毒親に育てられた結果
母と2人暮らしだった私は、母の毒を一身に浴びて育ちました。母の口ぐせは「子どもなんて産むもんじゃない」「あんたなんて産まなきゃよかった」。実家を出るまでの間に私は、母の口から出たテレビドラマのセリフのような暴言を数えきれないほど聞かされました。
実際、母はいつも怒っており、私は母の笑顔を覚えていないほどです。私を育ててくれた母は、いつもとても不幸そうに見えました。
そんなこともあり、子どもの虐待を伝えるニュースで「容疑者もまた虐待を受けていた過去があり…」という言葉を耳にする度に、私の中で「子どもをつくってはいけない」という思いが強くなっていきました。
まだ言語化できない「子ども」の話
夫と結婚したのには、「子どもにはあまり興味がない」という夫の言葉に救われたことも関係しています。「この人と2人きりで年をとるのもいいな」と思える人に出会えたのは、私の人生において初めてのことでした。
でも結婚して3年が過ぎると、私の心に「愛する夫との子どもが欲しい」という気持ちがほんの少しだけ芽生えたのです。毒親に育てられた私と、子どもに興味がない夫。私たちの間ではなんとなく子どもの話はタブーになっていて、子どもを作るかどうかを真剣に話し合ったことはありません。
私自身の気持ちもはっきりしていなかったため、私は「子どもが欲しいかもしれない」と思い始めたものの、夫に打ち明けるのを躊躇してしまったのです。
私の気持ちの変化に気づいた夫
私の心に変化があったころ、夫の親友に子どもが生まれました。夫婦間で子どもについての話し合いを持てていない私は、赤ちゃんの顔を見に行くことがどうしてもできず、お祝いの席には夫ひとりで行ってもらいました。
その後、なぜかよく親友宅に行っては子守りを手伝うようになった夫。帰ってくると夫は「子守りも少しずつ慣れてきたよ」とか「今日は赤ちゃんがこんなことをしてかわいかった」と話してくれます。もしかしたら夫は私の心の変化に気づき、いずれ私と子どもを持つことを視野に入れ、私に対して「子どもを作ってもいいよ」と暗に伝えてくれているのかもしれません。
夫の包み込むようなやさしさに触れた今、私は子どもを持つことに少し前向きになってきています。
私が読んだ本によると、子ども時代の自分を癒やすには、想像の中で自分がどういうふうに育てられたかったのか、イメージするといいそうです。その過程を踏めば、負の連鎖は起きないと言われているのだそう。今の私は過去と向き合い、自分が少しずつ前へ進んでいけるよう努力しています。いつか夫との子どもに恵まれたら人格や存在を絶対に否定せず、精一杯子どもを愛せる親になりたいと思っています。
著者/つちやです
作画/霜月いく
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