こんにちは、小児科医の保田典子です。今回は「運動神経」について。私は運動が全然ダメで、運動部に入ったことがありません。きっとうちの子どもたちも運動が苦手だろうと思っていましたが、調べてみるとそうでもないことがわかったので、お伝えしたいと思います。
そもそも「運動神経」って何?
「運動神経」という言葉は一般的に、瞬発力・筋力・バランス感覚など、総合的な能力の総称として使われていますが、実際にそうした神経があるわけではありません。「運動神経」という神経はありませんが、「運動能力」は遺伝の影響があることがわかっています。
運動能力はあとから伸ばせる!
まず、運動能力は遺伝の影響が大きいです。近年、マラソンの世界大会では黒人選手ばかりが入賞するのも、遺伝による運動能力の差があると考えていいでしょう。ただ、運動能力が劣るからといって、スポーツで勝負できないという訳ではないのは、400mリレーの日本のメダルでも証明されていますよね。
運動が得意な子に育つかどうかは、もともと生まれ持った素質のほかに、環境的要因も大きいです。スポーツ選手の子どもがスポーツ選手になりやすい、とよく聞きますよね。「親がスポーツを日常的にしている習慣がある家庭は、子どものその才能が伸びる」と言われています。
運動が得意な子にしてあげたい!というご家庭は、お子さんが小さいうちから日常的にさまざまな運動をさせてあげましょう。
1日1時間以上外遊びをしたほうが良い理由
文科省は「幼児は様々な遊びを中心に、毎日合計60分以上、楽しく体を動かすことが大切」という「幼児期運動指針」を発表しています。(※この指針における幼児とは、3歳から 6歳の小学校就学前の子どもを指します。)その理由は下記のとおりです。
「文部科学省調査では、外遊びの時間が多い幼児ほど体力が高い傾向にあるが、4割を超える幼児の外遊びをする時間が一日1時間(60分)未満であることから、多くの幼児が体を動かす実現可能な時間として「毎日、合計60分以上」を目安として示すこととした。」(屋内も含め一日の生活において、体を動かす合計の時間)
・文部科学省で平成19年度から21年度に実施した「体力向上の基礎を培うための幼児期における実践活動の在り方に関する調査研究」では、より多くの友達と活発に遊びを楽しむ幼児ほど運動能力が高い傾向にある。
このような調査もありますので、日々の習慣が運動能力を作るもとになると考えられますよね。幼児期のうちは特定の運動だけをするよりも、さまざまな運動をした方が良いと言われています。外遊びなどでいろんな動きを経験しましょう。
また、外遊びが近視の進行を抑制するというデータもあります。外遊びはいいことだらけですね。
外遊びを使って運動神経を伸ばしましょう!
外遊びには鬼ごっこだけでも「歩く、走る、くぐる、よける」などの様々な動きが含まれます。外は家の中よりも断然体力を使うので、外に出るだけでもとても体力向上に有効なのです。
わが家も休日は暇さえあれば外に連れ出しています(勉強がおそろかになるほどに……笑)。ただ、梅雨で雨の日も多く、外遊びができない日も多いと思います。そんなときは、トランポリンやバランスボールがおすすめです。外遊びでは重点的にしにくい体幹を鍛えてくれますし、子どもたちも大喜びです!
小さいときの遊びが思春期や大人になってからの体力の基礎となってくれます。体を動かす遊びを意識的に取り入れてみてください。