の手をひっぱって車内をぐるぐる走り回ったのでした。
気づけば誰もいない車内…
「だっ、ダメだよ! 電車は静かに乗るんだよ」と私は立ち止まり、長男と綱引き状態。すると長男はもっと騒ぎだし、「ヤッヤー!」と声は大きくなる一方。悪戦苦闘していると耳にバタンッ、バタンッと音が聞こえ、ハッとして私が車内を見渡すと、車両には誰も乗っていません。
「そんな……」。もう誰も見ていないので、私は長男の手を離して椅子に座りました。非常識ママの烙印を背中に押されたようで、ぐったり。乗車時間20分、結局、次の駅で降りて両親に車で迎えにきてもらいました。もちろん帰りも車で帰りました。
車内の人は誰も私たち親子に注意することもなく、やさしい対応だったと思います。長男を制止できなかったことは反省点ですが、もし誰かに文句を言われていたらもっと落ち込んでいました。長男は想像していた通り楽しんでくれていたので、その後は短めの隣駅からチャレンジし、長男もだんだん電車で出かけることに慣れていきました。もう8歳になる長男ですが、いまだに思い出すと恥ずかしい出来事です。
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著者:巳村 糸
8歳、6歳、0歳の子どもを持つママ兼保育士。趣味は旅行、レジャー、ショッピング。家族5人になり、軽自動車を手放して7人乗りの天井が見える車を購入。この夏は初のオートキャンプを計画中。