家事育児は 評価されるべき仕事!?
「家事育児を全て外注するといくらくらいになるか、という面白い試算があります。一説によると、年間1000万円以上かかるそうです」と解説するのはパパの家事育児参加について詳しい、大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生です。
「さまざまな機関が試算していて、算出方法はそれぞれ違いますし、家族の人数など、状況によって試算される金額にはもちろん幅があります。しかし、すべて外注にするとイメージすれば、いずれにせよそれなりの金額がかかることは想像がつきますよね。家事育児は評価されにくいけれど、実際はすごく価値のある大切なことです。家事育児に疎いパパには、“名もなき家事”と呼ばれるさまざまな家の仕事の価値について、今一度考えてもらいたいです」と小崎先生は話します。
「名もなき家事」の存在を広く知ってもらおうと、全国の自治体も力を入れています。大阪市では「家事・育児シェアチェックシート」を、福島県伊達市は「見えない家事・名もなき家事チェックリスト」をWebで公開。いずれもダウンロードできるようになっており、家庭での活用を呼びかけています。
参照)
小崎先生が解説!名もなき家事〜掃除編〜のリアル
暮らしに欠かせない「掃除」。自治体が発行するチェックリストにもある通り、掃除はゴミ出しや風呂の排水溝掃除、トイレ掃除などさまざまな作業の積み重ね。ゴミを集める、ダンボールをつぶす、置きっぱなしのものを片付ける、掃除用洗剤の補充など、名もなき家事もたくさん。そんな名もなき家事の代表とも言える「掃除」について、小崎先生の解説とともにお届けします。
ケース1:ゴミ出し
ゴミをゴミ捨て場まで持っていくのは「ゴミ移動」。ゴミを分別する、集める、新しいゴミ袋を購入する、ゴミ箱にかけるなど、いくつものタスクをこなして初めて「ゴミ出し」という家事が完了します。
小崎先生から
「住んでいる地域では、いつどうやって捨てるのかなど、曜日や日付を夫婦で共有しておくことも重要です。2週間に1回や月に1回の収集を逃しても平気なパパは、責任の所在がママになっていて“困り感”がないんです。ダンボールや新聞だってまとめるのは大変です。ゴミに責任を負う立場になったら、瓶も気軽に買えなくなるでしょう。けれど、男性はこだわりが強い方もいるので、やってみたら細かい分別にうまくマッチするかもしれません。ゲーム感覚で楽しんでほしいですね」
ケース2:掃除機を使用する
掃除機は、ただかければいいというのではなく、たまったゴミを取り出す作業も必要です。毎回発生するものではないから、パパたちは「かけるだけ」になりがち。でもこのゴミを取り出す作業を、とくに負担と感じるママも多いと思うのですが……。
小崎先生から
「掃除機自体にも定期的にメンテナンスが必要ですよね。サイクロン式やお掃除ロボットなら掃除機のゴミ捨ても必要です。紙パック式ならゴミが溜まったら取り換える作業も必要です。普段そこまでやっていないとパパたちは気付かないので、メンテナンスのサインや、やり方を教えた方が良いでしょう。夫婦で得手不得手があるでしょうから、掃除機を買い替える際は、よく話し合って夫婦で一緒に選ぶのがおすすめ。さらに選びながら分担を決めてしまうのが理想です。ちなみに僕は、掃除機にたまったゴミ捨ては好きな家事の1つです。『こんなにゴミがとれた!』と成果が見えるからです」
ケース3:お掃除ロボットのための掃除
働くママパパの救世主となるお掃除ロボット。しかし部屋が散らかっていてはロボットも活躍してくれません。お掃除ロボットのために床の物を片付ける、というのも名もなき家事です。パパが出勤前にささっと片付けてくれると助かります。
小崎先生から
「うちの場合、お掃除ロボットのために部屋を掃除するから部屋がきれいになる、という逆説的な現象が起きています(笑)月水金に自動で動くように設定していますから、月水金の朝は床の物を全部上げて、椅子もテーブルに上げて、部屋のドアも開けて出掛けます。こういうことを忙しい朝に1人でこなすのは大変です。一緒に曜日を決めて、夫婦の共同作業にしたいですね」
ケース4:玄関まわりを掃く
毎日必要ではないかもしれませんが、ほうきを使って玄関まわりを掃くことも必要です。子どもが芝生や土をたくさん付けて帰ってくるなど、玄関も汚れがたまりやすいものです。
小崎先生から
「玄関まわりの汚れはなかなかパパが気づきにくい場所です。土やホコリが溜まっていても、そういうものだと思ってしまい、気にならないかもしれません。それだけにママがほうきで掃いてくれていることすら気づいていない場合も。でも、パパも育児に積極的に関わって『子どもを育てている』という視点を持つと、見え方も変わってほこりが気になってくるでしょう。ほこりがあると、アレルギーの心配がでてきたり、不衛生だなと感じたりすると思います。自己アピールが好きな男性も多いと思うので、家の個性となる玄関のデコレーションと一緒に掃除をお願いするのも良いかもしれません」
パパがやってくれないとあきらめないで
小崎先生は「パパが変わらない、やってくれないと、あきらめないで」とママたちに訴えます。
「子どももパパも、どこかで変わるタイミングというのがあるんです。僕だって、がさつな生活をしていましたが、育休を取ってからちゃんと掃除をするようになりましたし、夜はパジャマを着て寝るようになりました(笑)自分でもこの変化には驚きます。やっぱり責任を持って家庭生活を送ると、心地よい暮らしとは何かについて真剣に向き合います。そうすると自身のQOLも上がるんです」
なかなか掃除してくれないパパに対し、「あきらめモード」のママもいるかもしれません。しかし夫婦で歩む道は、この先も長いです。トライアンドエラーの積み重ねで根気よく夫婦で話し合い、心地よい暮らしを共に作っていくことが大切のようです。
取材・文/大楽眞衣子