娘の結ちゃん、2歳の誕生日。仕事の帰り道、予約していたケーキを受け取り、花屋できれいなバラを買った帰りの満員電車で男を取り押さえた。
女の子の親御さんの気持ちや、女の子の苦痛に感じる時間を思うと助けずにはいられなかったと言う夫。犯人を捕まえようとするのに必死になって、ケーキも花束もボロボロになってしまった。
「あれ以来、毎年ちゃんとお祝いしようと思ってたのに……俺、本当に……」
「カズ君、かっこいいよ」
涙をこぼす夫を、妻はぎゅっと抱きしめた。
「カズ君は結にとって、自慢のお父さんだよ」
「カズ君はかっこいい! その子を助けてくれて、ありがとう。カズ君は結にとって自慢のお父さんだよ」
自分のことよりも、いま目の前で困っている人を助けることを優先して、女の子を助けた夫に「ありがとう」と思いを伝えた妻。夫は、妻の言葉に、自分のしたことは間違いじゃなかったんだと、胸が熱くなった。
抱き合う二人を見て、娘が「あぁー! 結ちゃんも!」と妬いて、三人でぎゅっと抱き合いながら、笑った。潰れてしまったケーキの代わりに、コンビニでケーキを買うことに。結ちゃんを真ん中に、三人で手をつないでコンビニへ向かう。家族との時間が、少しずつ絆を深めていく。
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