文香(ふみか)はパートをしながら、夫の翔太(しょうた)と2人で暮らしています。「離婚するぞ! 」が口癖の夫に悩まされ、また時折会う姑にもいびられるなど、なにかとつらい日々を送っていました。
夫の無理難題
ある夜、文香が夕飯の支度をしていると、翔太からメッセージが。なんと驚いたことに、1時間後、後輩を連れて帰るというのです。食事の準備、しかも手のかかるハンバーグを作って待っておくようリクエストが……。
突然の訪問者に困惑した文香は、素直に難しいことを伝えました。しかし、夫は逆上。
「これ以上文句を言うなら、離婚するぞ? 」
反論するのが面倒な文香は、いつものように仕方なく折れたのでした。
翔太の身勝手な態度はいつものこと。そして、都合が悪くなるたびに、離婚を盾に文香を脅してくるのです。あるときは、急に連休の予定を変更してきたことも。
「連休は実家に帰ることにしたから空けておけ」
「パートは誰かに代わってもらえばいいだろ」
シフトが決まっているので休めないから一人で帰ってと伝えると、
「俺一人で行くなんて格好がつかない。文香を連れて行って母さんにゆっくりしてもらおうと思ったのに」
「親孝行したくないのか」
と、文香の仕事の都合にお構いなしの発言を連発。文香は唖然とします。しかも、それは翔太は、文香が姑と仲良くなるために必要なことなのだと主張します。しかし、普段から嫁いびりがひどい姑なので、文香はとうていそんな風には思えません。抵抗していると、翔太は自分の母親を悪く言ったと激怒し始めました。
最後には、離婚を盾に、謝罪を要求してくるまでに。結局、帰省は別の日になりましたが、文香はひとりつらい思いをするはめになったのでした。
事件が…
そして、ついに事件が。
「来月から、母さんと同居することになった」
義母から呼ばれて帰ってきた翔太の口から告げられた衝撃的な話に、文香はがく然とするばかり。なぜ自分に相談してくれなかったのか、同居は反対、不可能であると言う文香に、またしてもこれはお前のためだと言う翔太。本当に、一緒に住めば仲良くなれると思っているのでしょうか……。
ねばって同居を反対し続ける文香に、翔太の決まり文句がさく裂します。
「これ以上反論するなら離婚するからな」
「またそれ……?もう疲れた」
「離婚するならしていいよ」
ついに、文香の堪忍袋の緒が切れたのです。
離婚するすると言いつつ、書類すら持って来ない。本気なら書いて持って来るよう、まくし立てた文香。
「そうしたら、私が出しておくから!」
激しい口論の末、2人は互いに離婚する意思を確認し、話を終えました。
「今のうちに荷物まとめておけよ」
翔太の捨てセリフが響きます。
わがまま夫の末路とは
翌日……。家に文香の姿はありませんでした。翔太は居場所を尋ねるメッセージを送りますが、「離婚したので家を出ました」と文香はサラリ。
「おい!」
「何?」
「なんで離婚届出してんだよ!?」
ずっと望んでいたはずなのに、おかしな話です。翔太は、テーブルに置いておいた離婚届を文香が出したと知り、大慌て。これで、文香は晴れて自由の身になりました。自分が悪いと思わないことに対し、もう謝ったり折れたりしなくていいのです。翔太は、あの手この手で戻って来るよう迫りますが、離婚を切り札にして脅してきた罰が下ります。翔太への愛を失くした今、文香が彼を許すことはもうないのです。
その後、翔太は予定どおり母親と同居。母親は満足げですが、彼女は家事全般が苦手なため、翔太の毎日はうんざりとしたものに変わってしまいました。一方、文香は正社員の仕事が決まって一安心。夫の言葉におびえたり、義母に傷つけられることもなくなりました。
愛する家族から傷つけられること以上に、つらいことはないですよね。夫と義母と離れたことは賢明な判断だったのではないでしょうか。