”ママがやって当然”に異議あり!話題の「名もなき家事」とは!?
食器洗い、トイレ掃除、洗濯などの家事に名前はありますが、このほかにも、名前のない細々した家事が日常にはたくさんあります。これらは負担が女性に偏ることが多いのも特徴のようです。
「当たり前すぎる家事全部、それら全ての存在に気付いて命名したのが“名もなき家事”と呼ばれる家事です」と男性の家事参加について詳しい、大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生は話します。
例えば「ゴミ出し」。ゴミ出しは「ゴミを収集所に出すこと」だけだと思われがちですが、「ゴミを分別する」「ゴミをまとめる」「新しいゴミ袋を掛ける」「ゴミ箱をきれいにする」「自治体指定のゴミ袋を買う」「ゴミ袋の在庫を把握する」など、名もなき家事がたくさん集まって「ゴミ出し」という家事が成り立ちます。
ほかにも次のような事例があります。
・トイレットペーパーを取り換える
・洗剤やシャンプー類を詰め替える
・日用品の在庫を把握する
・風呂回りのカビを取る
・毎日の献立を考える
・シーツ・カバー類を交換する
・植物や動物の世話をする
・食卓を片付ける
・衣替えをする
・洗濯物の裏表をなおす
・育児グッズのリサーチ
・予防接種スケジュールの確認、予約
など、料理関連、掃除関連、洗濯関連など家事にまつわるものもあれば、育児関連もあるなど、暮らしのすべてに関わります。リストにすると1つの家事だけで100以上あると言われています。
こんな思い込みパパ、いませんか?
名もなき家事のリストは、各自治体や団体などが作成しており、インターネットでもダウンロードすることができます。「自分は家事はよくやっているほうだ」と思い込んでいるパパも、100以上ある名もなき家事のリストを見ると腰を抜かすかもしれません。「やっているつもり」で、実際はほんの一部を手伝っているだけのことも。次の事例に心当たりがある人も、いるのではないでしょうか。
・洗濯はするけど洗剤の詰め替えはしない
・買い物はするけど日用品の在庫は把握していない
・食事は作るけど献立は考えない
・布団は干すけどシーツは取り替えたことがない
・ゴミは出すけどゴミ袋をセットしない、ゴミの日を把握していない
『令和元年度大阪市男女共同参画に関する市民意識調査』で家事・育児に費やす時間を男女で比較したところ、家事は1日あたり3時間以上費やす女性が約40%であるのに対し、男性はわずか6%。育児は1日あたり3時間以上費やす女性が約45%であるのに対し、男性は約2%と大きな差が浮き彫りになりました。この差は“名もなき家事”に費やす時間の差ともいえそうです。
参考:家事・育児シェアチェックシート(大阪市市民局ダイバーシテイ推進室雇用女性活躍推進課)
「名もなき家事」がママのストレスの原因に!?
毎日複数の家事・育児を同時進行でこなしているママからすると、パパの不完全な家事がストレスの原因になることもあります。
「洗い物だけして生ゴミを片付けない」
「洗濯物はしわを伸ばしてから干さない」
「浴槽は洗うけど床のカビを見落としている」
など、パパたちは不完全な家事をする傾向にあるようです。なぜでしょうか。小崎先生に伺いました。
「細かい家事はママがするのが当たり前、という考えが前提になり過ぎていて、自分には関係ないこと、もっと言うと、名もなき家事なんて、世の中に存在しないことと思っているパパが多いんです。主体的に家事・育児をやらない人や興味のない人は、”わざと知らないふりをする“というより、”本当に気付いていない“という場合が多いんです」と小崎先生は指摘します。
一方、パパだけの責任とはいえない事情もあるようです。
「ママにも一部責任はあるんです。ママ自身も自分の仕事だと思い込んでやっていることが多い。そうすると、いちいちパパに言わないし頼まない。それではパパには大変さは伝わらないものなんです」(小崎先生)
ママのストレスを減らす秘策は「家事に名前を付けること」
ではママのストレスを少しでも減らすためには、どんな対策があるでしょうか。小崎先生は「名もなき家事を見える化することが大事」とアドバイスします。
「家事に名前を付けることです。『名もなき』ではなく、『名ありの家事』にするんです。それをリストアップして言語化する。そうすることで、相手に伝わりやすくなります。パパも家事育児の経験値を上げて、失敗するチャンスをもらうことで成長するんです。家事・育児のリストを作って情報を共有すると、ママの負担も少し減るのではないでしょうか」
リスト化すると、「あれ?自分は何もできていなかった?」「その場しのぎ的な家事をやっていた?」「ゴミの指定袋を買ったことがない!」などの気付きにつながります。反対にママもパパがやってくれていた「名もなき家事」に気づくことも。
「家の修理、電球の取り替えなんかも立派な家事です。パパが活躍してきたことにも気づくでしょう」(小崎先生)
見える化したあとは
家事分担を考える時、「半分ずつやろう」と考えがちですが、小崎先生はそこに待ったをかけます。
「全部半々にすればいい、というわけではありません。お互いの得手不得手はあります。大事なのはお互いが納得して決めることです。『料理は好きだけど片付けは苦手』という人もいるでしょう。『月水金と火木土』と曜日で分けると、仕事との両立がしんどくなってくることもあるでしょう。家事の情報を共有し、自分たちなりスタイルで、家族のカタチを築いていけるといいですね」(小崎先生)
「相手に説明するのが面倒くさいから」「自分でやった方が早く済むから」とママ1人でこなしてきた、たくさんの「名もなき家事」。家事のシェアは、情報のシェアから始めることが大事なのかもしれませんね。
取材・文/大楽眞衣子