結婚して半年後に妊娠。しかし…
26歳のとき、7つ年上の男性と結婚した私。もちろん、うれしさはありました。しかし、1年ほど同棲していたこともあり、特別な感情が湧くわけでも気持ちの変化があるわけでもなかったのが正直なところです。
結婚から半年過ぎたころ、私たちは赤ちゃんを授かりました。夫はとても喜んでくれましたが、私は心中複雑。なぜなら妊娠はこれが二度目で、初めてのときは異常妊娠、いわゆる子宮外妊娠となって手術した過去があったからです。自分の体内から命が失われて苦しくつらい経験をしたため、二度目の妊娠でも不安な気持ちがぬぐえませんでした。
臨月の予定は8月
幸いにも今回の妊娠は順調で、予定日は8月末。初産ということもあり、今住んでいる東京ではなく、私の実家がある栃木での里帰り出産を選択しました。そして夫に、ある提案をします。
「臨月の8月には会社のお盆休みがあると思うけど、私のことは気にせず好きに過ごしてね。コロナ禍だから出産には立ち会えないし、子どもが生まれたらしばらくは大変になるだろうから、今のうちに自分の好きな時間を過ごしておくのがいいと思う」と。
私の言葉に、夫はかなり驚いた様子。しかし、私としては偽りのない本心で、日ごろ休みの少ない夫には、お盆休みにはしっかり休んでもらって、リフレッシュしてほしい気持ちがありました。それに、夫が以前から「もし長期休みが取れたら、友人の住んでいる北海道に遊びに行きたい」と話していたのを覚えていたこともあります。
私の言葉を聞いて、夫は「そう言ってくれるなら」と、お盆休みに北海道旅行を計画し始めました。
夫のサプライズプレゼント
何事もなくお盆の時期が過ぎて、予定日間近になったころ、夫が東京から栃木の実家まで様子を見にきてくれました。ごはんを食べたり、旅行のみやげ話を聞いたり、久しぶりに夫と一緒に過ごす時間は楽しくてあっという間。
東京に戻る前夜、夫がハッと思い出したように、突然「そうだ! こっちに来て!」と言い出し、2人きりになるため、家族のいるリビングの外へと連れ出されました。「なんだろう?」とついて行くと、夫はうれしそうな顔をしながら、後ろ手に隠し持っていた何かを「はい!」と言って私に差し出したのです。それは白くて小さな四角い箱。どう見ても指輪のプレゼントでした。
びっくりして「これ、どうしたの?」と聞くと、北海道旅行をしたときに結婚指輪を手作りできる工房へ寄って自作したとのこと。渡された指輪は素人の手によるものとは思えない出来栄えで、心を込めて作ってくれたことがひと目でわかりました。これだけでうれしかったのですが、さらに、夫は続けてこう告げたのです。
夫がくれた言葉
「妊婦さんとして大変な時期に、俺だけ旅行へ行かせてもらえるとは思わなかった。おかげさまで旅行ではのんびりできて、すごく楽しかったよ。本当にありがとう! 俺は出産に立ち会えないし、結婚指輪もまだ渡せてなかったからさ。これをお守りに出産を頑張ってほしいなって思って、指輪を作ったんだ」。
異常妊娠を経験したことで不安が募り、10カ月の妊娠期間中、私はどうしようもない不安を夫にぶつけてしまっていました。それでも私を励まし続け、私に代わって家事もこなしてくれた夫。そして今回、夫は離れているときにも私のことを想い、愛情を行動と言葉で示してくれて……思わず涙がこぼれてしまいました。
新婚当初は「結婚しても別に何も変わらないな〜」なんて思っていて、結婚した喜びを深くは感じられていませんでした。でも、結婚して約1年後に夫のやさしさや真心に触れ、この人と結婚して本当によかったと、心の底から感じたのです。
その後、無事に出産を終え、今は3カ月になる女の子と、大変ながらも楽しく日々を送っています! 妊娠したときは「また異常妊娠になったらどうしよう」と本当に不安でしたし、今後の結婚生活でも、不安になるときは絶対あると思います。
でも、夫婦がお互いに思いやりの心を持っていれば、何があっても乗り越えていけると思いました。思いやりと愛情にあふれた家庭を築けるよう、頑張っていきたいです!
文/山吹てるさん
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