『女の子らしい物』が苦手な私
私は小学校高学年のとき、『女の子らしい物』が苦手になりました。小さいころはピンクが好きだったはずなのに、思春期になるにつれてだんだんとピンクが苦手になり、かわいいデザインの服やかばんも見たくないと思うようになったのです。
それなのに、初めての生理がきてから『女の子らしい物』を見なければいけない機会が増えていきました。そのころ家にあったナプキンは、ピンク色のかわいいデザイン。ナプキンを入れるポーチもピンク色です。学校でもらった生理に関する小冊子やナプキンのサンプルには、ハートや星がたくさん印刷されていました。小冊子は自宅の机の引き出しにしまっていましたが、できることなら見たくないと思っていた記憶があります。
当時から生理痛などの症状はおそらく軽いほうでしたが、生理中はいつも気持ちがブルーでした。生理がくるたびに「またあのピンク色のナプキンやポーチを使わないといけない」と落ち込み、私の口数はだんだんと少なくなっていきました。
叔母がくれたプレゼント
小学校高学年の夏休み、家族と一緒に親戚の家に遊びに行った私。ところが、親戚の家に着いたその日のうちに生理がきてしまいました。母は何個かナプキンを持ってきていましたが、これから何日も生理が続くことを考えると、とても足りる量ではありません。
母は、「買い置きしているナプキンがあったら少し分けてほしい」と叔母にお願いしてくれ、叔母は快く了承してくれました。これだけでとてもありがたかったのですが、叔母はさらに「ナプキンを入れるポーチがないと困るだろうから」と私にポーチをくれたのです。
実を言えば、叔母がポーチをくれると聞いたとき、私は乗り気ではありませんでした。きっとまた、ピンク色のかわいいデザインの物に違いないと思ったからです。
しかし、叔母から実際に渡された物は、予想とはまったく異なりました。紺色の無地に英語のロゴが入った大人っぽいデザインだったのです。世の中にこんなデザインのポーチがあるのだと、私は驚きました。本当にもらっていいのか叔母に尋ねてみると、「このポーチ自体がもらい物だから遠慮なくもらっていって」と言ってくれたのです。
今まで、『ザ・女の子』といえるようなかわいらしいデザインのポーチしか見たことがなかった私は、初めて手にした『かっこいいポーチ』をすぐに気に入り、とても幸せな気持ちになったのを覚えています。
かっこいいポーチのおかげで前向きな気持ちになれた
叔母に『かっこいいポーチ』をもらったおかげか、それからはピンク色のかわいいナプキンを使うことにも抵抗がなくなりました。ポーチのファスナーを閉めてしまえばピンク色のナプキンはポーチに覆われ、目に入るのはかっこいいデザインのポーチだけです。『かっこいいポーチ』を持ち歩くようになった私は、自然と気持ちが前向きになっていきました。
実のところ、私は「女の子らしい物を好きにならないといけない」との強迫観念に襲われてもいました。男の子のような服装をしていても、かわいいデザインの物を持っていなくても、私の家族はそれを否定することはありませんでした。しかし、かわいいデザインが好きな同級生たちの影響もあって、「女の子らしい物が好きな女の子にならないといけない」と、当時の私は勝手に思い込んでいたのです。
その思い込みをなくしてくれたのが、叔母のくれたかっこいい紺色のポーチでした。私の人生を前向きに変えてくれたこのポーチは、大人になった今でも大切に使い続けています。
現在は性の多様性が注目されているため、小学生の持ち物も変化しているかもしれません。しかし、私が小学生のころは、まだ「女の子が使うものはピンク色が当たり前」という雰囲気があったように思います。もし、かつての私と同じ悩みを持っている女の子に出会うことがあったら、「無理しなくていいんだよ」と伝えてあげたいです。
著者/青木里美
作画/おみき
監修/助産師 松田玲子
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