「貯金はどのくらいすればいいですか?」と、家計相談の中で質問されることがあります。実際には、家族の人数や年齢などの状況とこれからかかる費用によって必要な金額が変わるので、給料の何%貯めれば大丈夫ですという一般的な答えはありません。
しかし、「主人が貯金に協力してくれないので、ほかの家ではどれくらい貯めているか知りたいです」という声もお聞きします。そこで今回は、統計上の平均貯金額と準備が必要なライフイベントについてお伝えします。
年収の20%程度貯金できていればまずまず
平成27年の『総務省・家計調査』によりますと、全国の勤労者世帯(働いている人がいる世帯)の手取りからの黒字率(貯蓄※の割合)は26.2%とのことでした。
この割合は毎月のお給料だけでなく、ボーナスやそのほかの所得の割合も含みますので、月給の4分の1以上を貯蓄しているというわけではありません。しかし、平均黒字率の26.2%は、一般的な家庭と比べてかけ離れた所得がある人も含まれている数値ですので、実際には年収の20%程度貯蓄できていれば、貯蓄の割合が少ない家庭ではないと思われます。
貯蓄ゼロの子育て世帯も15.3%いた
児童のいる世帯での貯蓄額
平成25年『国民生活基礎調査』表10 貯蓄額階級別・借入金額階級別にみた世帯数の構成割合から筆者編集
また、平成25年の『国民生活基礎調査』では、“児童のいる世帯”にどのくらいの貯蓄額があるかの項目がありますが、15.3%の世帯が「貯蓄がない」と回答しています。また、貯蓄額100万円未満の世帯が9.7%ある一方で、貯蓄額1000万円以上がある世帯は19.2%もあります。それぞれの割合は上記のグラフを参考にしてください。
※貯蓄とは、預貯金だけなく貯蓄性のある生命保険・損害保険や株式・投資信託等の有価証券等の運用も含みます。
しかし、いずれにしても統計上での数値ですので、貯蓄が足りているかどうかは、ご家族の状況や今後のライフイベントにいくら必要かによります。
ライフイベントから必要な貯蓄の目標を
ライフイベントにおける三大資金は、①住宅費(住宅ローンまたは家賃)・②子どもの教育費・③老後の生活費といわれます。
住宅費
住宅費は住宅購入の頭金や修繕・リフォームなどが予定されている場合は、貯蓄を考える必要があります。住宅ローンや家賃は毎月かかるので、そのための貯蓄の必要性は低いですが、繰上返済や更新料などを考えると貯蓄が必要な場面もさらに出てきます。
教育費
子どもの教育費は、お子さんが小さいうちが貯めどきです。たとえば、現在0歳お子さんの進学費用の準備として、18年間大学4年間の学費の8割400万円を貯めるとすると、400万円÷18年÷12カ月で計算され、月に約1万8500円貯める必要があります。
老後費用
老後費用の準備は、お子さんの小さいうちは考えにくいのですが、お子さんが社会人になる前に定年退職を迎える場合など、ご自身の年齢によっては、同時進行で準備する必要があります。そのため、いつまで働き、いくら必要かを考えることも必要です。
上記の三大資金以外に、自動車の購入や家族の旅行など計画が立てられるものは必要な金額や期間から毎月貯める金額を計算して準備できるようにしましょう。
また、冠婚葬祭や急な病気やケガなどの予定外の出費については、生活費の3カ月~1年分を貯めておくといいでしょう。 繰り返しとなりますが、給料の○%貯めればいいという基準はありません。ご自身のライフイベントから必要額を考えて、毎月いくら貯めればいいか割り出して、貯蓄額の目標を立てることもあわせて考えましょう。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。