こんにちは、小児科医の保田典子です。最近、病院を受診するときに写真や動画の撮影をする親御さんが増えたような印象があります。特に、予防接種の時が多いです。
親御さんたちに話しを聞くと、「記録に残したい」「祖父母や親戚に見せたい(コロナ禍で会えないから)」など、それぞれ理由があるようです。親御さんの年齢が、何でもスマホに記録する習慣がある世代になってきているのもあると感じます。
赤ちゃんの初めての注射の様子など、確かに思い出の一つとして残しておきたい気持ちもわかります。しかし、写真や動画を撮影するときに気を付けていただきたいNG行動があるので、お伝えしたいと思います。
NG行動1:許可をとらずに撮影する
病院に無断で撮影するのはNG! 撮影したい場合は、必ず許可を取りましょう。
予防接種などのシーンは、医療者の姿も少なからず写ってしまうと思います。動画の場合は、声が入ることもありますね。医療者にも肖像権があります。
また、診察室の中には写してはいけないものがある場合もあります。撮影の可否については病院の方針がありますので、撮影を希望する場合は確認をとってからにしましょう。
私が以前勤務していた病院では撮影NGでしたが、私のクリニックでは撮影OKにしています。ただ、親御さんには「私たちの顔が映っているものは、SNSに公開しないでね」とだけお伝えしています。
NG行動2:診察の邪魔になるような撮影をする
病院での医療行為は、対応を間違うと危ないものもたくさんあります。たとえば、赤ちゃんの予防接種は、しっかり赤ちゃんを押さえていないと事故に直結します。
乳幼児健診でも、首を支えずに赤ちゃんを起こしたり(引き起こし反応)、赤ちゃんを逆さまにひっくり返したりします(パラシュート反射をみたりなど)。病院のベッドは柵がないので、赤ちゃんを寝かせて親御さんが目を離してしまうと、落下のおそれもあります。
親御さんの撮影が医療行為の妨げになったりすると、事故のもとになることも考えられます。撮影OKの場合は、「ここで撮影してもいいですか?」など聞いてくださるとうれしいです。また、医療行為をしているすぐそばではなく、少し離れたところから撮影していただくといいと思います。
OK行動:赤ちゃんのケアに必要な知識を撮影する
小児科はおなかのマッサージや綿棒浣腸の仕方、保湿剤の塗り方、寝返りの練習の仕方などなど、おうちケアの方法などを親御さんに指導することも多い診療科です。
「教えてもらったことを忘れないために、ケアの方法などを動画や写真で記録しておく」というのはアリだな、と個人的には思います。
この時も必ずその時の医師や医療職の方に撮影の許可をとってもらいたいのですが、病院で教わったことを家で実践するための撮影であれば、協力してくれる先生もいるのではないでしょうか。
声をかけ合って良い撮影にしましょう
私のクリニックでは、ママが一人で赤ちゃんを連れてきて、スマホスタンドなどで撮影される方もいます。撮影するときは私もスタッフも「こうしたらきちんと映るかな?」などと工夫して良い記録が残せるようにしたりしています。それも、親御さんたちが突然撮影したりせず声をかけてくださって、同意を取ってくださるからこそ気持ちよく撮影に協力できます。
病院は大事な個人情報がたくさんある場所でもあるので、なかなかどこの病院でも撮影OKとはいかないと思います。そこはご理解いただきつつ、声をかけあっていけるとお互いにいいのかなと思います。