監修/粒来拓先生(よしかた産婦人科分院 綱島女性クリニック 院長)
日本産科婦人科学会 専門医・指導医。日本女性医学学会 女性ヘルスケア認定医・指導医。日本女性心身医学会 認定医。患者一人ひとりの症状と考え方に寄り添い、サポートしている。
生理時期によって「ダイエットのしやすさ」は変わる
痩せたことを実感しやすい時期って?
生理が始まった女性は、一定の周期で生理がくるようになります。これを生理周期といい、生理周期には、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期という4つの期間があります。月経期は経血が排出されている時期、卵胞期は生理が終わってから排卵があるまで、排卵期は排卵をしている時期、黄体期は排卵が終わってから生理が始まるまでを指します。
婦人科医の粒来先生によると、この中で痩せやすい時期は「卵胞期」、つまり「生理が終わってから排卵が始まるまで」なんだそう。人によって生理周期が異なるので、卵胞期の日数にも差が出てきますが、目安として生理開始日から約7〜10日後がダイエットには一番適しているとのことです。
卵胞期は、心身ともに安定している時期でもあるので、ダイエットのモチベーションも落ちにくいそうですよ。
ダイエットに適さない時期は?
生理中に痩せやすいのは「卵胞期」ということがわかりました。一方で、排卵後から次の生理が始まるまでの期間である「黄体期」はダイエットには適さないそう……。
その理由は、黄体期には、プロゲステロンという女性ホルモンの分泌量が多くなるから。すると、体内に水分や栄養素を溜め込みやすく、また血流も悪くなるため、ダイエットの大敵である「体の冷え」や「便秘」、「むくみ」の原因になるのです。
※プロゲステロン…黄体期に分泌量の多い女性ホルモン。体温を上昇させたり、食欲を増加させたりする働きがあります。エストロゲンの働きで厚くなった子宮内膜をプロゲステロンが柔らかくして維持し、受精卵が着床しやすい状態(妊娠しやすい状態)に保ちます
生理前の黄体期に頑張ってダイエットをしても、体がむくんでいるせいで、効果が見えにくくなるというのも「ダイエットに適さない」ことの一因だそう。効果が見えずらいと、ダイエットのモチベーション低下にもつながりますよね。
「女性の体は生理周期によってホルモンの波があるため、体内の水分量によって1カ月の間で体重が増えたり減ったりします。例えば、黄体期で溜め込んだ水分はプロゲステロンの減少とともに排出されるため、黄体期に体重が増えても卵胞期で自然と体重が落ちる場合が多いのです。
黄体期に体重が増えていても、あまり気に病まず『ホルモンの影響で水分を溜め込みやすくなっているのだろうな』くらいに考えるとよいでしょう」(粒来先生)
※エストロゲン…卵胞期に分泌量の多い女性ホルモン。肌や粘膜の水分維持、骨や血管の健康維持、自律神経を安定させるなどの働きがあります
黄体期は甘いものの食べすぎに注意
また、黄体期に分泌量の多いプロゲステロンは、イライラを引き起こします。イライラすると、自分を癒やしたい気持ちから、甘いものを食べたくなることもあるのですが、 実は黄体期は血糖値の調節がうまくいかない時期でもあり、これが過食につながることも。通常、甘いものを食べて血糖値が上がるとインスリンが働いて血糖値が正常に戻るのですが、プロゲステロンはインスリンの働きを悪くする効果があるので、糖への反応が鈍くなるそうです。
また、甘いものの過食に走ると血糖値が急上昇。やっとインスリンが働き始めると、一気に上がった血糖値がインスリンによって一気に下がり、今度は低血糖状態に……。
そして、低血糖状態では糖が足りず、またイライラ。そしてまた過食に……という「負のスパイラル」に陥ってしまうのです。
ダイエットで気をつけたいこと
「黄体期は甘いものの食べ過ぎに気をつけて」とお話ししましたが、粒来先生によると、ダイエットでは「過度な糖質制限には注意!」とのこと。人間が生きていくうえで必要不可欠なエネルギー源である糖質。糖質を摂取しないと、消費するエネルギー源が不足し、体は省エネモードに……。すると、エストロゲンの分泌もなくなり、「無月経」につながってしまうこともあるのだそうです。
炭水化物をまったく摂らないなどの無理な糖質制限ではなく、「いつもより控える」というゆるやかな糖質制限であれば問題ないそうですよ。
ダイエットは、生理期間中だけ頑張るのではなく普段から食生活に気をつけたり適度な運動をしたりすることが大切です。そのうえで、「生理前は、むくみやすいためダイエットの効果が見えにくい」ことや「生理前はホルモンの影響で、甘いものを食べ過ぎてしまう」などの特徴を知っておくと、ダイエット中の気持ちが違いますよね。自分の体調と相談しながら、生理周期に合わせたダイエットの参考にしてみてくださいね。
取材・文/ムーンカレンダー編集室
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