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夫の知らない「名もなき家事」って!?夫は家事をやっているつもりに?妻のストレスを軽減する対策は

洗濯掃除、食器洗いに子どもの世話――。これらは「家事」という言葉で一括りにされがちですが、わたしたちの日常は、雑多な「名もなき家事」であふれています。“妻に任せきり”というケースも多く、夫婦げんかの火種になることも。男性の家事参加について詳しい、大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に、「名もなき家事」について解説していただきました。

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保育士小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授、大阪教育大学附属天王寺小学校校長

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。NHK Eテレ「すくすく子育て」出演。2022年より「保育」と「育児」分野のYahoo!ニュースオーサーに。
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”ママがやって当然”に異議あり!話題の「名もなき家事」とは!?

名もなき家事

 

食器洗い、トイレ掃除、洗濯などの家事に名前はありますが、このほかにも、名前のない細々した家事が日常にはたくさんあります。これらは負担が女性に偏ることが多いのも特徴のようです。

 

「当たり前すぎる家事全部、それら全ての存在に気付いて命名したのが“名もなき家事”と呼ばれる家事です」と男性の家事参加について詳しい、大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生は話します。

 

例えば「ゴミ出し」。ゴミ出しは「ゴミを収集所に出すこと」だけだと思われがちですが、「ゴミを分別する」「ゴミをまとめる」「新しいゴミ袋を掛ける」「ゴミ箱をきれいにする」「自治体指定のゴミ袋を買う」「ゴミ袋の在庫を把握する」など、名もなき家事がたくさん集まって「ゴミ出し」という家事が成り立ちます。

 

ほかにも次のような事例があります。


・トイレットペーパーを取り換える
・洗剤やシャンプー類を詰め替える
・日用品の在庫を把握する
・風呂回りのカビを取る
・毎日の献立を考える
・シーツ・カバー類を交換する
・植物や動物の世話をする
・食卓を片付ける
・衣替えをする
・洗濯物の裏表をなおす
・育児グッズのリサーチ
・予防接種スケジュールの確認、予約

 

など、料理関連、掃除関連、洗濯関連など家事にまつわるものもあれば、育児関連もあるなど、暮らしのすべてに関わります。リストにすると1つの家事だけで100以上あると言われています。

こんな思い込みパパ、いませんか?

名もなき家事のリストは、各自治体や団体などが作成しており、インターネットでもダウンロードすることができます。「自分は家事はよくやっているほうだ」と思い込んでいるパパも、100以上ある名もなき家事のリストを見ると腰を抜かすかもしれません。「やっているつもり」で、実際はほんの一部を手伝っているだけのことも。次の事例に心当たりがある人も、いるのではないでしょうか。

 

・洗濯はするけど洗剤の詰め替えはしない
・買い物はするけど日用品の在庫は把握していない
・食事は作るけど献立は考えない
・布団は干すけどシーツは取り替えたことがない
・ゴミは出すけどゴミ袋をセットしない、ゴミの日を把握していない

 

『令和元年度大阪市男女共同参画に関する市民意識調査』で家事・育児に費やす時間を男女で比較したところ、家事は1日あたり3時間以上費やす女性が約40%であるのに対し、男性はわずか6%。育児は1日あたり3時間以上費やす女性が約45%であるのに対し、男性は約2%と大きな差が浮き彫りになりました。この差は“名もなき家事”に費やす時間の差ともいえそうです。

 

参考:家事・育児シェアチェックシート(大阪市市民局ダイバーシテイ推進室雇用女性活躍推進課)

 

 

「名もなき家事」がママのストレスの原因に!?

パパのお風呂掃除

 

毎日複数の家事・育児を同時進行でこなしているママからすると、パパの不完全な家事がストレスの原因になることもあります。


「洗い物だけして生ゴミを片付けない」
「洗濯物はしわを伸ばしてから干さない」
「浴槽は洗うけど床のカビを見落としている」


など、パパたちは不完全な家事をする傾向にあるようです。なぜでしょうか。小崎先生に伺いました。

 

「細かい家事はママがするのが当たり前、という考えが前提になり過ぎていて、自分には関係ないこと、もっと言うと、名もなき家事なんて、世の中に存在しないことと思っているパパが多いんです。主体的に家事・育児をやらない人や興味のない人は、”わざと知らないふりをする“というより、”本当に気付いていない“という場合が多いんです」と小崎先生は指摘します。

 

一方、パパだけの責任とはいえない事情もあるようです。

 

「ママにも一部責任はあるんです。ママ自身も自分の仕事だと思い込んでやっていることが多い。そうすると、いちいちパパに言わないし頼まない。それではパパには大変さは伝わらないものなんです」(小崎先生)

 

ママのストレスを減らす秘策は「家事に名前を付けること」

ではママのストレスを少しでも減らすためには、どんな対策があるでしょうか。小崎先生は「名もなき家事を見える化することが大事」とアドバイスします。

 

「家事に名前を付けることです。『名もなき』ではなく、『名ありの家事』にするんです。それをリストアップして言語化する。そうすることで、相手に伝わりやすくなります。パパも家事育児の経験値を上げて、失敗するチャンスをもらうことで成長するんです。家事・育児のリストを作って情報を共有すると、ママの負担も少し減るのではないでしょうか」

 

リスト化すると、「あれ?自分は何もできていなかった?」「その場しのぎ的な家事をやっていた?」「ゴミの指定袋を買ったことがない!」などの気付きにつながります。反対にママもパパがやってくれていた「名もなき家事」に気づくことも。

 

「家の修理、電球の取り替えなんかも立派な家事です。パパが活躍してきたことにも気づくでしょう」(小崎先生)

 

見える化したあとは

家事分担を考える時、「半分ずつやろう」と考えがちですが、小崎先生はそこに待ったをかけます。

 

「全部半々にすればいい、というわけではありません。お互いの得手不得手はあります。大事なのはお互いが納得して決めることです。『料理は好きだけど片付けは苦手』という人もいるでしょう。『月水金と火木土』と曜日で分けると、仕事との両立がしんどくなってくることもあるでしょう。家事の情報を共有し、自分たちなりスタイルで、家族のカタチを築いていけるといいですね」(小崎先生)

 

 

 

「相手に説明するのが面倒くさいから」「自分でやった方が早く済むから」とママ1人でこなしてきた、たくさんの「名もなき家事」。家事のシェアは、情報のシェアから始めることが大事なのかもしれませんね。

 

取材・文/大楽眞衣子

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    ライター大楽眞衣子

    社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

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