ある日、さざなみさんの娘さんが「これ、こんなになっちゃった」と言って、短くなった色鉛筆を持ってきました。それを見たさざなみさんは、高校生のころに出会った文房具屋さんの色鉛筆を思い出したのです。
私と娘の色鉛筆
さざなみさんは高校生のとき、文房具屋さんで色鉛筆に出会いました。
値段が高く、1度は諦めたものの、色鉛筆で絵を描く憧れが捨てきれず、毎月少しずつおこづかいで買い集めていたのです。
高校生のころのさざなみさんが、羽のタッチで書いていた線。今は、5歳の娘の力強いストロークで鮮やかな発色を示すように。
それを見た、さざなみさんのお母さんは「例の色鉛筆、使わせていいの?」と聞きました。
すると、「いいんだよ、娘は大事に使ってくれるし」とさざなみさん。
そして20年ぶりに、さざなみさんと娘は文房具屋さんに行きました。
すると娘が、「この色欲しい」と言ったのです。
「娘が欲しいと言っている色は、家にある気がする……」と思いながらも、さざなみさんは、娘の欲しい色を3本買ってあげることに。家に帰って確認すると、なんと色の被りはゼロ!
「もしかすると、娘の色の世界は色鉛筆の色の数だけ、多彩に彩られているのかもしれない」
さざなみさんは、娘が頭の中の物を説明するときに「べに色と、セピア色のあれ……!」といったように、色を使ってくることを思い出しました。
「娘と自分は同じ色鉛筆を使っていて、その色を共有し合える」
こんなに素敵なことができるのならば、高い色鉛筆でもなんでも、短くなるまでどんどん使ってほしいとさざなみさんは思うのでした。
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さざなみさんのように、学生時代に大切にしていたものを、娘さんに譲って受け継がれていくのは、とても素敵ですね。みなさんは、小さいころに大切にしていて、お子さんに譲ったものなどありますか?