父が自宅に招いた後輩は開口一番、「どっちがパパかわかる?」と質問してきました。父は笑ってとくに気にしていない様子でしたが、小1で物心もついているあおいさんは返答につまり、少し変わった人という印象を持つのでした。
「子どもたちにお金かかるし、生活保護も視野に入れて一度離婚」母の策略
料理上手な母は、父が突然連れてきた職場の後輩をもてなし、翌朝まで滞在した後輩と父の2人分の弁当まで用意する手厚さで、それに父も満足している様子でした。
この頃、1歳になった三女の誕生日ケーキも買えないほど父の借金返済に追われ、生活に困窮していたあおいさん一家。母は父に、低所得向けの公営住宅に入りたいと訴えます。
公営住宅の入居条件に世帯所得をクリアする必要があり、再婚を条件に一度離婚するのですが、これは父と離婚するための母の計画。そんな強行策に出ないと父からの執着・束縛から逃れられないーー。追い詰められた母の苦肉の策だったのです。
もちろんこのやり方に父が納得するはずがなく、夫婦の関係は緊張状態でしたが、母は父から子どもを取り上げることはせず、子どもたちに会える日を作っていました。
それが後に思わぬ事態を招くのですが……。
◇ ◇ ◇
借金状態で女にもだらしがない。1日に何度も電話で行動を監視され、夫が不機嫌になるので買い物と自宅前の公園以外の外出ができない。
あおいさんの母が取った離婚の仕方は、だまし討ちのような方法でしたが、夫の支配下で社会と隔離された状況では、こんな逃げるような方法しか取れないほど思考が追い詰められていました。
そんな夫でも子どもたちにとってはかけがえのない父親。距離を置くことで、関係修復になるといいのですがーー。